発表日:2021-03-12
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TAIPEI #23 (2021 春季号)
台北のロケ地探訪 おすすめの映画
文/Rik Glauert
編集/下山敬之
写真/Taiwan Scene、本地風光電影股份有限公司、氧気電影有限公司、Yenyi Lin
パンデミックで旅行が制限されている現在、各国の都市を舞台として作られた映画の鑑賞は旅行が好きな人には最適な娯楽と言えるでしょう。なぜなら、映画監督の視点を通じて知らなかった世界の発見や遠く離れた地に住む人たちの生活を知ることができるからです。
多くの人々で賑わう台湾の首都台北は、モダンとレトロが交錯する都市で、雲にも届く最先端の高層ビル以外に歴史が感じられるレトロな路地、貿易の要として長い歴史を持つ波止場なども豊富。また、台北の周囲には高い山々がそびえ立ち、新鮮な空気と緑が都市を包み込んでいます。
そうした背景から台北は国内外のテレビドラマや映画のロケ地として人気です。例えば、2014年に公開されたリュック・ベンソン監督の『ルーシー(Lucy)』という作品では、SF映画の世界観と台北の街並みが見事にマッチし、世界中にその存在を知らしめました。
スクリーン越しにも台北の活気やエネルギーは伝わりますし、実際に映像から受けたインスピレーションによってより深い台北の趣も知ることができるでしょう。
▲映画を通して台北にある様々な街頭や様々な横顔を垣間見ることができます。(写真/Taiwan Scene)
現在は、インターネットにつながる場所であれば、どこでもハリウッド作品やローカル作品が視聴できる便利な世の中ということで、今回は台北をロケ地にした映画と撮影場所を紹介していきたいと思います。
ひとつの太陽:化南新村
砂のようにもろい家族を題材にした映画「ひとつの太陽」は、セックス、犯罪、死によって引き裂かれた家族という台北の暗い一面を描いた作品です。2019年に公開された本作の監督は台湾人の鍾孟宏(ジョンモンホン)。怖い映画が苦手な人には不向きですが、優れた映画作品を決める金馬奨において複数の部門で表彰された作品なのでおすすめです。また、作中の感動的なシーンの大半は台北一古い歴史を持つ木柵化南新村の路地で撮影されています。
▲2019年に公開された「ひとつの太陽」は、アカデミー外国語映画賞を獲得した台湾を代表する作品です。(写真/本地風光電影股份有限公司)
化南新村は1950年代に国立政治大学が職員寮建設のために作った場所で、ここ5年ほどは解体中止を求める運動が行われています。特に豊かな緑に囲まれた丈夫な赤レンガ造りの建物が象徴的で、鍾監督も歴史ある家屋の保存という目的からこの地で映画の撮影をしたと語っています。実際に散策をしてみると、歴史ある雰囲気と昔の素朴な日々が感じられることでしょう。
▲「ひとつの太陽」に登場する化南新村は台北の木柵にあり、赤レンガの建築物が残っている詩的な趣のある場所です。(写真/Taiwan Scene)
現在では映画産業の貢献もあって、レンガに囲まれたロマンチックな通りの散策やSNS映えする写真を撮るために多くの人が足を運んでいます。また、「化南万興願景団隊」という地元団体によってインスタ映えスポットや親切な地元の住民を紹介するマップも作られました。猫空山にも近く、台湾を象徴するヤマムスメなど多くの野生動物の生息地でもあるので、台北市立動物園や猫空ロープウェイと合わせて足を運んでみてください。
君の心に刻んだ名前:国民革命忠烈祠
柳広輝(リョウグアンホイ)監督がメガホンをとった映画「君の心に刻んだ名前」は、昨年9月の公開以来、多くの観客を魅了してきました。本作はカトリック系の高校に通う2人の少年の恋愛を描いた作品で、LGBTQをテーマとした映画では台湾で初めて1億台湾ドルの興行収入を突破しています。ストーリーは蒋経国(ジャンジングオ)総統没後の台北を舞台に家漢とバーディーら2人の学生が、自分たちの気持ちとセクシュアリティに向き合う様子に迫っていくというもの。
▲「君の心に刻んだ名前」は社会問題とも言える同性愛者のストーリーを描いた作品です。(写真/氧気電影有限公司)
