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この島を見つめる 旅人のマクロでミクロな視点 (TAIPEI Quarterly 2016 秋季号 Vol.05)

アンカーポイント

発表日:2017-03-22

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この島を見つめる
旅人のマクロでミクロな視点

_ 江欣盈
写真 _ 片倉佳史、江欣盈

未知の美しい大地に降り立つと、待っていたのは見知らぬ街道や食べたことのない食べ物、新鮮で刺激的なにおい、意味の分からない言葉と文字でした。旅人とは、手探りで旅を進め、自分だけの冒険日誌を綴り、つまりは人を引き付けてやまない場所を旅しているということかもしれません。片倉佳史さんは世界60 数カ国を旅しながらも、台湾には特別な思い入れを持ち、同じく作家である妻、片倉真理さんとともにそれぞれ1997 年、1999 年から台湾に居を構えています。旅や執筆、撮影、鉄道探訪、歴史研究という形で、地元ならではの人々・文化や風習を記録し、旅人の目線を通じてより美しい台湾を見せてくれます。
TAIPEI 秋季号 2016 Vol.05 この島を見つめる  旅人のマクロでミクロな視点
▲ 片倉真理(左)さんと片倉佳史(右)さん。それぞれ著書を出版するかたわら、台北市観光伝播局が発行する、左右どちらからも生きた内容が楽しめる『台北満喫』を手掛けています。(写真/江欣盈)

物語を持つ島 
旅を通じ歴史見つめる

1895 年の下関条約から1945 年までの50 年間、台湾では異なるルーツを持つ人々の衝突と融合が繰り広げられ、そこで刻まれた台湾と日本の間の奥深く複雑な思いは、今でも文化や言葉、建築などさまざまな側面に表れています。片倉佳史さんは1991 年に初めて台湾に来たとき、まったく中国語は話せませんでしたが、共通の漢字を通じて台湾の人と「筆談」ができただけでなく、流暢な日本語を操るお年寄りたちに出会い、すっかり驚いてしまいました。片倉さんは台湾の豊かな風土や人情に引かれ、台日関係の研究に打ち込みます。長い期間をかけ台湾の各地に残された日本時代の足跡を探索し、最近では日本各地に散らばる「湾生(日本統治時代に台湾で生まれ育った日本にルーツを持つ人々)」のインタビューに心血を注ぎ、その人々や史料について映像と文字で貴重な記録を残しています。
TAIPEI 秋季号 2016 Vol.05 この島を見つめる  旅人のマクロでミクロな視点
▲ 鉄道の音を録音している片倉佳史さん。駅やプラットフォーム、車内などで録音します。音を細かく精確に記録することで、ふだんは忘れられがちな小さなところまで発見することができ、感動を残してくれます。(写真/片倉佳史)

片倉さんは、歴史的な事件はさまざまな側面を持つため、簡単には評価できないと考えます。深いところまで入り込んで理解し、これまでに起こった様々な出来事に向き合うことではじめてお互いに尊重することができるようになるのです。歴史とは教科書に印刷された文字だけではありません。若い世代に歴史を知らせるという使命感をいつも胸に、あの年月が台日両国の間にどんな影響をもたらしたかを理解してもらおうと取り組んでいます。
公益財団法人全国修学旅行研究協会の調べによれば、日本の人々が最も好む海外の修学旅行先は台湾で、2014 年には2 万8,314人が訪れています。台北市観光伝播局は2015 年に『高校生・大学生のための台北満喫ハンドブック』を発行、片倉真理さんが編集を、片倉佳史さんが企画と撮影を手掛けました。日本の新進ヴィジュアルクリエーターの太公良(タコラ・ふとり・きみよし)さんとのコラボレーションで、斬新なデザインと若々しくポップな内容で日本の若い学生たちに好評です。片倉佳史さんは最近、台湾と日本で年間約30 回もの講演を行い、食文化や風習、歴史・史跡、宗教などさまざまな角度を切り口に、深くユニークな内容で「台湾を理解したい」、「実際に台湾を訪れたい」とより多くの人を引き付けています。

