発表日:2021-09-13
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TAIPEI #25 (2021 秋季号)
「浪浪別哭」保護ペットカフェ
温かい家庭を求めて
文:Catherine Shih
写真:Samil Kuo、浪浪別哭
編集:下山敬之
一風変わったカフェ
台北駅からほど近い林森北路の静かな小道の中に「浪浪)別哭(ランランビエクー」という保護ペットカフェがあります。ここは一見すると普通のカフェのようですが、メニューの中には捨て犬や捨て猫たちの里親を探すという珍しい項目があります。
▲浪浪別哭保護ペットカフェは、保護された犬や猫が里親を待つ中継施設となっています。
2015年に台北で設立されたこのカフェは野生化したペットの一時的な保護施設も兼ねている場所です。現在では台北のみにとどまらず台中と台南にも支店をオープンするなど広がりを見せています。ここは雰囲気のいいカフェとしてコーヒーを楽しめる空間を提供をしつつ、動物たちとふれあい、性格や相性を確かめながら里親になれるかを判断できる場所です。
「私たちのゴールは、便利で落ち着いた空間を作りつつ、里親になりたい人と動物が直接触れあえる機会を提供することです」と語るのは、浪浪別哭台北支店のマネージャーである洪士珉(ホン・シーミン)氏。
▲浪浪別哭で里親を希望する人は、まずカフェへ足を運び動物と直接触れ合う必要があります。
「多くの動物保護施設はスペースと許容量の関係で街の中心部から離れた場所にあります。せっかく里親に興味を持ったとしても交通が不便であることから、諦めてしまう人も少なくありません。しかし、ここなら気軽にカフェとして立ち寄ってもらい、直接動物と触れ合うことができます。多少飲食代はかかりますが、それでも里親を希望する方が多く、マッチングの成功率も非常に高いです」と洪氏は語っています。
里親となる以外にも、店内で買い物をすることが運営の助けになるのだそうです。「収益の3%は野生化した動物の保護、去勢、ワクチン接種、元の場所へ戻すことを一貫して行う『プロジェクト』に役立てられています」。これは野生化する動物の数を制限する効果的かつ人道的な方法で、世界的な動物保護組織によって採用されているプロジェクトです。
「どれだけ里親を見つけられたとしても野生化した動物の数はとても多いので、この問題を根本的に解決するためには去勢の利点を理解してもらうことが大切です。現在台北支店では、成犬を1匹、幼犬を3匹、そして猫を10匹保護しています。
▲浪浪別哭保護ペットカフェは、保護された犬や猫が里親を待つ中継施設となっています。(写真/浪浪別哭)
1匹の里親が見つかれば、入れ替わりで同じ種類の動物を新たに1匹受け入れるようにしています。これも私たちの特徴の一つですが、大半の一時保護施設は猫専用です。しかし、私たちは犬と猫の両方に対応しています」と洪氏は説明します。
野生化した動物の受け入れに関する制限については、「犬は年齢が若くてもサイズが大きい犬種もあるので、私たちは年齢ではなくサイズで分けています。猫に関してはサイズや年齢による制限は設けていません」と語っています。
浪浪別哭は交通の便がいいという利点の他に、動物たちに教育と訓練を施すことで里親を見つけやすくしています。「猫はもともと猫用トイレの使い方を本能で分かっているので訓練がしやすいです。犬の場合は少し難易度が高くなります」と洪氏は言います。
訓練の要件には、名前を呼んだ際に反応するかという基本的な内容も含まれていて、もう少し訓練が進むと、あまり吠えない、散歩に行く、他の動物や人間を攻撃しないといった項目が増えるそうです。「成犬の場合は、育った環境などによっては訓練が難しい場合もあります。野生化してからかなり時間が経過している、飼い主に虐待されていた経験があるといった事は残念ながら良くあります。ですから、新しい家族に早く慣れるためにも、訓練をすることはとても大切なのです」。
▲浪浪別哭では野生化した動物たちが人に触れる機会を与えるだけでなく、人間社会に順応できるよう訓練も行っています。
一時保護施設の課題と悩み