中でも恋人関係になった2人が台北旅行で国民革命忠烈祠を訪れ、蒋経国総統を追悼するシーンは物語において非常に重要なシーンとなっています。伝統中華建築の代表である忠烈祠は、国のために戦没した英霊を祀る場所で、作中ではこの地で家漢とバーディーがお互いの理解を深めていきます。
▲映画では2人の主人公が台北忠烈祠を訪れ、総統の国葬に参列するシーンから恋の物語が始まります。(写真/氧気電影有限公司)
忠烈祠とその周辺地域は、作品の時代から30年以上経過した今でも訪れる価値のあるスポットと言えるでしょう。街の北部を流れる基隆河沿いには緑豊かな公園とサイクリングロードがあるので、都会から離れて新鮮な空気に触れるのにも最適です。また、忠烈祠から橋を渡ったところにある台北市立美術館は、日本のメタボリズムを反映したアジア最高レベルの現代美術館であり、台北ビエンナーレの開催地にもなっています。
▲忠烈祠では1時間ごとに衛兵が交代する様子を見学することができます。
フアン家のアメリカ開拓記:圓山大飯店
台湾一有名なホテルといって過言ではない圓山大飯店は、オープンから約70年に渡り、映画や様々な分野のイベントを開催してきた場所です。伝統的な中華式で建てられた壮大かつきらびやかな建物は、市内の至る所からその姿を望むことができ、台北101ビルと並んで台北のランドマークと言えるでしょう。そんな同ホテルの大ホールや宴会場では数多くの高官やセレブ、映画関係者をもてなしてきました。
例えば、「ヤンヤン夏の想い出」の楊徳昌(ヤンダーチャン)監督は圓山大飯店で結婚披露宴を開いていますし、2016年にはアメリカの人気コメディ「フアン家のアメリカ開拓記」のシーズン3が同ホテルで撮影されました。
▲宮廷式建築で作られた圓山大飯店は台北を代表する建築物の一つです。
ここ最近では、作中に登場した部屋に実際に宿泊ができるプランが人気を博し、多くの地元観光客が訪れています。また、かつて蒋中正(ジャンジョンジャン)元総統が作った秘密の地下トンネルもこのホテルの特徴の一つ。
蒋元総統が国賓をもてなす場として建設した同ホテルは、有事の際に避難ができるようにと地下に脱出用のトンネルがる作られました。現在、このトンネルはガイドツアーで見学が可能です。
▲神秘的な色彩が溢れる脱出用トンネルは一般公開 されていて、見学が可能となっています。
また、附近には世界的に 有名な士林観光夜市があり、 台湾風フライドチキンや水煎 包、臭豆腐など定番B級グルメが盛り沢山。夕食を満喫した後は運動がてらホテル裏側の山道を登って台北の夜景 観賞をしてみてはいかがでし ょうか。
台北のロケ地探訪 おすすめの映画
文/Rik Glauert
編集/下山敬之
写真/Taiwan Scene、本地風光電影股份有限公司、氧気電影有限公司、Yenyi Lin
パンデミックで旅行が制限されている現在、各国の都市を舞台として作られた映画の鑑賞は旅行が好きな人には最適な娯楽と言えるでしょう。なぜなら、映画監督の視点を通じて知らなかった世界の発見や遠く離れた地に住む人たちの生活を知ることができるからです。
多くの人々で賑わう台湾の首都台北は、モダンとレトロが交錯する都市で、雲にも届く最先端の高層ビル以外に歴史が感じられるレトロな路地、貿易の要として長い歴史を持つ波止場なども豊富。また、台北の周囲には高い山々がそびえ立ち、新鮮な空気と緑が都市を包み込んでいます。
そうした背景から台北は国内外のテレビドラマや映画のロケ地として人気です。例えば、2014年に公開されたリュック・ベンソン監督の『ルーシー(Lucy)』という作品では、SF映画の世界観と台北の街並みが見事にマッチし、世界中にその存在を知らしめました。
スクリーン越しにも台北の活気やエネルギーは伝わりますし、実際に映像から受けたインスピレーションによってより深い台北の趣も知ることができるでしょう。
現在は、インターネットにつながる場所であれば、どこでもハリウッド作品やローカル作品が視聴できる便利な世の中ということで、今回は台北をロケ地にした映画と撮影場所を紹介していきたいと思います。
ひとつの太陽:化南新村
