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オーストラリアから台北へ 「動作教育」を広める自然人 (TAIPEI Quarterly 2018 秋季号 Vol.13)

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発表日:2018-09-10

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オーストラリアから台北へ

動作教育を広める自然人
 

文/Taiwan Scene 写真/April Chen

 

ネイサン・レイNathan Rayさんと待ち合わせたのは、MRT古亭駅から北西方向に和平西路を渡ったところにある小さな公園でした。台北ではこのような緑のある公共の空間は、当たりをつけるべき場所が分かっていればすぐに見つかります。ここはレイさんが取り組んでいる活動、そしてこの町で楽しめる無数の屋外アクティビティについて話すにはぴったりな場所のようです。

 

 レイさんの故郷はオーストラリアのニューサウスウェールズ州。その東海岸にある小さな町から台湾にやってきて2年半、自身が「動作教育と身体鍛錬」と呼ぶものを広める活動に取り組んできました。
 

TAIPEI 秋季号 2018 Vol.13 オーストラリアから台北へ 「動作教育」を広める自然人▲ 象山はレイさんが好きなハイキングスポットのひとつです。
 

台北への移住

 

 最初に浮かんだ疑問は「動作教育と身体鍛錬」とは何かということでした。レイさんはこれを「特定の理論やスポーツを超えたもの」だと説明します。「むしろライフスタイル、あるいは人生観だといえるね。身体をうまく動かせるようになれば、肉体的に向上し、よりよい人間になれると考えているんだ。」
 

レイさんは2年半前、オーストラリアで知り合った台湾人の妻とともに台北へ移り住みました。「20代前半、オーストラリアのあちこちへ行ってみたけど、どこへ行っても『オーストラリア』だったよ。でも台湾は何もかもが違ったんだ。」

 

それまで台北を訪れたことは何度かありましたが、変化の大きいこの町での生活に対する準備にはなりませんでした。「根っからの自然人」と言うレイさんにとっては当然のことでしょう。台北での生活はチャレンジの連続ですが、心の準備はできていたと言います。

 

「何でも受け入れようという気持ちで台湾に来たし、言葉や文化、気候や食べ物などの違いに苦労するだろうということは分かっていたよ。台北は故郷とは違うところがとても多いから、何とかやっていくためには自分を変えなければならないと気づいたんだ。」

 

台北でお気に入りのハイキングコース

 

レイさんが台北でバランスを保つことができているのは、この町では自然がすぐそばにあるからだそうです。確かに、落ち着いて生活できるのは妻や家族の次に自然のおかげだと言って間違いないありません。台北から出なくても、とても容易にこの町の喧騒から抜けだせるところが、ここでの生活で一番気に入っていることのひとつだとレイさんは言います。

 

「町の中心地で、台北市政府や台北101にも近い信義区に住んでいるんだ。家から10分行けば、もう象山の森の中さ。ほかにも拇指山や忠勇山、金面山などMRTの駅から歩いて行ける最高のハイキングコースが山ほどあるよ。」

 

レイさんが最後に挙げた金面山のハイキングコースはこの数年で愛好家たちに人気となっていますが、それには理由があります。金面山は内湖エリアにあり、MRT西湖駅や観覧車で有名なミラマーエンターテイメントパークからも近く、頂上近くではボルダリングもできるのだそうです。

 

 金面山は台北で気に入っているハイキングコースのひとつだね。山を越えると、故宮博物院へ向かう下り坂に出るんだ。自分が台北市の中にいるとはとても思えないよ。」

 

もしハイキングコースへのアクセスがこんなに便利でなかったら、台北での生活は困難なものになっていただろう、とレイさんは言います。「森林浴」の流行りには必ずしも賛成ではないという彼ですが、定期的に野外へ出かけることは心身に良いと考えています。

 

 「僕らは誰もが外へ出かける必要があるんだ。大都市から抜け出して森林まで簡単に行けることが、幸せに暮らせる秘訣だよ。ハイキングにはかなり頻繁に行くね。友達と計画して行くこともあれば、思いついたらすぐ行くこともある。故郷へ帰ったらビーチへ行くけど、台北ではそれほど簡単ではないね。でも山は近いし、魅力的な選択肢。この町はどこからでも山を見ることができるけどオーストラリアではこんな景色はどこにもないから、遠くに山を見るといつも感動するんだ。」

TAIPEI 秋季号 2018 Vol.13 オーストラリアから台北へ 「動作教育」を広める自然人レイさんは近隣の公園で「動作」のトレーニングのクラスを開いています。
 

台北での「動作教育」

 

 町を離れて自然の中へ出かけることが大事だというレイさんはまた、運動愛好家に町中の公園が提供されている環境も気に入っているそうです。

 

「台北はどこにでも公園があって、ほんとによく整備された運動用具が設置されているね。チンアップバーがどこにでもあるなんて!オーストラリアだったら盗まれたり壊されたりして、ありえないよ。山の頂上にも小さな公園があって大勢の70代の人たちがストレッチしたり、ウェイトリフティングをしたり、太極拳をしたりしているのは素晴らしいと思う。ここの老人たちはかっこいいね。僕らが知らないことをしっかり分かっているんだ。」

 

 間もなく親になるレイさんはこれからも「動作教育」を広めるために、台北で活動を続けていくそうです。「僕は動作の視点から肉体的適応能力を教えているんだ。つまり、動作のキャパシティを広げることが目的だね。筋トレでもフィットネスでもなく、『動作』なんだ。僕が教えている内容は世界的に有名なコーチでメルボルンで師事したイド・ポータルの影響を強く受けている。台北でこの考え方を知っている人がいないと気づいて、自分でやろうと決めたんだ。」

 

 地元のパートナーである陳孝賢さんとともに、レイさんは動作のトレーニングに活用できる考え方と方法を教える「台北ムーヴメントミーティング」を毎月開催しています。この活動を「ヒューマン:ムーヴメントプロジェクト」と名付け、身体をよりうまく動かすことによって人生を変えられるということを台北の人々に伝えていこうとしています。

 

アジアで外国人が最も住みやすい都市のひとつとして評判が高まっている台北。この町への移住に興味がある読者に対して、レイさんは「仕方なく」都会の住人になるかもしれない人たちに住むエリアを選ぶ時のアドバイスをいくつかくれました。

「中心地からでもMRTに少し乗って町の外れまで行けば、いろいろな選択肢がある。でも、もし自分が今住んでいるところから引っ越すなら内湖を選ぶね。内湖は他の昔からあるエリアとは少し違う。建物が高くなくて山が近く、新しくて自然の多い場所なんだ。でも他にも良いエリアがたくさんあるよ。どこでも山の近くに住めば、家を出て10分後にはもう山の中さ。」

 

 またレイさんはYouBike(公共自転車シェアリング)が大好きなのだそう。あちこちへ出かける時も、普段の生活にも便利で、台北を魅力的な場所にしていると言います。「YouBikeはよく利用するよ。バスやMRTも一緒に利用すれば、本当にどこにでも行ける。台北の生活に車はいらないけど、これも故郷にいた時とは大きく変わったところだね。」

 

「田舎者」だと自称するレイさん。台北での生活はチャレンジですが、この町のあちこちへ出かけることは難しくありません。そして、より重要なことは、気の向いた時にいつでもこの町の外へ出かけられることなのかもしれません。

 

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