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華やかな輝きを支える技 ランタン職人‧陳祖栄 (TAIPEI Quarterly 2016 冬季号 Vol.06)

アンカーポイント

発表日:2017-03-23

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華やかな輝きを支える技
ランタン職人‧陳祖栄
_ 樊語婕 
写真 _ 施純泰、陳祖榮

今年の台湾ランタンフェスティバルに登場した高さ12メートルの「祥猴献桃」や、2014年台北ランタンフェスティバルを彩った「孔子周遊列国」、「昭君出塞」などの優美なランタン。これらはすべて国宝級のランタン職人‧陳祖栄さんの手によるものです。2013年に台北ランタンフェスティバルに出品された「伝統芸陣燈」は、台北を代表する作品として初めて海を渡り、同年に韓国ソウルで開催されたランタンフェスティバルで清渓川を鮮やかに彩りました。
陳祖栄さんの工房を尋ねると、数えきれないほどの大小のランタンが並ぶ中にさまざまな種類の保護メガネ、ペンチ、ベルベット、リボン、電球、鉄線、電気溶接機などの工具が置かれています。これらの道具から、ランタン製作の複雑さと奥深さが垣間見えます。
TAIPEI 夏季号 2016 Vol.06 華やかな輝きを支える技    ランタン職人‧陳祖栄
▲ (写真/施純泰)

中年から始めた
ランタン作り
陳祖栄さんがランタン職人になったいきさつは、中年になってから人生の方向転換をするお手本だと言えるでしょう。復興高級商工職業学校を卒業した陳さんは、安定した収入を求めて中国電視(テレビ局)のニュース部門に就職しました。取材用車両の運転手から主任に昇格し、安定した生活を送っていましたが、心の中の創作魂はうずうずしていました。1998年、観光局主催のランタンコンテストに初めて参加して優秀賞を獲得し、ここから仕事とランタン作りの両立が始まりました。
2009年に定年退職した陳さんはついに自分の会社を立ち上げ、ランタン作りに全身全霊を投じることになりました。63歳の彼は笑いながらこう言います。「ランタン作りはよくできれば名誉とお金の両方が手に入りますが、とても大変で、ストレスも大きいです。ランタン作りを始めてから、旧正月休暇にちゃんと休んだことはありません。ランタンフェスティバルの前で日夜準備に忙しい時ですから。」
ランタン作りを始めて約20年。人生最大の挑戦は、昨年の台湾ランタンフェスティバルに出品した「鳳凰嬉春」でした。「高さは14メートル、翼は8メートルあり、屋外の強風や大雨などにも配慮しなければなりませんでした。鳳凰が本当に飛んでいってしまわないか心配でしたよ!」陳さんは先輩に教えを請い、鉄筋で構造を強化する方法を鉄工場と毎日検討しました。そして10人のチームで3カ月の時間をかけ、ついに重さ1トンを超える大型作品が完成し、鳳凰の幻想的な姿が現れたのです。

ランタン作りは
武芸十八般のごとし
伝統的なランタン職人とは違い、陳さんの創作はいつも下書きを描くことから始まります。これはランタンのバランスを正確に保つためだそうです。陳さんは異なる厚さのベルベットを使って光に強弱をつけたり、明るさの異なる電球を使って光源を分散させたり、カラフルなLEDライトを使用したりします。また、モーターで頭を動かしたり、回転させたり、まばたきをさせたり、さまざまな動作を作り出すだけでなく、リモコン装置によるLEDライトの変速変色点滅も取り入れています。さらに、雨による漏電も考慮して電球のプラスチックカバーも開発したそうです。
TAIPEI 夏季号 2016 Vol.06 華やかな輝きを支える技    ランタン職人‧陳祖栄
▲ 昨年の台湾ランタンフェスティバルの「鳳凰嬉春」。陳祖栄さんの創作人生で最大の挑戦でした。(写真/陳祖栄)

毎回仕事に集中しだすと、陳さんは長い間不眠不休で過ごします。2013年の台北ランタンフェスティバルに出品した「伝統芸陣燈」は数十個のランタンからなる作品で、製作に2カ月かかりました。製作にあたって広く書籍を読み、伝統的な芸陣(寺の祭りで行われる民間芸能)にまつわる故事を研究し、デザインの詳細を組み立てました。「ランタン作りはまさに“武芸十八般”です。設計、骨組み、構造、鉄工、電気工作、溶接、色づけなどすべてを理解していなければなりません。さらに組立、運送などの細部まで考慮して、初めて皆さんに美しいランタンをお見せすることができるのです。」
ランタンはお祭りで使われるものなので、めでたい雰囲気を作ることがとても重要だと陳さんは考えています。昼間は芸術品として、夜はまぶしく光る照明装置として、昼夜問わず楽しめるものにしなくてはなりません。「素晴らしいランタンは、まず人とのご縁がなくてはなりません。見る人が一目見て気に入ってくれたのなら、それは作品の色、バランス、外観などがぴったりマッチしているということです。このほかに、構造と技も重要です。全体の組立、布張り、鉄線の枠作りと結合、色つけと飾りつけ、どれもおろそかにできません。」
TAIPEI 夏季号 2016 Vol.06 華やかな輝きを支える技    ランタン職人‧陳祖栄
▲ 今年の台湾ランタンフェスティバルに登場した「祥猴献桃」は、見る者をとりこにしました。(写真/陳祖栄)

伝統のランタンに
輝く台湾の光
陳さんは中華ランタン芸術学会の理事長を務めています。忙しい合間を縫ってランタンアートの推進に尽力しており、数年前から拘置所で製作技術を教えたり、母校の復興高級商工職業学校へ赴いて教壇に立ったりしています。来年の台湾ランタンフェスティバルが開催される雲林県では、県各地の学校の先生たちを指導し、ランタン作りの技がキャンパスに根づくことを願っています。また過去には台湾代表として日本、シンガポール、マレーシア、韓国などを訪れて技術を伝え、台湾の「光」を世界に広めています。
すでに国宝のランタン職人と呼ばれている陳さんですが、「作りながら学び、他の人の作品も見習っています。色づけやバランスなどよりよいものにしたいですね」と謙虚に話します。2017年の台北ランタンフェスティバルは北門と西門町周辺に会場を移して行われますが、いかに現地の風景と作品を融合させるか、陳さんはすでに設計を始めています。新たな創意に満ちた作品が私たちを楽しませてくれることでしょう。
 

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