発表日:2022-09-13
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TAIPEI #29 (2022 秋季号)
台北バードウォッチングガイド
鳥とウォッチャーにとっての楽園
文:AYCC 編集:下山敬之 写真:邱盛材、Yengping
▲台北公園の池の周りでは、ゴイサギが巣作りや捕食をする様子がよく見られます。( 写真/Yengping )
アウトドア派の人たちに人気のアクティビティといえば、ハイキングやサイクリング、水泳、サーフィンなどが一般的です。しかし、台北ではそれだけでなく、バードウォッチングという選択肢もあります。
「バードウォッチングは、都会でも大自然でも楽しむことができる極めて充実したアウトドア活動です」と語るのは、台北を拠点に活動する生涯現役のバードカメラマン、邱盛材(チョウ・シェンツァイ)氏です。「バードウォッチングは山や公園、さらには家の窓からでも楽しめます」と魅力を語ります。
邱氏によると、台北は生態系にとって良い環境が整っており、鳥たちが住みやすい自然な生息地が多いそうです。バードウォッチングに最適な時期は秋であり、特に渡り鳥が採餌に適した場所を求めて南下する9月以降はベストなタイミングになります。台湾は鳥たちが南下する際の補給地でもあることから、関渡自然公園や陽明山といったスポットにはさまざまな鳥が立ち寄り、巣を作ります。台北は鳥たちだけでなくバードウォッチャーにとっても楽園と言えるのです。
今回は邱氏に協力していただき、台北でバードウォッチングを始める際に必要な情報をまとめました。邱氏によればバードウォッチングの心構えは「予期せぬことを期待し、受け入れられないことを受け入れること」だそうです。天候や野鳥は予測不可能なものであり、見たい鳥が100%鑑賞できる保証はありませんが、その一方で大変レアな鳥に出会える可能性もあります。また、万一出会えなかったとしても、自然の中でのんびり過ごすことができるというメリットがあると邱氏は言います。
▲大安森林公園には多くのバードウォッチャーが集まり、珍しい鳥を探したり、写真撮影をしています。 ( 写真/Yengping )
最も重要なのは、「Leave No Trace(痕跡を残さない)」という原則に従い、写真撮影以外はしないこと、そして足跡を残さないことです。また、鳥を刺激しないよう、環境になじむアースカラーのシャツを着用することも邱氏は勧めています。友人と一緒にバードウォッチングをするときは、森の生物たちに配慮し、大きな声を出さず、ゆっくりと行動しましょう。
前述したように、これからの時期は渡り鳥に注目をすべきです。加えて、台湾の固有種も見逃すことができないので、これらの注目リストを邱氏に教えていただきました。
クロツラヘラサギは野生ではほぼ絶滅していることから、台湾におけるバードウォッチングのシンボル的な存在です。漢字では「黒面箆鷺」と表記し、その名前の通り、額からスプーン状の長いくちばしまでが黒い皮膚で覆われています。水鳥と同じように湿地や養魚池などを好み、台北では関渡自然公園で観賞することができます。
冬の渡り鳥であるアカハラダカは、朝鮮半島から台湾、そしてフィリピンへと南下します。また、台湾では黄色や茶褐色の鋭い目をしたハイイロチュウヒが北投・陽明山地区に一日滞在した後、南部の墾丁へと移動する傾向があります。特に9 月から10 月頃がその姿を見られるベストシーズンです。
シベリア北部の草原生まれのマガンは、秋の台北では非常にレアな存在です。特徴はピンク色のくちばしと、口と目の間にある白い模様で、2021 年には万華の台北市野雁保護区で最も多くのマガンが観測されました。
アカモズは、小型ながら獰猛な鳥で、ネズミや昆虫など小さな生き物を狙って素早く狩りをすることで知られています。アメコミのヒーロー「デアデビル」のように茶色と赤の体に、目の周りの覆う黒い模様が特徴です。アカモズは木の先端に止まるのが好きなので、秋になると河川敷の公園で簡単に見つけることができます。
この鳥は、中国語では「仏法僧」と表記しますが、仏教そのものとは全く関係はありません。鳴き声が「ブッ、ポー、ソー」と聞こえることから、その名前がつけられました。黒から青、エメラルドへと変化するグラデーションの美しい体躯が特徴で、北投の山々のような開けた森林地帯を好んで巣を作ります。
コウライキジのオスは、首輪のように見える首の白い模様と、赤い顔が特徴です。平地に生息し、「草原の真珠」とも呼ばれています。 台北では、運が良ければ関渡自然公園で観察することができます。
