発表日:2019-12-12
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TAIPEI #18 (2019 冬季号)
老舗の手作り湯圓店
文=陳宛妤
編集=下山敬之
写真=林俊耀、林育緯
冬至は二十四節気の一つで、「冬節」とも言われています。『台湾府志』という清朝時期の文献には、「冬至になると人々は米団子を作って神様と先祖に献上し、家族で一緒に食べることで一つ歳を重ねたという」と記されています。米団子は言わば昔の湯圓で、冬至に湯圓を食べることは年齢を重ねること、そして団らんと円満を祈願するという意味を表します。
初期の農業社会では、人々は冬至の前夜に米を挽いて調味料を準備し、家族全員が集まると湯圓を作り、祭祀を済ませてからテーブルを囲んで食べました。現代では生活スタイルがすっかり変わり家庭内で作ることはなくなりましたが、冬至に湯圓を食べる習慣は残っていて、家族でその味を堪能します。 台北には有名な手作り湯圓のお店が多く、どのお店も長い歴史があります。年末になると熱々の湯圓を食べながら冬至を迎えます。
卵入り酒醸で心と体を温める
冬に最も人気の湯圓は、酒醸(米で作った中国の発酵食品)に卵を加えた湯圓で、中国医学では冬の胃腸に非常に優しいとされています。ただ、酸味があることから敬遠する人もいます。そんな中で、南機場夜市(ナンジーチャンイェシー)にある八棟圓仔湯(バードンユェンズタン)の主人は、「私たちの酒醸が口に合わなければ、他のお店で食べても同じです」と自信をもっています。八棟圓仔湯の自家製酒醸は、発酵のし過ぎで酸っぱくならないよう約10日間熟成させた後に冷蔵しています。また、もち米の半分は黒もち米を使用しており、香りだけでなく色彩も豊かです。中に入っている溶き卵にも秘訣があり、販売実績のある地鶏の卵の中からあまり臭いがせず、塩味があり、特に常温であることを重視しています。その方が卵を溶きやすく、鍋に入れた際に膨張して浮いてくるので見た目も良く、食べやすいのですぐに身体を温めてくれます。
八棟圓仔湯 バードンユェンズタン
中正区中華路二段309巷20号
15:00-01:00
02-2332-9617
温冷融合 新しい味覚
台湾の小吃(B級グルメ)の可能性は無限で新たなメニューが次々と生み出されています。中には光や熱を発する変わった湯圓も存在するほどです。その中でも台北の夜市でヒットし、国内外に広まった「氷火湯圓」は、弾力性のある熱々の湯圓がかき氷のように削った氷の器の中に入っています。見た目がユニークなだけでなく、冷たいものが好きな人も通常の湯圓が好きな人も虜にできるメニューです。御品元(ユーピンユェン)で提供しているゴマとキンモクセイの湯圓は、お椀からはみ出るほどの氷の上に、キンモクセイの餡と熱々の湯圓がのっています。湯圓をのせた瞬間は氷が蒸発し、とても印象的な光景を目にすることができます。時間が経つと湯圓は固くなるので、熱いうちに食べるのがおすすめです。湯圓を食べ終えたら、お椀に残った氷に無料で提供しているレモン汁とキンモクセイの蜜を加えると酸味と甘味のあるかき氷として楽しめます。
御品元冰火湯圓(饒河店) ユーピンユェン
松山区饒河街142号
17:00-24:00
0989-647-826
柔らかくてジューシー 肉入り湯圓
塩味のある味が好きであれば新鮮な肉入り湯圓がおすすめです。一番のウリは中の餡の部分で、台湾式だとセロリ、シイタケ、エシャロット、干しエビが豊富に入っていますが、江浙料理では「鮮肉湯糰」と表記し、純粋に豚ひき肉の味が楽しめます。江浙点心が有名なお店の九如商號(ジョウルーシャンハオ)では、豚バラ肉とすね肉を半分ずつ用意し、そこに溶き卵と白醤油を加えます。かき混ぜた後に冷凍して温度を下げることで水分を凝縮させ、完全に凍る前に取り出して使います。伝統的な寧波湯糰は水磨粉(白玉粉)を使用して作ることが特徴です。水磨粉はもち米を粉状にして水に浸し中の沈殿物を乾燥させたものなので、比較的水分が多くこねにくいですが、経験からた技術があれば独特の柔らかさを生み出すことができます。最後にゆでた湯圓を豚骨スープに入れ、白菜とザーサイを加えると寧波風肉入り湯圓の完成です。
種類が豊富な湯圓ですが、どれも違った味で私達を満足させてくれます。今年の冬至はぜひ湯圓を味わいながら素敵な時間を楽しみましょう。最後に湯圓は噛んだ時に中の汁が溢れ出てきますが、比較的熱いので火傷には十分注意してください。
九如商號 ジョウルーシャンハオ
大安区仁愛路四段69号
09:00-21:30
02-2751-7666
圖說:
▲ごま湯圓の入った卵入り酒醸は寒いときに食べると体が温まります。
