発表日:2021-07-02
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TAIPEI #24 (2021 夏季号)
台北で味わう思いのこもったチョコレート
文:林佳蕙
編集:下山敬之
写真:顔涵正、Rodrigo Flores
2月のバレンタインデーは人々が好意を伝えあう日ですが、台湾ではこの他にも旧暦の7月7日の七夕がバレンタインです。こうしたイベントには、甘く濃厚な味わいのチョコレートが最適。台北ではチョコレートスイーツが浸透するとともに、これまでにはない変化も起きています。今季の《TAIPEI》では、「Q sweet 精品甜點(ジンピンティエンディエン)」のパティシエである呉葵妮(ウークィーニー)さんと旅と食に関するライターの徐銘志(シューミンジュー)さんにインタビューを行い、世界レベルの良質な台湾チョコレートについてお話を伺いました。
▲呉葵妮さんと徐銘志さんは、台北のチョコレートのトレンドに対するそれぞれの意見を語ってくれました。
幸せを感じる甘い魅力
父親が仕事で世界各地を回るため、呉さんは小さい頃から各国のチョコレートを味わってきました。そのため、チョコレートに関して抜きんでた味利きの能力を持っています。呉さんはその後、ベルギーのチョコレートアカデミーを卒業。ありとあらゆるスイーツの中で、チョコレートはその独特な作用が人々を魅了していると考えています。「チョコレートを食べると、ドーパミンの分泌が促され、幸福感や愉快な持ちにさせてくれます。スイーツの世界では代用の効かない食材です。」と呉さんは言います。
一方、徐さんはチョコレートの魅力に気づくのが遅かったそうです。学生時代は多くの人と同じで、お店の棚に並ぶチョコレート製品を食べる程度でした。その後、ジャーナリストとなってからはライフスタイルの分野を掘り下げるようになり、そこでチョコレートの奥深さに気づきました。「私はカカオが栽培地の気候と環境によって味が変わり、チョコレートもワインと同じように、食べる前、食べている最中、食べた後の余韻に変化があることを知りました。これは安価に作られた商用のチョコレートにないもので、私のチョコレートに対する興味を沸かせてくれました」。
▲近年は、台湾にもローカルな風味のあるカカオ豆を使った商品が輸入されるようになり、チョコレート愛好家もより豊富で多様な味を体験できるようになりました。
ローカル食材が与える食の趣き
チョコレートは奥深く、創造力があることを知っている呉さんは、24歳の若さでスイーツチェーン店のブランドディレクターになりました。自らブランドを立ち上げるに当たり、世界的レベルのものにしたかったと言います。「上海の外灘というエリアでファッション業界が盛り上がっているのを見て、スイーツも同じだと感じました。パティシエが裏路地で小さなお店を構えるのは過去の話で、今は国際競争の時代です。一定の地位を得るには、盲目的に流行を追うのではなく、好きなものを選び、そこにいっぱい情熱を注ぐこと。私は自分の一番好きなチョコレートのお店では、競争に勝つためにケーキやお菓子、ドリングなど、すべて最高のものを提供しています」。
▲手作りのチョコレート製品には職人の魂が注がれています。
こうした信念を持つ呉さんは、2019年のインターナショナルチョコレートアワード(ICA)において、台湾初となる「ホワイトチョコレート‧バー部門」で賞を獲得。さらに2020年のICAアジア太平洋地域大会では、「ブラックチョコレートガナッシュ‧トリュフチョコレート部門」で金賞を勝ち取りました。
カカオは栽培条件の違いによって独特な風味を備えます。徐さんは多くの国が、この基準で独自のチョコレート商品を開発していることを知りました。また、台北のパティシエも次第にこだわりを持った製品開発を始めるようになっています。徐さんは特に、「法朋」というお店の6種類(バラ、醤油、龍眼、ひね生姜、ゴマ、パクチー)の風味を持つチョコレートや、「畬室」というお店の「黒ゴマ油塩花」などに強い感銘を受けたそうです。「こうした一般的な食材とチョコレートとのコラボは、台湾の消費者に関連の深いものであるという親近感を感じさせてくれます。」と徐さんは言います。
黒、白どちらも良い
