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旧正月に楽しむ餅菓子の魅力 (TAIPEI Quarterly 2021 冬季号 Vol.26)

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発表日:2021-12-10

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TAIPEI #26 (2021 冬季号)


旧正月に楽しむ餅菓子の魅力

文: Elisa Cohen
編集: 下山敬之
写真: Samil Kuo


世界中のあらゆる文化圏において、食べ物は季節の到来を告げる、祭日をより一層引き立てるなど様々な役割を持っています。例えば、アメリカならクリスマスにチキンを食べますし、スペインは大晦日にブドウ、日本は年越しそばを食べます。国や文化によって食べ物の種類は異なりますが、いずれもお祝いの場において食べ物が特別な意味を持っていることがわかります。

台湾でも同様に旧正月の親戚が集まる時期になると、もち米で作ったお菓子が多数食卓に並びます。これは新たな一年を豊かに過ごせるようにという願いが込められています。

今季の《TAIPEI》では、内湖区の東湖市場でお店を構えて30年以上になる「采緹油飯(ツァイティーヨウファン)」の店長、林采緹(リン‧ツァイティー)氏を訪問し、旧正月シーズンに食べられる餅菓子についてお話を伺いました。

采緹油飯-66 (Copy)▲台湾の冬は米を使った料理が重要な役割を果たします。

米料理は縁起が良い
林氏は、まず台湾の冬に楽しめる食べ物とその意味を教えてくれました。例えば冬至に食べる湯圓には、年の瀬に古いものを外に出し、新しいものを迎え入れるという意味が込められているそうです。「湯圓を食べるとひとつ歳を重ねると言いますが、そこには幸運や団らんといった意味が含まれています」。

采緹油飯-37 (Copy)▲餡の有無に関わらず、湯圓には家族団らんという意味が込められています。

旧暦の12月16日は尾牙と呼ばれ、土地の神様に餅を捧げて祈りを捧げる日です。台北では、その日に刈包というハンバーガーに似た食べ物を食べます。これは中華風まんじゅうの生地に豚の角煮や高菜漬けなどを挟んだ食べ物で、その形がお金でパンパンに膨らんだ財布に似ていることから、こういった習慣があるそうです。

旧正月がスタートすると、各家庭では様々な味の餅菓子を食べます。例えば甘みのある年糕(ニェンガオ)、フワッとしたスポンジ生地が特徴の鬆糕(ソンガオ)、米粉で作るもっちりとした食感の発糕(ファーガオ)、大根の入った蘿蔔糕(ローボーガオ)などです。これらを用意して祖先や神々に祈りを捧げることで、平和な新年と生活を願います。中国語でケーキを表す「糕(ガオ)」という字は「高(ガオ)」と同じ発音のため、生活や仕事に関する運気が上昇するという意味があり、家庭内に幸運をもたらすシンボルと捉えられています。

旧暦の1月9日は天公生(玉皇大帝)の誕生日です。漢民族の民間信仰における玉皇大帝は世界を統べる神であることから、誕生日には赤く染色したお餅で餡を包んだ伝統的なお菓子を供えします。お菓子の形は長寿と幸運のシンボルである亀を模した紅亀粿、古代の貨幣の形をした粁仔などがあります。

采緹油飯-28 (Copy)采緹油飯-30 (Copy)采緹油飯-50 (Copy)▲台湾では伝統的にヨモギを混ぜた緑色の生地を神様へお供えしてきました。

旧暦の1月15日は新年最初の満月の日で、元宵節と呼ばれます。この日で旧正月は終わりとなり、この日の夜から春を迎えることから市内はランタンの光や美しい飾り付けで溢れます。この時には湯圓に似た元宵というお餅を食べるのが一般的です。旧正月最後の日にこれを食べることで、再会と安全を願います。

様々な味付け
祭日には甘い食べ物や塩辛く味付けしたお菓子を作りますが、そこには独特な製法、文化的な意味、習慣があります。

湯圓のようなお菓子はもち米粉に水を混ぜ、小さくちぎって茹でることで粄娘や粿引と呼ばれる生地を作ります。茹で終わったら、さらにもち米粉を表面につけ弾力性のある生地に仕上げ、後は用途に合わせて縁起の良い赤色にしたり、加工したヨモギを加えるなどしてから、様々な餡を入れて完成です。

采緹油飯-6 (Copy)采緹油飯-9 (Copy)采緹油飯-1 (Copy)▲紅亀粿を作る際に使われる木型には長寿を意味する亀の模様が刻まれています。

今回は切り干し大根やアンコを生地に詰めて、木製の型の中に入れ、上から軽く叩いて生地を平らにしていく過程を見せて頂きました。型をゆっくり外すと、長寿を願う赤い亀のお菓子の出来上がりです。

