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生地に込められたストーリー (TAIPEI Quarterly 2022 冬季号 Vol.30)

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発表日:2022-12-29

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TAIPEI #30 (2022 冬季号)


生地に込められたストーリー
文︰Tina Ting、 Kerstin Hsu 編集︰下山敬之  写真︰Wei Wen Chen、 APUJAN

ここ10年間で、台湾のクリエイティブ産業は大きな賑わいを見せています。2018年に開催された「2019春夏台北ファッションウィーク」では、台湾アパレル産業の振興、若い才能の発掘に加え、ファッションデザイナーの匠の技が大きな注目を集めました。詹朴(APU JAN)氏は 業界内で注目されているデザイナーの一人です。

22-10-21Taipei mag 80-2 (Copy)▲台湾ファッション業界でよく知られている詹氏は、雑誌の『Tatler』がアジアで優れるファッションデザイナーの一人と称賛。( 写真/Wei Wen Chen )

彼は26歳のときに、2013年のロンドンファッションウィークでデビュー。これまで台北とロンドンで記憶に残る作品を次々と披露してきた彼は、間違いなくアクティブで多才なファッションデザイナーと言えるでしょう。詹氏は、同名のファッションレーベル「APUJAN」に加えて、台湾の大手航空会社「エバー航空」の機内用パジャマ、台湾を拠点にする舞踊団「雲門舞集」の衣装、台湾のインディーズ系ロックバンド「ソーダグリーン」のステージ衣装、台湾の有名ベーカリーショップ「呉宝春麦方店」の制服のデザインも手掛けています。

詹氏の制作作業は、ストーリーのテーマを想像することから始まります。彼のデザインは元々幻想的でミステリアスですが、どのような業界や環境の作品であっても、使用する生地と外観の雰囲気を通して物語が伝わってきます。このストーリー力が詹氏の強みです。読書家な彼は、文学に関する知識が豊富であることから、季節のテーマに沿ったインスピレーションが得られるよう、独自の読書リストを持っています。

デザイン以外
また、彼は新型コロナウィルスが流行している最中も歩みを止めませんでした。ファッションショーが中止されても、この「試練の時間」を利用して、デジタルショーを開催すべくコレクション( 新作発表会)のコンセプトを表すミニ動画を制作。デジタルショーでは、ファンタジーやイリュージョン、テキスタイルにこだわりました。

22-10-21Taipei mag 30 (Copy)▲このスタジオはアイデアが集まる空間です。ここには様々な生地、ドラフトや写真があり、衣装がここから誕生されます。( 写真/Wei Wen Chen)

この他にも詹氏は、菓子メーカー「郭元益」のパッケージや「2022高雄城市書展」のコンセプトアート、マクドナルドの商品用包装、プロ野球チーム「楽天モンキーズ」のユニフォームなど様々な業界とコラボレーション。それぞれに合ったコンセプトを考え、ビジュアルのメインテーマを考案しています。彼は異業種と積極的に交流し、他の業界のプロたちとのコミュニケーションを通じて、様々なことを学んでいます。

APUJAN SS23奇幻旅館 布料與細節 (10-1) (Copy)▲詹氏が自分でデザイン・制作したジャカード生地で衣装を作ります。( 写真/APUJAN )

台北とロンドン 二つの都市の物語
学科を卒業後、詹氏はロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートへ留学して芸術学修士号を取得しました。数年間の自己探索を経て、自身のブランドを立ち上げることを決意。台北とロンドンという2つの都市が、ファッションデザイナーになるための礎となりました。

ロンドンに8年以上住み、20シーズン以上のコレクションを経験した詹氏。彼は、数百年の歴史を持つヨーロッパのアパレル産業が、規模を問わず成熟していることに気が付きます。それに比べると、台湾のファッション産業は産声を上げたばかりでした。しかし、人間関係が密接という地域的な特徴から、台北では業界の枠を越えて急速に発展を遂げたのです。

「特に、台湾の繊維産業は強い力を持っています。例えば、台湾の高機能繊維の開発と製造は世界トップクラスです。台湾のファッションデザイン学校の学生は、早い段階で生地の原料に触れます。使用するジャカード生地はほとんど自分で制作しますが、ヨーロッパでは直接触れることはほとんどありません」詹氏はさらに続けます。

「生地原料の種類が豊富なので、台湾の学生は在学中に生地の利用法を完全に習得することができます。また、台湾の教授は繊維メーカーにも詳しいです。これらはアジアが持つアドバンテージです。ヨーロッパのファッションデザインの世界は、クリエイティブな開発を重視しますが、台湾企業は技術を重視する傾向があります。台北の強みは生地と技術なんです。」

台北での生活
詹氏の一日は、提携メーカーが朝早くから操業するため、大抵は朝の7時か8時には始まります。彼はよく台北市内を歩き回り、各地の工場や提携先を訪れます。これらは、提携先の仕事内容をより深く理解するために欠かせません。

「例えば、雲門舞集との提携では2年間にわたってリハーサルの様子を見学しました。ダンサーの動きによりフィットしたデザインにするためです」と詹氏は説明してくれました。

22-10-21Taipei mag 26-2 (Copy)▲台北は人々のつながりが深いため、異業種のコラボレーションはロンドンよりも早いと詹氏は言います。( 写真/Wei Wen Chen )

彼は街の散歩や日課をこなしているときに、台北は他の都市とは比べものにならないほど便利だと気づいたそうです。例えば、ロンドンでは招待状の印刷に時間がかかることがあります。招待状の調整はファッションイベント開催の最初のステップであり、完成まで時間を要します。迅速な印刷も可能ですが、その分コストも大きくなります。それに比べて台北は、このあたりが非常に効率的です。そのため、招待状の手配は最後で良く、作業工程にも柔軟性が生まれます。

さらに、台北はアクセスが容易で、タクシーや公共交通機関の料金も安いことから、作業の効率が非常に高いです。ロンドンの公共交通機関は、大きな物を運ぶのでなければ有効な移動手段ですが、効率性は大きく欠けるそうです。

詹氏が台湾で衣装を制作する理由も、この移動コストの安さにあります。高品質の原料を台湾の一流の繊維工場で製造し、海外へ送り出すことが彼の戦略です。

街に対する客観的な視点
「住んでいる場所に関わらず、台北は何かをもたらしてくれます」と詹氏は語ります。

詹氏は街の良い点と悪い点を考えすぎず、感覚や利便性、コミュニケーションの視点で客観的に分析しています。

「例えば、道路はスクーターだらけで、あまりきれいな街並みとは言えないと考える人もいますが、海外のジャーナリストにとっては写真を撮って記事にしたいくらい魅了される街です。あるいは、コンセプトと機能が一致しないことがあります。 例えば、看板やポスターを美しく作ろうとするとフォントが小さくなり、情報伝える点では不便になることがあります。情報の伝達は<拡大> と<スケールアップ>のために重要です」と詹氏は説明します。

仕事、都市観察、人生観、各ブランドとのコラボレーションなど、詹氏はあらゆる面でオープンかつ合理的です。台北の新世代のクリエイターを代表する彼の存在や、そのオープンなマインドが、台北のファッションシーンにさらなるエネルギーと創造性をもたらすことでしょう。

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