台湾の象徴的な動物であるミカドキジは、体長が約75~90cmもあり、台湾の固有種の中では最大の鳥です。オスは全身が濃い紫紺の羽毛に覆われており、長い尾には白い横縞が入っています。台湾中部の大雪山や南部の阿里山などの高地を好みますが、台北にある陽明山で観察できます。出会えなかった場合は、1,000 新台湾ドルのお札をよく見ると、ツガイの絵が描かれています。
ミカドキジに似たサンケイも体長が約60~80cm と大きく、青い体躯をしていますが、頭頂部や背中に見られる白い模様、顔や足が赤いといった点がミカドキジとの違いです。近年、生態系の修復に成功し、香山などの郊外の森林や南港の山々でサンケイが観測されるようになりました。
▲関渡自然公園の観賞スポットは鳥たちをみつけやすい空間となっています。(写真/Yengping)
淡水河と基隆河の合流点に位置する関渡自然公園は、渡り鳥や多くの生物が生息する台北最大の公園です。草原や湿地が豊富で、記録によればクロツラヘラサギ、カンムリワシなど300 種以上の鳥類が生息しています。週末には定期的にエコツアーやバードウォッチングツアーが開催されているほか、毎年開かれる台北国際バードウォッチングフェアの会場にもなっています。2022 年の本イベントは11 月5 日から11 月6 日に渡って開催され、クリエイティブマーケット、バードウォッチング ワークショップなどのイベントが行われる予定です。
▶️ 関渡自然公園
大漢渓と新店渓の合流地点に位置している華江雁鴨自然公園は、28 ヘクタールの広さを持つぬかるんだ湿地帯となっています。水鳥の餌が豊富であることから、コガモ、マガモ、ダイサギ、カルガモ、アオサギなどがよく観察されます。
都会の中心にある大安森林公園は「都市の肺」と呼ばれていて、台北では非常に身近なバードウォッチングスポットの一つです。午後になると、迷彩柄のシャツを着たバードウォッチャーがゴシキドリの鳴き声を静かに待つ姿を目にします。公園の反対側では、大胆なハッカチョウやハトが、ピクニックを楽しんでいる人々を眺めています。
台北植物園には、クロサギ、ズグロミゾゴイ、シロガシラなど、多くの鳥類が生息しています。敷地内には蓮池があり、コサギやバンなどの水鳥もよく見られます。
陽明山国家公園はバードウォッチングだけでなく、様々なアトラクションが楽しめる人気のスポットです。大屯山と面天山は、広葉樹林、ススキ、竹などの植生が混在しており、多様な生物が生息しています。鳥類の中ではコジュケイ、メジロがここの常連で、運が良ければヤマムスメやジャワコノハズクに出会えるかもしれません。
台北バードウォッチングガイド
鳥とウォッチャーにとっての楽園
文:AYCC 編集:下山敬之 写真:邱盛材、Yengping
▲台北公園の池の周りでは、ゴイサギが巣作りや捕食をする様子がよく見られます。( 写真/Yengping )
アウトドア派の人たちに人気のアクティビティといえば、ハイキングやサイクリング、水泳、サーフィンなどが一般的です。しかし、台北ではそれだけでなく、バードウォッチングという選択肢もあります。
「バードウォッチングは、都会でも大自然でも楽しむことができる極めて充実したアウトドア活動です」と語るのは、台北を拠点に活動する生涯現役のバードカメラマン、邱盛材(チョウ・シェンツァイ)氏です。「バードウォッチングは山や公園、さらには家の窓からでも楽しめます」と魅力を語ります。
邱氏によると、台北は生態系にとって良い環境が整っており、鳥たちが住みやすい自然な生息地が多いそうです。バードウォッチングに最適な時期は秋であり、特に渡り鳥が採餌に適した場所を求めて南下する9月以降はベストなタイミングになります。台湾は鳥たちが南下する際の補給地でもあることから、関渡自然公園や陽明山といったスポットにはさまざまな鳥が立ち寄り、巣を作ります。台北は鳥たちだけでなくバードウォッチャーにとっても楽園と言えるのです。
今回は邱氏に協力していただき、台北でバードウォッチングを始める際に必要な情報をまとめました。邱氏によればバードウォッチングの心構えは「予期せぬことを期待し、受け入れられないことを受け入れること」だそうです。天候や野鳥は予測不可能なものであり、見たい鳥が100%鑑賞できる保証はありませんが、その一方で大変レアな鳥に出会える可能性もあります。また、万一出会えなかったとしても、自然の中でのんびり過ごすことができるというメリットがあると邱氏は言います。
▲大安森林公園には多くのバードウォッチャーが集まり、珍しい鳥を探したり、写真撮影をしています。 ( 写真/Yengping )
最も重要なのは、「Leave No Trace(痕跡を残さない)」という原則に従い、写真撮影以外はしないこと、そして足跡を残さないことです。また、鳥を刺激しないよう、環境になじむアースカラーのシャツを着用することも邱氏は勧めています。友人と一緒にバードウォッチングをするときは、森の生物たちに配慮し、大きな声を出さず、ゆっくりと行動しましょう。
