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未来を切り拓く「自分だけの個性」 アイデアと遊び心で ファッションに新風 (TAIPEI Quarterly 2018 春季号 Vol.11)

アンカーポイント

発表日:2018-03-16

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未来を切り拓く「自分だけの個性」

アイデアと遊び心で
ファッションに新風

 

_ 黄星若  写真 _ 黄建彬

ファッションやデザインの歴史を紐解けば、すぐに分かることがあります。流行とは大抵、一時的なものに過ぎず、時代の洗礼を受けてなお、揺るぎない人気を保ち続けてはじめて「定番」となるということです。そこでファッション業界では、目まぐるしく変化する潮流の中でいかに埋もれないかということが最大の課題となります。台北の街角では今、世界的ブランドとファストファッションのはざまから、新たなトレンドが密かに生まれています。力強いデザインのエネルギーを武器に、フリーマーケットやインターネットの後押しを受けた他にはない個性あふれるスタイル。これが徐々に多くの台北人、さらには外国人の心を捉え、あなどれない勢力へと成長しています。

TAIPEI 春季号 2018 Vol.11
▲大量生産が当たり前の時代に、愛花製作所は自分だけのデザインの靴という独自の路線を踏み出しました。(写真/黄建彬)

TAIPEI 春季号 2018 Vol.11
▲愛花製作所の陳永昌さんは、顧客に合わせて個性的で快適な靴を自ら手掛けます。(写真/黄建彬)
 

愛花製作所
足もとに自分だけの輝きを

靴のデザインはファッション業界の重要な一角を占めています。現在、靴といえば一般的に大規模工場で機械生産され、価格は低く抑えられています。しかし、こうした製品は個性に欠ける嫌いがあることから、オーダーメードの手作り靴が再び脚光を浴びるようになっています。

「愛花製作所」誕生の背景には、あるラブストーリーが隠されています。この物語の主人公は、意中の女性に告白し、彼女の気持ちを射止めるため、自らの手でストラップシューズを仕立てようと思いつきました。その後、彼女はめでたく人生のパートナーとなるのですが、この女性がフラワーデザイナーだったことから店名は「愛花」と名付けられました。

物語の主人公、陳永昌さんとそのお相手、琇涵さんはコーヒーショップの傍らの小さなフリーマーケットからスタート。台北市内の大小様々なフリーマーケットや誠品書店、華山1914文化創意産業園区などいろいろな場所にポップアップ・ストアを開設しました。口コミやインターネットを通じて徐々に知名度が上がり、熱烈なファンを数多く獲得。香港や欧米からも評判を耳にしたお客さんが来店するようになりました。

TAIPEI 春季号 2018 Vol.11
▲手作りシューズは、材料、カラー、花柄の組み合わせを顧客自ら選んで作られ、一足一足にその靴だけの個性が宿っています。(写真/黄建彬)
 

オーダーメードの手作り靴には機械で作った製品とは比べようのない本物の温もりがあると陳さんはいいます。型紙作りから布や革の裁断、釣り込み、磨き、縫製、靴底の貼付けといった工程を経て誕生する靴は、顧客が自分で選んだ材料、カラー、花柄の組み合わせを基に、陳さんが心血注いで作り上げたもので、一足一足にその靴だけの個性が宿っています。

ファッション業界のトレンドは目まぐるしく変化しますが、陳さん夫妻は自分たちの手作り靴に強い自信を持ち続けています。「人の好みは変わるもの」そう語る陳さんは、消費者がモノを買う決め手は価格だけではないと指摘。ある人はブランドを、ある人は機能性を重視しますが、それとは別に「自分だけの個性」を追い求める人もいて、手作りの靴はこうした人たちにぴったりだと訴えます。

履きやすくて、快適で、リーズナブルで、オリジナリティーがある。陳さんは自分が作るオーダーメード靴をこう評します。「愛」を出発点として誕生し、誠実な仕事ぶりで人々の足を温かく包む靴は、台北の靴業界をより個性的なものとすることに一役買っています。

TAIPEI 春季号 2018 Vol.11
▲鹿皮
LOOPYのオーナー、林呱呱さんはおしゃれな服に自由奔放なアイデアを注入します。(写真/黄建彬)

 

鹿皮LOOPY 
遊び心あふれるおしゃれを

「鹿皮LOOPY」を取材に訪れると、この店の女性オーナーは開口一番、「(今まで名乗っていた)嘎嘎(ガーガー)って愛称の人は多すぎるみたいだから、今から『林呱呱(グアーグアー)』に改名するわ」と告げました。そんな自由奔放でナンセンス、かつ人を驚かせて止まない言動を見せるオーナーとこの店の商品にはどこか共通する個性があるようです。

「頭がおかしい、間抜け」という意味の俗語、「LOOPY」を屋号に持つ「鹿皮LOOPY」の店内には、その名にふさわしく、いたる所にナンセンスなユーモアがあふれていて、思わず笑みがこぼれます。店のオーナーはとても若い一組の男女で、オープン当初はまだ大学3年生だったそうです。

「大学でインダストリアルデザインを学んでいて、先生からトースターをデザインするように言われた時、私はトースターにワニの口の形をしたゲームを仕込んだの。ゲームを終えてはじめてワニの口から『ポン!』という音がして口を閉じトーストを焼き始めるのよ」。女性オーナーの「林呱呱」さんは、笑いながら大学時代の作品について話してくれました。想像を超えたデザインの才能は学生のころから存分に発揮されていたようですが、こうしたコミカルな作品は、先生によって次々と却下されたそうです。当時のことを振り返り、「納得がいかないと思いながら、自分たちが作りためた作品を人に見せたいと考えるようになり、インターネットを利用したり、フリーマーケットに出品したりして、最終的に店を開くことに決めたの」と語ります。こうして鹿皮LOOPYが誕生したのです。

大学3年生だった2人は商品のデザインに取り組むかたわら、店舗を経営するという勉強も始めました。赤字続きだった開店当初から、ようやく利益が出るようになるまでには度重なる挫折を繰り返し、少なからぬ授業料を支払うことになりました。ただ、幸いなことに2人がデザインに対する志を失うことはなく、頭の中に浮かんだ奇妙キテレツなアイデアを商品化し、「楽しさの素」を届け続けています。

低価格のファストファッションが隆盛を極める昨今、台湾の服飾業界はとても厳しい状況に置かれています。しかしメード・イン・タイワン(MIT台湾製)という言葉が象徴するのは品質の高さだと考える林さんは、綿花の選択から生地の品質、縫製、染料が環境にやさしいかどうかといったことまで細部にこだわり、いい加減な仕事を自分に許しません。こうした態度こそ、不景気の中で鹿皮LOOPYが成長を続ける理由なのかもしれません。

やみくもに流行を追わず、自分のやり方を貫き、質の高い生地や縫製で、思わず笑みがこぼれるような癒やしのデザインの鹿皮LOOPYは、台北のファッション業界に新たな方向性を示すとともに、若者による起業に無限の可能性を切り拓いたと言えるでしょう。


TAIPEI 春季号 2018 Vol.11

▲鹿皮LOOPYの服にはデザイナーの豊かなアイデアが表現されています。(写真/黄建彬)

 

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