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色褪せぬ青春の思い出 オーディオ黄金時代輝きを現代に (TAIPEI Quarterly 2017 夏季号 Vol.08)

アンカーポイント

発表日:2017-07-19

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色褪せぬ青春の思い出
オーディオ黄金時代輝きを現代に

_凃心怡写真 _梁忠賢、王能佑、台北市観光伝播局、今周刊
 

台北という街には多くの人の古き良き思い出が詰まっています。北門南側の中華路、博愛路、開封街、漢口街、延平南路一帯には音響機器や撮影機器を扱う多くの老舗店舗があり、ここはかつてオーディオ愛好家にとってかけがえのないパラダイスのような場所でした。時代の波にさらされ、今この地域の歴史と移り変わりに注目する価値はありそうです。
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▲  かつての中華商場(写真/王能佑、台北市観光伝播局)

 

栄華を誇った中華商場その誕生と取り壊し

わずか8カ月余りの工期を経て1961年に完成し、台北の有名なランドマークとなった商業施設、中華商場は、今でも多くの人の思い出を支えています。約1キロメートルにわたって建てられた3階建ての8棟が連なる施設は、孫文が唱えた八徳にちなんでそれぞれ「忠」、「孝」、「仁」、「愛」、「信」、「義」、「和」、「平」と名付けられました。建物の名前は伝統的でしたが、中で販売していた商品は当時の流行の最先端を走っていました。
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▲  現在のAV機器通り(写真/梁忠賢)
 

中華商場には広さ2坪のテナントスペースが1,644カ所設けられ、商品は各地のグルメや流行のファッション、新旧のレコードなど何でもあり、どの店にも時を忘れるほど魅力的な雰囲気が漂っていました。中でも有名だったのは音響機器のお店で、当時の台北市民は音響製品や家電を買おうと思い立つと、まず中華商場の「忠棟」と「孝棟」を思い浮かべたほどです。
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▲  かつてのAV機器通り(写真/台北市観光伝播局)
 

南投県から台北に出てきたという品嘉音響の店主、曽文清さんは、中華商場の話になると、歳月の刻まれたその顔にぱあっと青春の輝きが広がります。「若いころはよく忠棟、孝棟に行きました。あそこで新製品を買い集めるなら間違いありませんでした」と語ります。当時、中華商場にあった海利電子、鴻運音響、楽音堂などのお店が販売していた素晴らしい製品の話題になると、オーディオ愛好家たちの話は尽きません。
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▲  かつてのAV機器通り(写真/台北市観光伝播局)
 

中華商場の8棟は6カ所ある歩道橋で連絡していました。商場内のスペースを借りる金銭的な余裕のなかった人たちは、歩道橋上や近くの「騎楼」(ビル1階の軒下で歩道と一体となった部分)で露天販売をし、音響修理で見事な職人技を持つ人もいました。全盛期には中華商場の中と周辺に200店以上のオーディオビジュアル(AV)機器販売店が並び、台湾最大のAV機器商圏と言われました。
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▲  現在のAV機器通り(写真/王能佑)
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各種の流行アイテムを販売していた中華商場は買い物客でにぎわっていました。(写真/王能佑)
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中華商場があった中華路は台北市の幹線道路となっています。(写真/今周刊)
 

しかし、都市は建設と取り壊しを繰り返しながら発展するもので、台北も例外ではありません。中華商場は31年間の輝かしい時代を謳歌しましたが、都市再開発に合わせて解体を余儀なくされました。商場内や周辺に入居していた音響機器販売店は近くの中華路、開封街、延平南路一帯に移転し、中華商場の繁栄を引き継ぐかのごとく商いを続けました。
 

新たな発想でかつての繁栄を再現

都市再開発のため、中華商場は8棟の施設だけでなく、夜空を明るく照らしたネオンの看板も次々と取り壊され、1992年の冬を前に全ての解体作業が終わりました。しかし、にぎわいが途絶えることはありませんでした。中華路近くに移った音響部品、電気用品店が中華商場の忠棟、孝棟の役割を担い、AV機器やアクセサリーの販売拠点となったからです。
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▲  新中華路AV機器通り促進会の黄意婷理事長は、世代間の協力を通じてかつての繁栄を取り戻せると信じています。(写真/梁忠賢)
 

北門電器の黄振南董事長は、中華商場の全盛期に入居することができず、近くの中華路に北門商圏初となる音響機器店をオープンさせました。その後、中華商場の取り壊しに伴い、一部の販売店も近くに移転してきました。黄董事長は「われわれは良い競争関係の中で共存共栄してきました。市場で淘汰された店もありますが、今でも老舗の音響機器店が30店余りあります」と話します。
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▲  若いころに雲林から台北に働きにきた北門音響の店主、黃振南さん。(写真/梁忠賢)
 

年配の人々はどうやって商売を続けるかに頭を使いましたが、音響機器店で育った二代目たちにとっては、ラジオ、CDプレーヤー、ポータブル音楽プレーヤーから最新のデジタルストリーミングへと常に進化する電化製品の移り変わりそのものが人生です。科学技術の進展に伴い彼らも大人となり、今では斬新な発想で商圏活性化の責任を担っています。

家業の音響機器店、翔韻音響を継いだ藍于婷さんは老舗を守りながら、無料の音楽講座や学校でのスピーカー手作り教室の開催、北門を紹介する初の360°パノラマ動画撮影といった新たな試みも始めました。映像音響の張庭嘉さんも店の経営だけに甘んじず、人脈を生かして路上アーティストグループに商圏で壁画をペイントしてもらったところ、多くの観光客が記念撮影やフェイスブックでのチェックインに訪れるようになり、台北に隠れたこのAV機器通りを知ってもらえるきっかけをつくったのです。
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▲  新中華路AV機器通りの店の多くは2代目、3代目が経営しています。(写真/梁忠賢)
 

新中華路影音電器街(新中華路AV機器通り)促進会の黄意婷理事長は「台北市政府がここ数年、台北駅周辺一帯の再開発計画『西区門戸計画』を進めているため、AV機器通りに再び客足が戻ってきました」と話します。台北ランタンフェスティバルの開催時には若い行楽客から「台北にAV機器通りがあったんだ!」という言葉を直接耳にし、何気ないこの一言に非常に感動したそうです。

中華商場が誇った栄華は、解体されてから次第に人々の記憶から消えていったかもしれません。しかし、近くで商売を続けるお店が、斬新なアイディアでかつての繁栄ぶりを上回るような新たな未来を作ってくれることでしょう。

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