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北投の古い邸宅と 名士をめぐる物語 (TAIPEI Quarterly 2018 春季号 Vol.11)

アンカーポイント

発表日:2018-03-16

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北投の古い邸宅と
名士をめぐる物語

 _ 鍾文萍   写真 _ 楊智仁、王暁菁
 

▲和洋折衷様式の梅庭は、于右任の旧別荘という歴史的価値も備えています。(写真/楊智仁)
 

多くの温泉が集まり、老木が影を成す北投。市街地の喧騒とは違った静けさをたたえ、にぎやかな台北市において宝物のような存在で、行楽地としてだけでなく、落ち着いた暮らしを営むのにも適しています。それは政治家をはじめとする多くの名士がここに居を構えたことからもうかがい知ることができます。

こうした名士の邸宅は現在、当時の彼らの普段の暮らしを知り、歴史や時代の雰囲気を追想することができる場所となっています。MRT新北投駅から光明路や幽雅路に沿って坂道を上れば、小道の奥や山肌にひっそりたたずむ、豊かな物語を持つ古い邸宅を見つけることができます。こうした建物は、百年の歴史を持つ北投温泉郷においてそれぞれの時代の文化を今に伝えています。
 

北投梅庭と于右任

于右任は清朝末期の挙人(科挙のうち、郷試に合格した者)で、『神州日報』、『民立報』といった新聞を創刊した経歴を持つため「近代新聞記者の父」と呼ばれるほか、監察院長在任中に監察制度を確立したことから「監察の父」とも称されます。しかしその名を最も世に広く知らしめたのは書道家としての一面で、「読みやすい、書きやすい、正確、美しい」を原則とする「標準草書」を確立し、六朝楷書といった楷書と草書を自然な形で融合させたことにより「一代草聖」と呼ばれ、尊敬を集めています。
 

一人になるための隠れ家

人付き合いが良く、交友関係の広かった于右任は1952年、北投にあるこの和洋折衷建築を気に入って別荘とし、「梅庭」と名付けて避暑地にすると同時に、誕生日などを人に祝われる煩わしさを避けるための隠れ家として使用しました。

1930年代に建てられた梅庭は、山と渓流の間に隠れるように建っています。母屋は木造の日本家屋ですが、山あいに位置する北投特有の地形に合わせて二層構造の稜堡(星型要塞)様式を採用しています。1階部分である上層は石積みの土台に黒い瓦屋根と木枠のガラス戸に囲まれた建物で、下層部は鉄筋コンクリート製の造りとなっています。また、緊急時に裏庭から逃げることができるよう、防空避難用の通路も設けられています。入り口の門柱に于右任自らの手による「梅庭」の文字が刻まれているほか、最も長い時間を過ごしたという書斎には現在、作品の展示スペースが設けられており、于右任の上品かつ力強い書が味わえるとともに、その自然で飾らない生活スタイルをうかがい知ることができます。

 

北投梅庭

北投区中山路6
(02)2897-2647
~日曜09:00~17:00



▲優雅な静けさをたたえた梅庭の書斎には于右任の書が展示されており、大家の作品を存分に味わうことができます。(写真/楊智仁)


足を伸ばして昔懐かしの駅舎へ 
新北投駅

北投を訪れる温泉客が増え、1916年に行楽客の流れを分散させる目的で温泉地へ直行する鉄道の新路線「北投新北投」支線が開設されました。しかし同支線は1988年にMRT新北投駅が着工を迎えた際に廃止。旧駅舎は彰化県のレジャー施設によって買い取られました。後に、台北市に再び寄贈され、2017年に元の場所から50メートルほど離れた位置で再建工事が完了。現在、北投と各地の芸術・文化を結ぶ場として活用されています。最初の建設、拡張、供用中止、廃線、移設、帰郷と、この駅舎にまつわる百年の歴史をその目で確かめてみてはいかがでしょうか。

新北投駅

北投区七星街1
(02)2891-5558
~日曜10:00~18:00

 

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