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スケートを履いたパイワン族戦士宋青陽選手 (TAIPEI Quarterly 2016 冬季号 Vol.06)

アンカーポイント

発表日:2017-03-23

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2017台北ユニバ‧ローラースケート競技で金メダルを
スケートを履いたパイワン族戦士宋青陽選手

_ 謝瑩潔
写真 _ 李庭歓、王冠文
TAIPEI 夏季号 2016 Vol.06 スケートを履いたパイワン族戦士宋青陽選手
▲ 宋青陽選手はローラースケートとアイススケートの両方に取り組む数少ない選手の一人。(写真/王冠文)

台湾先住民の間で神とあがめられるヘビ「ヒャッポダ(百歩蛇)」をデザインしたウェアに身を包み、頭の両脇を剃り上げ、残した髪をポニーテール状に結んでコースを滑走する姿はまるで、鋭利な狩猟刀が空気を切り裂き飛んでいるかのよう。2017年に開催される台北ユニバーシアードのローラースケート競技に出場するパイワン族出身の宋青陽(先住民名‧パガラファ‧ランアラン)選手が狙う獲物は4個の金メダルです。

風を切って前進する
「かけもち」スケーター

台東県金峰郷ルラケス部落出身の宋選手は、幼い頃にコーチの戴永松氏にその才能を見出され、20年にわたり二人三脚で台湾ローラースケートおよびアイススケート界に次々と伝説を打ち立ててきました。
宋選手が「戴パパ」と呼び、人生の師と仰ぐ戴永松コーチはもともと、同選手の両親が働いていた建設現場の主任で、アマチュアのローラースケート指導者でもありました。宋選手は幼いころ、戴コーチの子供と一緒にローラースケートを楽しみ、その風に乗るようなスピード感に魅了されました。そんな彼に天賦の才能があると感じた戴パパは、その力を引き出そうと小学校5年生の時、彼を連れて中国へわたり、トレーニングを受けさせました。
そして17歳で初めてローラースピードスケート世界選手権のジュニア部門に出場した宋選手はいきなり5個の金メダルを獲得。当時を振り返る宋選手は「感動のあまり涙し、自信も付いた」と語ります。さらにその翌年には、全民運動会(日本の国体に相当)、アジアローラースポーツ選手権大会、アジア競技大会で計9個の金メダルと1個の銀メダルを獲得するという驚異の成績を挙げました。
TAIPEI 夏季号 2016 Vol.06 スケートを履いたパイワン族戦士宋青陽選手
▲ 2017台北ユニバでのメダル獲得に自信を見せる宋青陽選手。(写真/李庭歓)

しかし2012年、宋選手は中華民国ローラースポーツ協会とのトラブルから「3年間の競技活動禁止」処分を受けました。「愛するローラースケートのレースに3年間出られないという状況がとてもつらく競技を引退も考えたという彼でしたが、その後、戴パパの勧めでアイススケートの練習を開始しました。」ただ宋選手によると、アイススケートは氷との接触面が小さく、抵抗も少ないため正確かつ素早い動作が必要で、ローラースケートとは「バスケットボールとコーフボール(バックボードに跳ねたショットでも得点できるか完全なエアボールしか認められないか)」ほどの違いがあるそうです。そのため彼はこの時のことを「まったく一からやり直しだった」と振り返っています。
こうして、レースへの参加を禁じられた宋選手は台湾では珍しい「かけもち選手」となり、1年余りのトレーニングを経て冬季オリンピックのスピードスケート種目出場を目指すことを決意。しかし、500メートル36.7秒の壁を越えられず、「こんな記録では出場資格が得られない」と失望する日々が続きました。ところがカナダで行われた試合で突然、35.2秒という記録を叩き出し、さらに世界選手権で34.64秒とタイムを縮め、見事、2014年ソチ五輪の出場権を獲得。台湾初の冬季オリンピック‧スピードスケート種目出場を果たしました。

先住民魂で栄光をつかみとる
スポーツの世界で生きるということは孤独でつらいもの。ソチ五輪に備え、ドイツのスケート学校で3カ月の特訓を積んだ宋選手は「外国人選手は私のことをあまり口をきかない変なやつだと感じたと思う」と話しますが、その実力は彼らを驚かせ、オランダのスケート雑誌にも取り上げられました。
しかし、腰のけがが影響してソチ五輪では思うような成績を残せませんでした。これをきっかけに彼は不退転の決意を示そうと思い切って頭を剃り上げ、さらにその後、中央部だけを残してポニーテール状に結ぶというヘアスタイルに変えました。そんな独特な出で立ちでコースに立つ宋選手は「先住民として恵まれた爆発力と協調性という長所に自分の努力が必要です」と言います。また、ローラースケートでもアイススケートでも風よりも早く走ることを目指し、「チーターが獲物を狙うように栄光をものにしたい」と抱負を語ります。
2015年、宋選手はアジア距離別スピードスケート選手権大会の500メートル競技で8年間破られることのなかった大会記録を塗り替えて金メダルを獲得しました。その試合の後、彼はローラースケート競技にも復帰し、全民運動会で台湾記録を更新して2個の金メダルを獲得。競技活動禁止というつらい時期を脱し、2つの競技に思う存分取り組めるようになった宋選手は「2017年の台北ユニバで金、さらに2018年の平昌冬季五輪でもメダルを取りたい」と自信にあふれた表情で語りました。

宋青陽選手の主な成績
2009 年 ローラースピードスケート世界選手権ジュニア部門:
300m / 500m / 1,000m /マラソン/リレーで優勝
2010 年 全民運動会(ローラースケート):
300m / 500m / 100m /リレーで優勝
アジアローラースポーツ選手権大会:300m(コース)/ 500m(コース)/ 200m(ロード)で優勝、500m(ロード)で準優勝
アジア競技大会(広州):300m / 500m で優勝
2011 年 アジアローラースポーツ選手権大会:200m(ロード)で第3 位
2013 年 冬季ユニバーシアード(スピードスケート):1,000m で第3 位
2015 年 冬季ユニバーシアード(スピードスケート):500m で第3 位
アジア距離別スピードスケート選手権大会:500m で優勝(大会記録更新)
全民運動会(ローラースケート):300m / 500m で優勝

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