動物保護施設について洪氏は、「多くの動物保護施設が郊外にある理由が、動物たちの騒音問題にあることはあまり知られていません。これは街中で一時保護施設を運営する私たちにとって一番大きな問題と言えます。鳴き声がうるさいということで近隣の方から苦情を頂くこともありますし、警察を呼ばれたこともあります。なので、時々犬たちを自分の家に連れて帰ることもあります。幸い、今いる動物たちはかなり落ちついているので助かっています。とはいえカフェも運営しているので、動物たちを世話しつつ、コーヒーを楽しめる空間を提供することは簡単ではありません」と語っています。
▲市内の中心部にある浪浪別哭では近隣への影響も考慮し、動物たちが騒音を出さないよう管理しています。
里親に必要な条件
台北市動物保護所によれば、里親を希望する人は、まずその動物に会い、申込用紙を提出する必要があります。その後、獣医が健康状態の確認やワクチン摂取を行い、里親へ引き渡されます。浪浪別哭でもその過程は変わりません。ただ、洪氏は里親が25歳以上で安定した収入があることなどを条件として加えています。「里親を希望する人は、まず直接動物と会って、お互いの相性を確認する必要があります。犬や猫たちの写真をオンライン上で見るだけでは不十分です」。
▲浪浪別哭で里親を希望する人は、まずカフェへ足を運び動物と直接触れ合う必要があります。
「相性が合えば、私たちはその候補者の方のご自宅を訪問し、ご家族や同居人すべてにお会いして、動物の飼育に関する了承をしているのか確認をさせてもらっています」と洪氏は言います。実際、家族が動物の引き取りのことを知らず、最終的に反対されたという例がいくつかあったそうです。「気づいたら動物は私たちのもとに返されていました。こういったケースは出来る限り避けたいです」。
「里親の候補者を審査するとき、私たちは彼らの価値観やペットの飼育に対する考えについても確認します。例えば、犬は鎖で繋いでおくべきとかバルコニーで飼育するという考えの場合は、申し込みを却下させてもらっています。こうした考えは飼育する上では問題ありませんが、ただ環境を提供するというだけでは不十分なのです」と洪氏は続けます。
浪浪別哭では現在までに、およそ1000匹の里親を見つけてきました。「私たちは里親に対するサポートを惜しみません。個別に情報共有をしているので、問題が発生した際もすぐに連絡をもらえます。このように里親を見つけつつ、出来る限りお手伝いするのが私たちの役目です」。
▲店内に貼られている写真はすべて、里親を見つけた動物たちです。
浪浪別哭で飼育されている動物たちのほとんどは、提携しているアニマルレスキュー隊によって保護されたものです。彼らは、台湾の犬や猫を引き取りたいと希望する海外在住の里親に向けた国際手続きのサポートもしています。しかし、こうした手続きは非常に複雑であることから浪浪別哭では、今のところ国内での里親探しに焦点を当てています。
「里親になる以外にも、地域の保護所でボランティアをしてもらえると非常に助かります。殺処分禁止政策により、政府は野生化した動物の安楽死を禁止しています。これは動物たちのためになると思われがちですが、実際には保護所とそこで働く人々に大きな負荷を課すことになっているのです」と洪氏は教えてくれました。
台北市動物保護所ではボランティアを募集しつつ、犬や猫の世話を希望する人たちに向けた訓練コースを提供しています。家に迎えいれることはできなくても、このような方法で動物たちを助けることが可能です。
ペットに優しい街を目指して
「台北には多くの動物たちにとって過ごしやすい環境であると言えます。例えば松山区の川沿いにある迎風狗運動公園は、動物たちが駆け回るのに十分な広さがあります」と洪氏は言います。この公園は飼い主が座ってゆっくりできるスペースもありますし、ペットも遊具を使って自由に遊べます。ペットと飼い主、両方がリラックスしつつ楽しめる場所なのです。他にも管理が行き届いていることもこの公園が優れているポイントと言えます。犬たちが物を壊してしまうことはよくあります。その上で、すべてをキレイな状態に保つことはとても重要です。
▲台北市内にはペットが遊べる公園が多いので、屋外で一緒に楽しい時間を過ごすことができます。(写真/浪浪別哭)
さらに浪浪別哭では台北の学校機関とも協力していて、ペットは買わずに里親になるよう推奨しています。また、血統による違いはなく、すべての動物が平等であるという考え方も洪氏たちが強く主張するポイントです。特定の血統にこだわってペットを購入するという人が多いためです。浪浪別哭で保護している動物の多くはミックス種ですが、実はこちらの方が丈夫で飼いやすいという利点があります。