前述したように、これからの時期は渡り鳥に注目をすべきです。加えて、台湾の固有種も見逃すことができないので、これらの注目リストを邱氏に教えていただきました。
クロツラヘラサギは野生ではほぼ絶滅していることから、台湾におけるバードウォッチングのシンボル的な存在です。漢字では「黒面箆鷺」と表記し、その名前の通り、額からスプーン状の長いくちばしまでが黒い皮膚で覆われています。水鳥と同じように湿地や養魚池などを好み、台北では関渡自然公園で観賞することができます。
冬の渡り鳥であるアカハラダカは、朝鮮半島から台湾、そしてフィリピンへと南下します。また、台湾では黄色や茶褐色の鋭い目をしたハイイロチュウヒが北投・陽明山地区に一日滞在した後、南部の墾丁へと移動する傾向があります。特に9 月から10 月頃がその姿を見られるベストシーズンです。
シベリア北部の草原生まれのマガンは、秋の台北では非常にレアな存在です。特徴はピンク色のくちばしと、口と目の間にある白い模様で、2021 年には万華の台北市野雁保護区で最も多くのマガンが観測されました。
アカモズは、小型ながら獰猛な鳥で、ネズミや昆虫など小さな生き物を狙って素早く狩りをすることで知られています。アメコミのヒーロー「デアデビル」のように茶色と赤の体に、目の周りの覆う黒い模様が特徴です。アカモズは木の先端に止まるのが好きなので、秋になると河川敷の公園で簡単に見つけることができます。
この鳥は、中国語では「仏法僧」と表記しますが、仏教そのものとは全く関係はありません。鳴き声が「ブッ、ポー、ソー」と聞こえることから、その名前がつけられました。黒から青、エメラルドへと変化するグラデーションの美しい体躯が特徴で、北投の山々のような開けた森林地帯を好んで巣を作ります。
コウライキジのオスは、首輪のように見える首の白い模様と、赤い顔が特徴です。平地に生息し、「草原の真珠」とも呼ばれています。 台北では、運が良ければ関渡自然公園で観察することができます。
台湾の象徴的な動物であるミカドキジは、体長が約75~90cmもあり、台湾の固有種の中では最大の鳥です。オスは全身が濃い紫紺の羽毛に覆われており、長い尾には白い横縞が入っています。台湾中部の大雪山や南部の阿里山などの高地を好みますが、台北にある陽明山で観察できます。出会えなかった場合は、1,000 新台湾ドルのお札をよく見ると、ツガイの絵が描かれています。
ミカドキジに似たサンケイも体長が約60~80cm と大きく、青い体躯をしていますが、頭頂部や背中に見られる白い模様、顔や足が赤いといった点がミカドキジとの違いです。近年、生態系の修復に成功し、香山などの郊外の森林や南港の山々でサンケイが観測されるようになりました。
▲関渡自然公園の観賞スポットは鳥たちをみつけやすい空間となっています。(写真/Yengping)
淡水河と基隆河の合流点に位置する関渡自然公園は、渡り鳥や多くの生物が生息する台北最大の公園です。草原や湿地が豊富で、記録によればクロツラヘラサギ、カンムリワシなど300 種以上の鳥類が生息しています。週末には定期的にエコツアーやバードウォッチングツアーが開催されているほか、毎年開かれる台北国際バードウォッチングフェアの会場にもなっています。2022 年の本イベントは11 月5 日から11 月6 日に渡って開催され、クリエイティブマーケット、バードウォッチング ワークショップなどのイベントが行われる予定です。
▶️ 関渡自然公園
大漢渓と新店渓の合流地点に位置している華江雁鴨自然公園は、28 ヘクタールの広さを持つぬかるんだ湿地帯となっています。水鳥の餌が豊富であることから、コガモ、マガモ、ダイサギ、カルガモ、アオサギなどがよく観察されます。
都会の中心にある大安森林公園は「都市の肺」と呼ばれていて、台北では非常に身近なバードウォッチングスポットの一つです。午後になると、迷彩柄のシャツを着たバードウォッチャーがゴシキドリの鳴き声を静かに待つ姿を目にします。公園の反対側では、大胆なハッカチョウやハトが、ピクニックを楽しんでいる人々を眺めています。
台北植物園には、クロサギ、ズグロミゾゴイ、シロガシラなど、多くの鳥類が生息しています。敷地内には蓮池があり、コサギやバンなどの水鳥もよく見られます。
陽明山国家公園はバードウォッチングだけでなく、様々なアトラクションが楽しめる人気のスポットです。大屯山と面天山は、広葉樹林、ススキ、竹などの植生が混在しており、多様な生物が生息しています。鳥類の中ではコジュケイ、メジロがここの常連で、運が良ければヤマムスメやジャワコノハズクに出会えるかもしれません。
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