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台北観光サイト

東山彰良(ひがしやま あきら)

アンカーポイント

発表日:2016-07-13

更新日:2019-09-10

1986

東山彰良(ひがしやま あきら)
東山彰良(ひがしやま あきら)

東山彰良©森清(講談社)

台湾で生まれ、日本に帰化せず、中華民国台湾の国籍を保持している。筆名の「東山」は祖父の出身地である中国山東省から、「彰良」は父親が暮らした地であり、母親の出身地でもある台湾の彰化に由来する。

2002年、「タード・オン・ザ・ラン」で第1回『このミステリーがすごい!』大賞の銀賞および読者賞を受賞。同作は『逃亡作法 - TURD ON THE RUN』と改題して出版され、20万部突破のベストセラーとなった。現在は非常勤講師として中国語を教えている。酒好きで特にテキーラを好み、テキーラ・マエストロの資格をもつ。

受賞記録

2002年 - 「タード・オン・ザ・ラン」で第1回『このミステリーがすごい!』大賞銀賞及び読者賞受賞。

2009年 - 『路傍』で第11回大藪春彦賞受賞。

2014年 - 『ブラックライダー』で第67回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)候補。

2015年 - 『流』で第153回直木三十五賞受賞。
 

Feel Taipei

言うまでもなく、新しいものは古いものの上に築かれてゆく。最新の台北も魅力的だが、その魅力の根っこの部分を探求してみるのも、これまた心楽しい。温故知新の熱い空気のなかを散策しながら美味しいものを食べ、古いからこそ逆に新鮮なものを探し歩くのは、旅の醍醐味でもある。
新旧の台北の旅温度を感じたいのなら、迪化街がオススメだ。古くは「大稲埕」と呼ばれていたこの一帯は、かつて茶葉の一大集散地だった。大稲埕禮拝堂や霞海城隍廟などの古い建造物が数多く残っており、いまも参観することができる。リフォームされた聨藝埕では、過去と現在が溶け合ったような時間のなかで、ゆっくりとお茶を楽しむことができる。台湾の伝統的な人形劇「布袋劇」で使われる傀儡が展示されている台原亜洲偶戯博物館へ行けば、ちょっぴりエキセントリックな午後を過ごせること請け合いだ。今と昔が混然一体となった不思議な場所、それが迪化街界隈なのだ。

懐旧台北

私が子供のころ、台北駅から南下する列車は、中華路と並走する線路をとおっていた。私が暮らしていた祖父母の家は廣州街というところにあったけれど、東西に走るこの廣州街は線路を横切って「萬華」まで続いていた。線路のこちら側の廣州街には大陸から渡って来た外省人が多く住み、線路のあちら側の廣州街はそれ以前から台湾にいた本省人の街だった。私たちは線路の向こう側へ行くことを禁じられていた。
すこし大きくなると、私たちは萬華に遊びに行くようになった。線路を越えてどんどん西へ行くと、清代に造られた赤煉瓦の「剥皮寮街」があり、さらに行けば香炉から煙がもうもうと立ちこめる「龍山寺」がある。その先が「華西街」だ。猥雑な熱気に包まれた華西街は、私たちの目になんとまぶしく映ったことだろう! 屋台を冷やかしながら夜市を漫ろ歩いていると、いつだってちょっぴり大人になれたような気がした。私の瞼の裏に焼き付いた華西街のかがやきは、あのころもいまも変わらない。