▲浪浪別哭で保護している犬や猫はすべてミックス種で、外見は様々ですが、いずれもかわいい見た目をしています。
「私たちは常にペットを買う前に、まず里親になることをお勧めしています。誰であっても保護された動物たちに温かい家庭を提供する手助けができると思っています」と洪氏は述べています。
浪浪別哭(台北店)
住所 中正区林森北路9巷13号営業時間12:00~21:00
サイト www.langlangdontcry.com.tw
「浪浪別哭」保護ペットカフェ
温かい家庭を求めて
文:Catherine Shih
写真:Samil Kuo、浪浪別哭
編集:下山敬之
一風変わったカフェ
台北駅からほど近い林森北路の静かな小道の中に「浪浪)別哭(ランランビエクー」という保護ペットカフェがあります。ここは一見すると普通のカフェのようですが、メニューの中には捨て犬や捨て猫たちの里親を探すという珍しい項目があります。
2015年に台北で設立されたこのカフェは野生化したペットの一時的な保護施設も兼ねている場所です。現在では台北のみにとどまらず台中と台南にも支店をオープンするなど広がりを見せています。ここは雰囲気のいいカフェとしてコーヒーを楽しめる空間を提供をしつつ、動物たちとふれあい、性格や相性を確かめながら里親になれるかを判断できる場所です。
「私たちのゴールは、便利で落ち着いた空間を作りつつ、里親になりたい人と動物が直接触れあえる機会を提供することです」と語るのは、浪浪別哭台北支店のマネージャーである洪士珉(ホン・シーミン)氏。
「多くの動物保護施設はスペースと許容量の関係で街の中心部から離れた場所にあります。せっかく里親に興味を持ったとしても交通が不便であることから、諦めてしまう人も少なくありません。しかし、ここなら気軽にカフェとして立ち寄ってもらい、直接動物と触れ合うことができます。多少飲食代はかかりますが、それでも里親を希望する方が多く、マッチングの成功率も非常に高いです」と洪氏は語っています。
里親となる以外にも、店内で買い物をすることが運営の助けになるのだそうです。「収益の3%は野生化した動物の保護、去勢、ワクチン接種、元の場所へ戻すことを一貫して行う『プロジェクト』に役立てられています」。これは野生化する動物の数を制限する効果的かつ人道的な方法で、世界的な動物保護組織によって採用されているプロジェクトです。
「どれだけ里親を見つけられたとしても野生化した動物の数はとても多いので、この問題を根本的に解決するためには去勢の利点を理解してもらうことが大切です。現在台北支店では、成犬を1匹、幼犬を3匹、そして猫を10匹保護しています。
1匹の里親が見つかれば、入れ替わりで同じ種類の動物を新たに1匹受け入れるようにしています。これも私たちの特徴の一つですが、大半の一時保護施設は猫専用です。しかし、私たちは犬と猫の両方に対応しています」と洪氏は説明します。
野生化した動物の受け入れに関する制限については、「犬は年齢が若くてもサイズが大きい犬種もあるので、私たちは年齢ではなくサイズで分けています。猫に関してはサイズや年齢による制限は設けていません」と語っています。
浪浪別哭は交通の便がいいという利点の他に、動物たちに教育と訓練を施すことで里親を見つけやすくしています。「猫はもともと猫用トイレの使い方を本能で分かっているので訓練がしやすいです。犬の場合は少し難易度が高くなります」と洪氏は言います。
訓練の要件には、名前を呼んだ際に反応するかという基本的な内容も含まれていて、もう少し訓練が進むと、あまり吠えない、散歩に行く、他の動物や人間を攻撃しないといった項目が増えるそうです。「成犬の場合は、育った環境などによっては訓練が難しい場合もあります。野生化してからかなり時間が経過している、飼い主に虐待されていた経験があるといった事は残念ながら良くあります。ですから、新しい家族に早く慣れるためにも、訓練をすることはとても大切なのです」。
一時保護施設の課題と悩み
動物保護施設について洪氏は、「多くの動物保護施設が郊外にある理由が、動物たちの騒音問題にあることはあまり知られていません。これは街中で一時保護施設を運営する私たちにとって一番大きな問題と言えます。鳴き声がうるさいということで近隣の方から苦情を頂くこともありますし、警察を呼ばれたこともあります。なので、時々犬たちを自分の家に連れて帰ることもあります。幸い、今いる動物たちはかなり落ちついているので助かっています。とはいえカフェも運営しているので、動物たちを世話しつつ、コーヒーを楽しめる空間を提供することは簡単ではありません」と語っています。