砂のようにもろい家族を題材にした映画「ひとつの太陽」は、セックス、犯罪、死によって引き裂かれた家族という台北の暗い一面を描いた作品です。2019年に公開された本作の監督は台湾人の鍾孟宏(ジョンモンホン)。怖い映画が苦手な人には不向きですが、優れた映画作品を決める金馬奨において複数の部門で表彰された作品なのでおすすめです。また、作中の感動的なシーンの大半は台北一古い歴史を持つ木柵化南新村の路地で撮影されています。
化南新村は1950年代に国立政治大学が職員寮建設のために作った場所で、ここ5年ほどは解体中止を求める運動が行われています。特に豊かな緑に囲まれた丈夫な赤レンガ造りの建物が象徴的で、鍾監督も歴史ある家屋の保存という目的からこの地で映画の撮影をしたと語っています。実際に散策をしてみると、歴史ある雰囲気と昔の素朴な日々が感じられることでしょう。
現在では映画産業の貢献もあって、レンガに囲まれたロマンチックな通りの散策やSNS映えする写真を撮るために多くの人が足を運んでいます。また、「化南万興願景団隊」という地元団体によってインスタ映えスポットや親切な地元の住民を紹介するマップも作られました。猫空山にも近く、台湾を象徴するヤマムスメなど多くの野生動物の生息地でもあるので、台北市立動物園や猫空ロープウェイと合わせて足を運んでみてください。
君の心に刻んだ名前:国民革命忠烈祠
柳広輝(リョウグアンホイ)監督がメガホンをとった映画「君の心に刻んだ名前」は、昨年9月の公開以来、多くの観客を魅了してきました。本作はカトリック系の高校に通う2人の少年の恋愛を描いた作品で、LGBTQをテーマとした映画では台湾で初めて1億台湾ドルの興行収入を突破しています。ストーリーは蒋経国(ジャンジングオ)総統没後の台北を舞台に家漢とバーディーら2人の学生が、自分たちの気持ちとセクシュアリティに向き合う様子に迫っていくというもの。
中でも恋人関係になった2人が台北旅行で国民革命忠烈祠を訪れ、蒋経国総統を追悼するシーンは物語において非常に重要なシーンとなっています。伝統中華建築の代表である忠烈祠は、国のために戦没した英霊を祀る場所で、作中ではこの地で家漢とバーディーがお互いの理解を深めていきます。
忠烈祠とその周辺地域は、作品の時代から30年以上経過した今でも訪れる価値のあるスポットと言えるでしょう。街の北部を流れる基隆河沿いには緑豊かな公園とサイクリングロードがあるので、都会から離れて新鮮な空気に触れるのにも最適です。また、忠烈祠から橋を渡ったところにある台北市立美術館は、日本のメタボリズムを反映したアジア最高レベルの現代美術館であり、台北ビエンナーレの開催地にもなっています。
フアン家のアメリカ開拓記:圓山大飯店
台湾一有名なホテルといって過言ではない圓山大飯店は、オープンから約70年に渡り、映画や様々な分野のイベントを開催してきた場所です。伝統的な中華式で建てられた壮大かつきらびやかな建物は、市内の至る所からその姿を望むことができ、台北101ビルと並んで台北のランドマークと言えるでしょう。そんな同ホテルの大ホールや宴会場では数多くの高官やセレブ、映画関係者をもてなしてきました。
例えば、「ヤンヤン夏の想い出」の楊徳昌(ヤンダーチャン)監督は圓山大飯店で結婚披露宴を開いていますし、2016年にはアメリカの人気コメディ「フアン家のアメリカ開拓記」のシーズン3が同ホテルで撮影されました。
ここ最近では、作中に登場した部屋に実際に宿泊ができるプランが人気を博し、多くの地元観光客が訪れています。また、かつて蒋中正(ジャンジョンジャン)元総統が作った秘密の地下トンネルもこのホテルの特徴の一つ。
蒋元総統が国賓をもてなす場として建設した同ホテルは、有事の際に避難ができるようにと地下に脱出用のトンネルがる作られました。現在、このトンネルはガイドツアーで見学が可能です。
また、附近には世界的に 有名な士林観光夜市があり、 台湾風フライドチキンや水煎 包、臭豆腐など定番B級グルメが盛り沢山。夕食を満喫した後は運動がてらホテル裏側の山道を登って台北の夜景 観賞をしてみてはいかがでし ょうか。
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