林氏は木型を手に取りながら、「この型は迪化街にある老舗で特別に注文した物です。これらの型はすべて手彫りで作られていて、深みのある美しい形になるよう仕上げれています」と紹介してくれました。木型は亀の形以外にも来世での幸運を表す桃をかたどったものもあります。亀の木型には3種類の銅貨の模様が彫られていて、必要に応じて異なる模様が付けられるように出来ています。「良質な木型はいつまでも使うことができるので、老舗焼き菓子店では代々受け継がれていることが多いです」と林氏は言います。しかし、こういった手作りの菓子店も年々減っていることから、木型で作る餅菓子は以前よりも珍しくなっているそうです。

型から取り出したら25〜30分ほど蒸し上げます。「温度が高すぎると生地が崩れて平たくなってしまうので、温度には気を付けなくてはいけません」。

この他にも幸運を願う発糕の作り方も見せて頂きました。まず蓬萊米というお米か、在來のお米をすりつぶしてペースト状にし、黒砂糖または上白糖を加えます。発糕は高温で蒸すことによって、花が開くように生地が膨らんでいくのが特徴です。また、年糕も作り方がよく似ていて、もち米粉に砂糖と油を混ぜたものを高温で3〜4時間ほど蒸します。いずれも旧正月の間にお供えする大切なお菓子です。

采緹油飯-42 (Copy)采緹油飯-44 (Copy)▲粘り気と弾力のある麻糬にはお金が手元に残る、財運が向上するという意味があります。

「台湾では各季節や年の瀬に合わせて特定の食べ物を食べる習慣があるので、私たちは祭日をとても楽しみにしています」と林氏は話します。彼女は若いころから季節ごとの習慣や民間伝承にまつわるお菓子の作り方を学んで来たそうです。そして台北の人々が季節ごとに天からの祝福を感じられるようにという思いでお菓子を作ってきました。

旧正月料理のタブー
林氏によれば、旧正月用のお菓子を作る際にはタブーとされる行為があるそうです。これは昔の人たちが、年に一度しか作らないお菓子がうまく出来なければ、その年はうまくいかないと考えたためです。そのため、すべてが計画通りに行くよう、伝統的にいくつかのルールが定められました。

例えば、発糕を蒸す際に「もうできたか?」と聞いてはいけません。また、その周りで言い合いをしたり、子供を叱ったりすると、完璧に蒸し上げることができないとも言われています。信心深い家庭では、干支の寅が畏怖の対象であることから、お菓子作りの際に寅年の人は厨房に近づかないようにと言われるそうです。

ただ、これらは技術が発展しておらず、温度を今ほどしっかりコントロールできなかった昔の話です。林氏は、調理に影響しそうなネガティブな要素は極力避ける必要があったからではないかと述べています。現代では、こういった問題はほぼ解決されているので、こうしたタブーは意味を持ちません。実際、林氏はこれまで30年以上に渡って餅菓子を作り続けていますが、実は寅年の生まれだそうです。

各種餅菓子の楽しみ方

発糕
Steamed Sponge Cake
発糕はフワッとした中にもっちりとした感触があるのが特徴です。台湾では黒砂糖を使うのが主流でしたが、最近では全粒粉やかぼちゃなどを使ったレシピも作られるようになり、バリエーションが増えてきています。

年糕
Sweet New Year Rice Cake甘みのある年糕ですが、中には小豆やチーズを混ぜたものもあります。スライスして焼いたり、揚げたりすることもあり、デザートとして旧正月の休み中に楽しみます。

紅亀粿
Red Turtle Cake
木型を使って亀の形を作るこのお菓子は、中にアンコやピーナッツペーストなど甘みのある餡が入っています。中には塩辛いタイプもあり、その中では切り干し大根が一般的です。

湯圓
Tangyuan
湯圓は団子状をしていますが、基本的に具は入っておらず、甘いスープと一緒に食べます。ただ、場合によっては肉を入れてしょっぱい味付けにすることもありますし、ゴマやピーナッツなど甘い具を入れて楽しむこともあります。最近ではチョコレートや抹茶、カスタードクリームを入れたスイーツに近いタイプもあります。

蘿蔔糕
Steamed Radish Cake
蘿蔔糕は台湾、香港、その他にも東南アジアでよく食べられ、大根餅とも呼ばれます。この食べ物は旧正月だけでなく、日常的な朝食としても食べられます。台湾では朝食のお店や飲茶のレストランなどで一般的に提供されているメニューです。

鹹年糕
Savory New Year Rice Cake
「鹹」は塩味という意味で、甘い年糕とは違い、炒めたエシャロットや豚のひき肉を混ぜた台湾の伝統料理です。そのまま食べてもいいですし、フレンチトーストのように卵液を絡めて焼くこともあります。

 

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