物語を持つ都市 
旅を通じ暮らし見つめる

台北に居を構えて20 年近く、今でも片倉夫妻が最もよく聞かれるのが「どうして台湾が好きなんですか?」という質問です。片倉佳史さんはトレードマークのニコニコした目で「台湾の人は台湾がどれほど素晴らしいかを知らないみたいですね」と答えます。ベテランの鉄道ファンとして、台湾の鉄道やプラットフォーム、車両を巡り、音と映像で細かいところまで捉え、線路に沿って生まれる厚い人情味を楽しんでいると言います。MRT や鉄道の車内放送にもユニークな視点を光らせ、「世界でも4 つも5 つもの言語で車内放送が行われているのは台湾だけです。とても面白いでしょう?」。地元の人には慣れ親しんだ日常が、旅人の耳には特別な魅力をもって入り込んでくるのです。
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▲ MRT 円山駅そばの臨済護国禅寺は、1900年に建立が始まり1911年に完成しました。写真の鐘楼山門はちょうど大殿のそばにあり、典型的な江戸時代の建築様式です。(写真/片倉佳史)

伝統と現代、素朴さと便利さ、または長い歴史背景を持つ史跡に新しくてモダンな建築など、列車は行き交う人々を載せて、台北に流れる歳月の表情をうねうねと綴っていきます。台湾歴史博物館や自来水博物館、台北賓館、総統府などは日本統治時代の姿を残し、そこで流れていった歴史の背中をうかがうことができるかのようです。陽明山と北投には心身ともにリラックスできる温泉があります。北投の瀧乃温泉にはめったにお目に掛かれないラジウム温泉がありますが、世界中で台湾の北投温泉と日本の玉川温泉(秋田県)にしかないものです。珍しい微量元素のラジウムが含まれ、疲労を身体の外に出してくれるため、日本では湯治のための温泉と言われます。もう一つ、片倉さんのとっておきのスポットに円山遺跡そばの臨済護国禅寺があります。このお寺は日本統治時代に日本の僧侶、梅山玄秀が開山したもので、お釈迦さまを祭っています。江戸時代の典型的な建築様式で、心の落ち着く快適な環境である上、周りの景色も美しく、のんびりした午後を過ごすのにぴったりです。
「台北の公園の樹木は夏には生い茂り、鳥も本当にたくさんいます」長い間台北に住む片倉夫妻は、いちばん些細なところからこの大地の生命力を発見します。樹木や草花は、剪定されても次の日にはまた生い茂っているのを見ることができ、台湾という国が生命力と活力にあふれていて、この5 年ほど各地で花開いているのを見るようです。西門町の紅樓のフリーマーケットや、地元の農産物PR を出発点にした独自のスタイルを持つ小さな店舗はすべて台湾の若い人々のパワーがいましっかりと育っていることを象徴しています。「台湾に来て20 年になりますが、知らないことがますます増えて、ずっと掘り起こしていきたいと思うばかりです」。片倉佳史さんと真理さんの綴る台湾日誌はこれからも積み重ねられ、多様で見ごたえのある人々のあり方は、世界を旅する旅人の目には格別にユニークな姿として映るのでしょう。


片倉さんのとっておきグルメ
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大稲・慈聖宮前広場

廟の前のガジュマルの木の下で、蚵仔煎(カキの台湾オムレツ)、鹹肉粥(肉入りおかゆ)、滷肉飯(肉そぼろご飯)、排骨湯(スペアリブのスープ)など台湾の昔ながらの本場の味わい、小吃(小皿料理)が各種味わえます。
保安街49 巷17 号

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楽埔匯農/楽埔町一号糧倉
日本統治時代に建てられた穀物倉庫、台北市一号糧倉をリノベーション。1階で良質の農産物、畜産物を販売、2 階はレストランになっています。昔の穀物倉庫の吹き抜けの構造を生かしつつ、地元の食材のPR にも努め、「糧倉」のイメージを表現しています。歴史とイノベーションの双方を備えた複合文化スペースです。
八徳路2 段346 巷3 弄2 号

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ASW TEA HOUSE
優雅でレトロな洋館の中では、台湾の各地で生産された有機栽培の紅茶を販売しています。ユニークなインテリアと心を込めて作られたお茶に目も舌も大満足。2 階からは大稲埕の風景が一望できます。
迪化街1 段34 号

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黒岩古早味黒砂糖剉冰
きめ細かなカキ氷に昔ながらの味わいを持つ濃厚な黒砂糖が添えられています。それに毎日その日に作られる手作りのトッピングを合わせれば、暑い夏にも人生の喜びが味わえます。
錦州街195 号

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