里親に必要な条件
台北市動物保護所によれば、里親を希望する人は、まずその動物に会い、申込用紙を提出する必要があります。その後、獣医が健康状態の確認やワクチン摂取を行い、里親へ引き渡されます。浪浪別哭でもその過程は変わりません。ただ、洪氏は里親が25歳以上で安定した収入があることなどを条件として加えています。「里親を希望する人は、まず直接動物と会って、お互いの相性を確認する必要があります。犬や猫たちの写真をオンライン上で見るだけでは不十分です」。
「相性が合えば、私たちはその候補者の方のご自宅を訪問し、ご家族や同居人すべてにお会いして、動物の飼育に関する了承をしているのか確認をさせてもらっています」と洪氏は言います。実際、家族が動物の引き取りのことを知らず、最終的に反対されたという例がいくつかあったそうです。「気づいたら動物は私たちのもとに返されていました。こういったケースは出来る限り避けたいです」。
「里親の候補者を審査するとき、私たちは彼らの価値観やペットの飼育に対する考えについても確認します。例えば、犬は鎖で繋いでおくべきとかバルコニーで飼育するという考えの場合は、申し込みを却下させてもらっています。こうした考えは飼育する上では問題ありませんが、ただ環境を提供するというだけでは不十分なのです」と洪氏は続けます。
浪浪別哭では現在までに、およそ1000匹の里親を見つけてきました。「私たちは里親に対するサポートを惜しみません。個別に情報共有をしているので、問題が発生した際もすぐに連絡をもらえます。このように里親を見つけつつ、出来る限りお手伝いするのが私たちの役目です」。
浪浪別哭で飼育されている動物たちのほとんどは、提携しているアニマルレスキュー隊によって保護されたものです。彼らは、台湾の犬や猫を引き取りたいと希望する海外在住の里親に向けた国際手続きのサポートもしています。しかし、こうした手続きは非常に複雑であることから浪浪別哭では、今のところ国内での里親探しに焦点を当てています。
「里親になる以外にも、地域の保護所でボランティアをしてもらえると非常に助かります。殺処分禁止政策により、政府は野生化した動物の安楽死を禁止しています。これは動物たちのためになると思われがちですが、実際には保護所とそこで働く人々に大きな負荷を課すことになっているのです」と洪氏は教えてくれました。
台北市動物保護所ではボランティアを募集しつつ、犬や猫の世話を希望する人たちに向けた訓練コースを提供しています。家に迎えいれることはできなくても、このような方法で動物たちを助けることが可能です。
ペットに優しい街を目指して
「台北には多くの動物たちにとって過ごしやすい環境であると言えます。例えば松山区の川沿いにある迎風狗運動公園は、動物たちが駆け回るのに十分な広さがあります」と洪氏は言います。この公園は飼い主が座ってゆっくりできるスペースもありますし、ペットも遊具を使って自由に遊べます。ペットと飼い主、両方がリラックスしつつ楽しめる場所なのです。他にも管理が行き届いていることもこの公園が優れているポイントと言えます。犬たちが物を壊してしまうことはよくあります。その上で、すべてをキレイな状態に保つことはとても重要です。
さらに浪浪別哭では台北の学校機関とも協力していて、ペットは買わずに里親になるよう推奨しています。また、血統による違いはなく、すべての動物が平等であるという考え方も洪氏たちが強く主張するポイントです。特定の血統にこだわってペットを購入するという人が多いためです。浪浪別哭で保護している動物の多くはミックス種ですが、実はこちらの方が丈夫で飼いやすいという利点があります。
「私たちは常にペットを買う前に、まず里親になることをお勧めしています。誰であっても保護された動物たちに温かい家庭を提供する手助けができると思っています」と洪氏は述べています。
浪浪別哭(台北店)
住所 中正区林森北路9巷13号営業時間12:00~21:00
サイト www.langlangdontcry.com.tw
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