▲氷とキンモクセイの餡が添えられた湯圓は柔らかくて美味しいです。(写真/林育緯)
▲食感の柔らかい本場の寧波風肉入り湯圓。
老舗の手作り湯圓店
文=陳宛妤
編集=下山敬之
写真=林俊耀、林育緯
冬至は二十四節気の一つで、「冬節」とも言われています。『台湾府志』という清朝時期の文献には、「冬至になると人々は米団子を作って神様と先祖に献上し、家族で一緒に食べることで一つ歳を重ねたという」と記されています。米団子は言わば昔の湯圓で、冬至に湯圓を食べることは年齢を重ねること、そして団らんと円満を祈願するという意味を表します。
初期の農業社会では、人々は冬至の前夜に米を挽いて調味料を準備し、家族全員が集まると湯圓を作り、祭祀を済ませてからテーブルを囲んで食べました。現代では生活スタイルがすっかり変わり家庭内で作ることはなくなりましたが、冬至に湯圓を食べる習慣は残っていて、家族でその味を堪能します。 台北には有名な手作り湯圓のお店が多く、どのお店も長い歴史があります。年末になると熱々の湯圓を食べながら冬至を迎えます。
卵入り酒醸で心と体を温める
冬に最も人気の湯圓は、酒醸(米で作った中国の発酵食品)に卵を加えた湯圓で、中国医学では冬の胃腸に非常に優しいとされています。ただ、酸味があることから敬遠する人もいます。そんな中で、南機場夜市(ナンジーチャンイェシー)にある八棟圓仔湯(バードンユェンズタン)の主人は、「私たちの酒醸が口に合わなければ、他のお店で食べても同じです」と自信をもっています。八棟圓仔湯の自家製酒醸は、発酵のし過ぎで酸っぱくならないよう約10日間熟成させた後に冷蔵しています。また、もち米の半分は黒もち米を使用しており、香りだけでなく色彩も豊かです。中に入っている溶き卵にも秘訣があり、販売実績のある地鶏の卵の中からあまり臭いがせず、塩味があり、特に常温であることを重視しています。その方が卵を溶きやすく、鍋に入れた際に膨張して浮いてくるので見た目も良く、食べやすいのですぐに身体を温めてくれます。
八棟圓仔湯 バードンユェンズタン
中正区中華路二段309巷20号
15:00-01:00
02-2332-9617
温冷融合 新しい味覚
台湾の小吃(B級グルメ)の可能性は無限で新たなメニューが次々と生み出されています。中には光や熱を発する変わった湯圓も存在するほどです。その中でも台北の夜市でヒットし、国内外に広まった「氷火湯圓」は、弾力性のある熱々の湯圓がかき氷のように削った氷の器の中に入っています。見た目がユニークなだけでなく、冷たいものが好きな人も通常の湯圓が好きな人も虜にできるメニューです。御品元(ユーピンユェン)で提供しているゴマとキンモクセイの湯圓は、お椀からはみ出るほどの氷の上に、キンモクセイの餡と熱々の湯圓がのっています。湯圓をのせた瞬間は氷が蒸発し、とても印象的な光景を目にすることができます。時間が経つと湯圓は固くなるので、熱いうちに食べるのがおすすめです。湯圓を食べ終えたら、お椀に残った氷に無料で提供しているレモン汁とキンモクセイの蜜を加えると酸味と甘味のあるかき氷として楽しめます。
御品元冰火湯圓(饒河店) ユーピンユェン
松山区饒河街142号
17:00-24:00
0989-647-826
柔らかくてジューシー 肉入り湯圓
塩味のある味が好きであれば新鮮な肉入り湯圓がおすすめです。一番のウリは中の餡の部分で、台湾式だとセロリ、シイタケ、エシャロット、干しエビが豊富に入っていますが、江浙料理では「鮮肉湯糰」と表記し、純粋に豚ひき肉の味が楽しめます。江浙点心が有名なお店の九如商號(ジョウルーシャンハオ)では、豚バラ肉とすね肉を半分ずつ用意し、そこに溶き卵と白醤油を加えます。かき混ぜた後に冷凍して温度を下げることで水分を凝縮させ、完全に凍る前に取り出して使います。伝統的な寧波湯糰は水磨粉(白玉粉)を使用して作ることが特徴です。水磨粉はもち米を粉状にして水に浸し中の沈殿物を乾燥させたものなので、比較的水分が多くこねにくいですが、経験からた技術があれば独特の柔らかさを生み出すことができます。最後にゆでた湯圓を豚骨スープに入れ、白菜とザーサイを加えると寧波風肉入り湯圓の完成です。
種類が豊富な湯圓ですが、どれも違った味で私達を満足させてくれます。今年の冬至はぜひ湯圓を味わいながら素敵な時間を楽しみましょう。最後に湯圓は噛んだ時に中の汁が溢れ出てきますが、比較的熱いので火傷には十分注意してください。
九如商號 ジョウルーシャンハオ
大安区仁愛路四段69号
09:00-21:30
02-2751-7666
圖說:
▲ごま湯圓の入った卵入り酒醸は寒いときに食べると体が温まります。
▲氷とキンモクセイの餡が添えられた湯圓は柔らかくて美味しいです。(写真/林育緯)
▲食感の柔らかい本場の寧波風肉入り湯圓。