発表日:2017-12-14
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都市再開発クリエイティビティ
台北‧下町の魅力を遊ぶ
文 _ 許麗芩 写真 _ 許斌、楊智仁、劉徳媛、台北市都市更新処
人と文化、身の回りの暮らし全体が展示物となる都市博物館。このようなコンセプトについて、世界各地の大都市が盛り上がっています。博物館はもはや塀に囲まれたものではなく、一本の道、ひとつの地区にまで広がっています。台北市でも、北投、大稲埕、艋舺、城南、中山地下街の5つの地区が塀のない博物館として加わりました。特に大稲埕は豊かな文化‧歴史、建築、産業、芸術など多面的な特色を備え、都市再開発とクリエイティビティを同時に実践する場として、新旧入り混じった独特の魅力で人々が次々と訪れる街となっています。
▲古い街並みにできたクリエイティブなショップは、行楽客を引き付ける魅力の一つとなっています。(写真/楊智仁)
史跡再利用で「粋な台北」に 古い建物のリノベがブーム
ここ数年、台北では下町ルネッサンスとでもいうべき「旧城区復興運動」が盛り上がっていて、大稲埕では多くの史跡の再利用から古い建築の修復、クリエイティブ産業の流入、ドラマ‧映画の撮影までが盛んで、さらに行楽客の訪問先としても人気となっています。芸術家の謝里法さんの文学作品『紫色大稲埕』を下敷きにしたドラマは、史跡を再利用したお茶屋さん「新芳春茶行」が主なロケ地となっています。また、世界的な映画スターのトム‧クルーズさんが台湾での新作PRに来た際、台湾の歌姫、蔡依林(ジョリン‧ツァイ)さんとの対談の場になったほか、日本の人気モデル、田中里奈さんが来台し台北観光について紹介したのもここでした。
台北市文化局によると、「旧城区復興運動」とは伝統を新たなやり方で発掘する歩みであり、現代的な視点で伝統を理解することです。大稲埕では今、産業や観光、新興産業であるクリエイティブ産業までいろいろなパワーが蓄えられつつあります。同局は史跡や歴史的建造物の修復と再利用での活性化を図るだけでなく、大稲埕の歴史の歩みと新たな展示方法、新たな視点を組み合わせ、数カ所で文化的意義をもつ指標となるスポットを整備しています。例えば、台北では極めて少ない住居兼店舗のお茶屋さん「新芳春茶行」や、台湾の伝統戯曲の指標となる劇場「大稲埕戯苑」では、劇場街だった華やかな時代を再現、また日本統治時代の台北北警察署の建物を台湾新文化運動記念館として整備しようとしています。
このほか、「老房子文化運動」と銘打ったマッチング体制を整え、古い建築物の修復を進め、クリエイティブ産業関係者から創意あふれる構想を取り入れるなどしています。民間の参加を通じて、市と所有者、クリエイティブ産業関係者、民間企業を結び文化遺産保護と修復に取り組む新たなパートナーシップを構築する狙いです。
▲新芳春茶行は修復を経て、優雅で美しいたたずまいが再現されました。(写真/劉徳媛)
▲URS都市再生前進基地計画では再生を軸に、古い建物の本来の姿を残します。(URS155団円大稲埕内の屋根裏スペースと柱の様子。写真╱許斌)
再開発の「実験場」で
ともに都市を再生
台北市都市更新処の詹育齊‧副総工程司は、「(再開発事業を手掛ける)更新処の仕事には人情味がある」と形容します。同処が大稲埕で行うのは、古い建築物の再生、URS都市再生前進基地、大同再生計画、コミュニティ‧プランナー‧スタジオなど、すべてコミュニティ再生の角度から、実際に人々のいる家屋や空間、暮らしに足を踏み入れ、コミュニティ全体を結び付け、「大稲埕博物館」というコンセプトを実現することです。
いま台北市が推進している「旧城区(旧市街地)」をめぐる各プロジェクトとはつまり、台北で最も古くから発展した市街地、艋舺、大稲埕、台北府城の3カ所の整備です。人々が集まり商業が一定の規模に達していたところです。ですから大稲埕のように早くから繁栄し、歴史の基盤もしっかりしている地域は、再開発であれ再生であれ、公共部門が積極的にリソースを投入し、「旧城区復興」の成果が期待される実験の場となっています。URS都市再生前進基地計画では、「再生」を軸に、これまでのスクラップ‧アンド‧ビルド方式から、古い枠組みに新しいコンセプトを注入する方式に転換、古い下町の環境を改善して産業を誘致した上で、この街に熱い想いを抱く人々に空間を開放したいとしています。