徐さん曰く、チョコレートが好きな人は、だいたい黒チョコレートから始まります。最近では、カカオ豆の原産地の風味を重視している他、豆の選別から焙煎、仕上げまでを一貫して行う「ビーントゥーバー」という考えが広まっています。これまでは既存のチョコレート製品を加工していましたが、それを棄てて、豆の選別を含むすべての工程で最高水準のものになるよう努力をしています。例えば、徐さんが気に入っているベトナムの「MAROU」やイタリアの「AMEDEI」といったブランドチョコレートは、風土の特色を重視した製品です。台湾国内にもこのような商品が輸入され始め、消費者の舌にも大きな影響を与えています。
▲最近チョコレートの主原料であるカカオ豆の各原産地は、台湾のチョコレートの専門店から大きな注目を集めています。(写真/Rodrigo Flores)
黒チョコレートは甘さによって違いがあり、好みに合わせた選択ができます。「わたしは熟した、大人らしさのあるほろ苦いチョコレートが好きです。こうした苦味は甘い後味があるので、常に一定の甘さではなく、時間とともに味わいも変化します」。消費者の多くはカカオの含有量で黒チョコレートを選びますが、これは指標にはなりません。徐さんは、「それはカカオペーストとカカオ脂の合計を表すだけです。両者の比率こそが、メーカーのこだわりであり、食感にも影響を与えています。結局は風味で判断をするのが一番ですよ。」と教えてくれました。
どちらかといえば黒チョコレートのほうが主流ですが、呉さん曰く、近年ではホワイトチョコレートも世界的なトレンドになっているそうです。「黒チョコレートは濃厚なので、多くの食材の味を押さえこみます。ホワイトチョコレートはそこまで濃くなく、パティシエが自由な発想で使用できます。そのため、ここ数年はホワイトチョコレートで大会に出場する人も多くなっています」。呉さんが開発した「花椒入りチョコレート」や「ダブルベリーチョコレート」も、黒チョコレートが好きだったお客さんの多くを虜にしました。「現在の消費者は機械生産と手作りの違いをよく知っているので、パティシエもより創意創作をする機会が与えられ、幅広いアイディアを試すことができるようになっています」と呉さんは話します。
▲「Q sweet 精品甜點」では、様々なな食材を取り入れた革新的なチョコレート製品で、世界中の愛好家たちを魅了しています。
今はチョコレートに関する情報もはるかに多く、職人たちも切磋琢磨して新しい商品の開発に精を出しています。二人も消費者がよりチョコレートを味わい、食べ比べ、奥深い世界を探索してほしいと願っています。そうすることで、自分に本当に合う味が発見できるかもしれません。
台北で味わう思いのこもったチョコレート
文:林佳蕙
編集:下山敬之
写真:顔涵正、Rodrigo Flores
2月のバレンタインデーは人々が好意を伝えあう日ですが、台湾ではこの他にも旧暦の7月7日の七夕がバレンタインです。こうしたイベントには、甘く濃厚な味わいのチョコレートが最適。台北ではチョコレートスイーツが浸透するとともに、これまでにはない変化も起きています。今季の《TAIPEI》では、「Q sweet 精品甜點(ジンピンティエンディエン)」のパティシエである呉葵妮(ウークィーニー)さんと旅と食に関するライターの徐銘志(シューミンジュー)さんにインタビューを行い、世界レベルの良質な台湾チョコレートについてお話を伺いました。
幸せを感じる甘い魅力
父親が仕事で世界各地を回るため、呉さんは小さい頃から各国のチョコレートを味わってきました。そのため、チョコレートに関して抜きんでた味利きの能力を持っています。呉さんはその後、ベルギーのチョコレートアカデミーを卒業。ありとあらゆるスイーツの中で、チョコレートはその独特な作用が人々を魅了していると考えています。「チョコレートを食べると、ドーパミンの分泌が促され、幸福感や愉快な持ちにさせてくれます。スイーツの世界では代用の効かない食材です。」と呉さんは言います。
一方、徐さんはチョコレートの魅力に気づくのが遅かったそうです。学生時代は多くの人と同じで、お店の棚に並ぶチョコレート製品を食べる程度でした。その後、ジャーナリストとなってからはライフスタイルの分野を掘り下げるようになり、そこでチョコレートの奥深さに気づきました。「私はカカオが栽培地の気候と環境によって味が変わり、チョコレートもワインと同じように、食べる前、食べている最中、食べた後の余韻に変化があることを知りました。これは安価に作られた商用のチョコレートにないもので、私のチョコレートに対する興味を沸かせてくれました」。
ローカル食材が与える食の趣き