散策台北

子供のころの私の一日は、いつも近所の台北植物園から始まった。ほぼ毎朝、祖父といっしょに体操へ出かけていた。体操といっても老人がやるのんびりした朝の運動にすぎないのだけれど、祖父はさも深遠な奥義があるかのようにひとつひとつの動きを解説しては、それがいかに私の人生に役立つかを言い含めた。体が柔らかけりゃ怪我をしにくいからな、朝の新鮮な空気はおまえの喘息にもいいはずだよ。私は祖父の言うことを真に受けて、せっせと体を動かしたものだった。
台北の夏は気温が四十度近くに達することもあるが、植物園ではいつだって熱帯植物たちがひんやりとした影を落としている。一片の雲もない青空に大王椰子の樹々がそびえ立ち、蓮池には桃色の花が咲き乱れる。ぎらつく太陽と涼しい木陰がコントラストを織りなす朝はいまも体操やダンスや太極拳をする人たちでぎわっている。ときには街中(まちなか)の喧騒を離れ、こういうところ散策してみるのもいい。とくに夏に蓮池を埋め尽くす蓮の花は一見の価値ありだ。

美味台北

むかしの台湾ビールといえば「金牌」やオーソドックスな「クラシック」しかなかった。が、いまやまさに百花繚乱である。マンゴーやパイナップルの味付けをしたフルーツビールをはじめ、蜂蜜ビール、小麦を使用したヴァイツェンタイプの白ビール(台北限定)など、手を変え品を変えのんべえたちの喉を潤している。なかでもとりわけ人気が高いのが「18天台灣生啤酒」、すなわち賞味期限がたったの18日しかない台湾ビールだ。
ビール好きには八徳路にある「台灣生啤酒346倉庫餐庁」にぜひとも行ってもらいたい。台湾ビールの倉庫にレストランが併設しているのだが、ここなら新鮮な生ビールを浴びるほど飲める。「焼烤」と呼ばれる炒め物料理も旨い。しかし短い滞在でそんな時間はないという方は、くだんの「18天」が置いてある店を探すべきであろう。ビールにまで目配りが行き届いた店ならば、料理も不味いはずがない。個人的には吉林路にある「好記擔子麵」がオススメである。ここの擔子麵と蟹料理はぜひ食べてもらいたい。

ショッピング台北

ひと口にショッピングと言っても、台北で買える台湾らしいアイテムは千差万別だ。洋服やアクセサリーや雑貨の情報をお求めなら、手っ取り早く旅行雑誌を購入するのがよかろう。わたしがここでご紹介したいのは「牛軋糖」だ。これまで牛軋糖を土産として日本に買って帰ってきて、好評を博さなかったことはない。キャラメルのようでキャラメルではない、ヌガーに近い。
わたしの考えでは、中山北路が台北における牛軋糖の聖地である。まず老爺大酒店の牛軋糖。ちょっぴり大ぶりで、なかに入っているマカダミアナッツが香ばしい。老爺大酒店から徒歩で三分の距離にある大倉久和大飯店で売られている牛軋糖も素晴らしい。なんといってもパッケージがキュートで、お土産にも最適だ。さらに大倉久和大飯店から南京西路へ五分ほど歩いて新光三越へ行けば、地下に「糖村」のショップがある。ここの「夢幻牛軋糖」で私は牛軋糖にハマった。台湾土産には牛軋糖、旨いぞ牛軋糖! この三店舗の牛軋糖は歯にもくっつかない。

 

眠らない台北

近頃、「文創」という言葉をあちこちで耳にする。台湾政府が提唱している「文化創意産業」の略だ。簡単に言えば、文化・芸術を振興していこうということだ。その一環として、台北市内にある旧建造物がリノベーションされて、ちょっぴりノスタルジックでオシャレなカフェやホテルに生まれ変わっている。
「華山1914文化創意產業園區」はそのむかし日本酒を造っていた「台北酒廠」を改築したもので、いまは非営利の芸術活動のために提供されている。八徳路というすこし辺鄙な場所にあるため、西門町や頂好のような喧騒から離れ、夜ともなるとひんやりとした空気が流れる。さながらこのエリアだけ燃える創造意欲を押し隠して、敢えてクールにふるまっているかのよう。猥雑な活気に満ちた夜市も楽しいが、落ち着いたバーでゆったりした夜を過ごすのも乙なものだ。日本酒をずらりと取りそろえた店もあって、古き良き過日を偲ばせる。台北の夜に敢えての日本酒も、これまた新鮮じゃないか。

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