現在、大稲埕にはコンセプト基地5カ所があり、更新処はこの地に根を下ろす個人や団体に空間やプラットフォームを提供、専門家‧研究者と地元の人が共同で実行可能な空間利用モデルを模索します。ですから、同じ空間であっても、実験の違う段階においては、それぞれ異なる概念や経営形態が生まれることが考えられます。同処は「大事なのは地域それぞれが経済モデルを持ちながら生活を送ることができ、アイデンティティと人々の共感を呼び覚ますことです」と計画の成り行きを楽観的に見守っています。つまり、水に石を投げ入れると波が立ち、そこからさざ波が広がっていくように、より多くの人々の参加と共感を呼ぶことを期待しています。
おもしろいことに、大稲埕の物件所有者は流れを見極めて動くのに長けていて、URSや古い建築物の再生が成功したのを見て、大稲埕に暮らした家族の思い出や生活の些細な出来事を思い出し、自身の所有する古い家屋を修復して再利用することに興味を覚え動き始めたりするそうです。
▲URS127玩芸工場ではアート講座を開き、子供たちに大稲埕と触れ合う機会を提供。(写真/台北市都市更新処)
▲大稲埕の漢方薬材店では、全く新しい漢方薬の新しい飲み方を開発、若い人たちの人気を集めています。(写真/許斌)
▲日本統治時代に発記茶行としてにぎわった建物は、修復されURS27W城市影像実験室として生まれ変わりました。(写真╱許斌)
クリエイティブなショップ 新たな形態に民間も参入
大稲埕の再開発と新しいクリエイティブ産業は磁石のように人を引き付け、この歴史的な地域にインスピレーションを得た若者が自らこの流れに参入するケースがますます増え、地域の伝統と新しいアイディアがぴったり噛み合うようになっています。
最近の大稲埕の史跡活性化事業における民間の参入で賞賛を浴びているものに「迪化207博物館」があります。国家表演芸術中心(舞台芸術センター)の前董事長、陳国慈さんが自費で古い建物を購入し整備、史跡活性化の個人的実践ともいえる民間の博物館となりました。地元の古い建物に自らの物語を語らせ、この歴史的な舞台を通じ、人々の共通の思い出を保存する博物館とすることができると陳さんは考えています。
現在、大稲埕国際芸術祭の発起人、周奕成さんが仲間と立ち上げた「芸埕」シリーズは、大稲埕ではおなじみになったクリエイティブなショップのモデル的存在です。地域内で相次いで古い建物を借り受け、方向性を調整しつつクリエイティブなショップやアーティストを呼び込み、「民芸埕」、「小芸埕」といった複合スペースを作り、この地域のクリエイティブな精神を盛り上げる先駆者となりました。
その後、大稲埕の地元に元から根付く各地の食品、漢方薬材、茶葉、布地、美食といった特色ある産業と結び付いたクリエイティブなショップやマーケットが続々と出現するようになりました。迪化商圏発展促進会が行った「大稲埕本草パーティー」では、地元の漢方薬材や各地の食品を利用して、たくさんの「本草(漢方材)」をベースにした飲み物や軽食を開発、伝統的な地域でも最先端を味わうことができると行楽客に向け発信しました。
大稲埕の復興の動きは着々と進んでいます。市は今年9月から歩行者天国(迪化街の帰綏街から南京西路区間)を試行、おおむね好評です。旧正月前の年貨大街(年越し用品セール)まで続けられる予定で、ここからも大稲埕の地場産業の発展と都市開発に対する人々の前向きなパワーを感じることができるでしょう。台北市全体を大きな博物館とすると、大稲埕はすでに「古い街の再生」という同地域ならではの鮮明なブランド色を打ち出し、より多くの人と語り合うのを待ち望んでいます。
大稲埕のURS都市再生前進基地
URS44大稲埕共学堂
大同区迪化街一段44号
URS127玩芸工場
大同区迪化街一段127号
URS155団円大稲埕
大同区迪化街一段155号
URS27W城市影像実験室
大同区延平北路二段27号
URS329稲舍
大同区迪化街一段329号
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