チョコレートは奥深く、創造力があることを知っている呉さんは、24歳の若さでスイーツチェーン店のブランドディレクターになりました。自らブランドを立ち上げるに当たり、世界的レベルのものにしたかったと言います。「上海の外灘というエリアでファッション業界が盛り上がっているのを見て、スイーツも同じだと感じました。パティシエが裏路地で小さなお店を構えるのは過去の話で、今は国際競争の時代です。一定の地位を得るには、盲目的に流行を追うのではなく、好きなものを選び、そこにいっぱい情熱を注ぐこと。私は自分の一番好きなチョコレートのお店では、競争に勝つためにケーキやお菓子、ドリングなど、すべて最高のものを提供しています」。
こうした信念を持つ呉さんは、2019年のインターナショナルチョコレートアワード(ICA)において、台湾初となる「ホワイトチョコレート‧バー部門」で賞を獲得。さらに2020年のICAアジア太平洋地域大会では、「ブラックチョコレートガナッシュ‧トリュフチョコレート部門」で金賞を勝ち取りました。
カカオは栽培条件の違いによって独特な風味を備えます。徐さんは多くの国が、この基準で独自のチョコレート商品を開発していることを知りました。また、台北のパティシエも次第にこだわりを持った製品開発を始めるようになっています。徐さんは特に、「法朋」というお店の6種類(バラ、醤油、龍眼、ひね生姜、ゴマ、パクチー)の風味を持つチョコレートや、「畬室」というお店の「黒ゴマ油塩花」などに強い感銘を受けたそうです。「こうした一般的な食材とチョコレートとのコラボは、台湾の消費者に関連の深いものであるという親近感を感じさせてくれます。」と徐さんは言います。
黒、白どちらも良い
徐さん曰く、チョコレートが好きな人は、だいたい黒チョコレートから始まります。最近では、カカオ豆の原産地の風味を重視している他、豆の選別から焙煎、仕上げまでを一貫して行う「ビーントゥーバー」という考えが広まっています。これまでは既存のチョコレート製品を加工していましたが、それを棄てて、豆の選別を含むすべての工程で最高水準のものになるよう努力をしています。例えば、徐さんが気に入っているベトナムの「MAROU」やイタリアの「AMEDEI」といったブランドチョコレートは、風土の特色を重視した製品です。台湾国内にもこのような商品が輸入され始め、消費者の舌にも大きな影響を与えています。
黒チョコレートは甘さによって違いがあり、好みに合わせた選択ができます。「わたしは熟した、大人らしさのあるほろ苦いチョコレートが好きです。こうした苦味は甘い後味があるので、常に一定の甘さではなく、時間とともに味わいも変化します」。消費者の多くはカカオの含有量で黒チョコレートを選びますが、これは指標にはなりません。徐さんは、「それはカカオペーストとカカオ脂の合計を表すだけです。両者の比率こそが、メーカーのこだわりであり、食感にも影響を与えています。結局は風味で判断をするのが一番ですよ。」と教えてくれました。
どちらかといえば黒チョコレートのほうが主流ですが、呉さん曰く、近年ではホワイトチョコレートも世界的なトレンドになっているそうです。「黒チョコレートは濃厚なので、多くの食材の味を押さえこみます。ホワイトチョコレートはそこまで濃くなく、パティシエが自由な発想で使用できます。そのため、ここ数年はホワイトチョコレートで大会に出場する人も多くなっています」。呉さんが開発した「花椒入りチョコレート」や「ダブルベリーチョコレート」も、黒チョコレートが好きだったお客さんの多くを虜にしました。「現在の消費者は機械生産と手作りの違いをよく知っているので、パティシエもより創意創作をする機会が与えられ、幅広いアイディアを試すことができるようになっています」と呉さんは話します。
今はチョコレートに関する情報もはるかに多く、職人たちも切磋琢磨して新しい商品の開発に精を出しています。二人も消費者がよりチョコレートを味わい、食べ比べ、奥深い世界を探索してほしいと願っています。そうすることで、自分に本当に合う味が発見できるかもしれません。
| 呉葵妮 ベルギーのチョコレートアカデミーを卒業。カカオの風味に対する愛好と信念から、「Q sweet 精品甜點」を開業。2019年には、インターナショナルチョコレートアワード(ICA)の「ホワイトチョコレート‧バー部門」で賞を獲得。翌2020年にはICAアジア太平洋地域14カ国で、最も受賞数の多いパティシエとなる。 | |
| 徐銘志 フリーライター。《GQ》、『商業週刊』、『経済日報』などの媒体で執筆を担当。近年はライフスタイル分野に焦点を当て、新聞雑誌などにチョコレート関係の投稿している。 |
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