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TAIPEI 2016夏季号 Vol.04—あの頃、君と一緒に食べたパン

アンカーポイント

発表日:2016-07-12

更新日:2016-09-23

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文 _ 梁幼祥
写真 _ 李明宜、許世穎

7.3.1_吳寶春的麵包店總吸引許多民眾排隊嘗鮮。(李明宜攝).jpg
1. 呉宝春のベーカリーは新しい味を求める多くの人々にいつも大人気です。(写真/李明宜)

呉宝春さんのベーカリーが台北にオープンした時、私もさっそくにぎやかしに行きました。人だかりで押し合っていると目の前に若いカップルがいて、その仲の良い様子がうらやましくなりました。若いって素晴らしい。でももっとうらやましかったのは彼らがこんなに高いパンを買うことができるということでした。
この光景を見て、突然私は40 年以上前のことを思い出しました。初恋の人は明るく活発でいつも笑顔で、小鳥のように軽やかに歩く女の子でした。当時、私はまだ貧しい学生で、お菓子を買ったら食事を一食がまんしなければなりませんでした。私はいつも彼女の手を引いてツツジが咲きほころぶ台湾大学のキャンパスを散歩したり、重慶南路の書店を見て歩いたりしました。あの物がなく貧しかった時代、恋人たちは「ぶらつく」ことしかできなかったのです。
彼女のおこづかいは私よりも多かったので、いつも私に会いに来るとまず台湾大学の向かいにある「得記」でたくさんパンを買って私の勉強に付き合ってくれました。食べきれなかったパンは私の翌日の朝ごはんになります。彼女はいつも違う味のパンを買って来てくれました。小豆あん、クリーム、肉鬆(肉でんぶ)、焼きまんじゅうなど、いつも目新しい味を探していました。

彼女が見つけた
意外なパンの楽しみ方
ある時、彼女は部屋に入ってくると私に唐辛子ソースを出すように言いました。私は訳が分からず心の中で「まさかパンにつけるんじゃ?」といぶかしみました。彼女はすぐさまパンをちぎると唐辛子ソースをたっぷりつけて私の口の中に押し込みました。私は大きな声で「何するんだよ、パンにこんなものをつけて食べさせるなんて!」と叫びましたが、彼女は目を細めていたずらっぽくこう言いました。「何か悪いことした?」逆らえない私はただ口をあんぐり開けることしかできませんでしたが、彼女は私をじっと見て私の反応を待っていました。何てことだ!噛んでみると柔らかい食感と、ねぎ油の香りと辛味が口の中に広がり、私の味覚は彼女のかわいらしい顔と同じような魅力を覚えたのでした。
ある時、私たちは新公園(現在の二二八和平公園)で待ち合わせをしました。私は「公園号」の酸梅湯(梅ジュース)を2 袋買って彼女を待ちました。彼女はいつも1 時間遅れて来ます。でもその煩わしさといらいらは、彼女が遠くから飛び跳ねながらやってくる小さな姿を見るときれいになくなってしまいます。彼女は「明星麺包廠(アストリア)」の紙袋を下げていて、私の酸梅湯を見ると「わあ!酸梅湯にロシアパン、ソフトキャンディーもあるわ!」と大きな声で叫びました。あの時はじめて、私はパンの食感というものはあんパンのようにどれも柔らかいのではないと知りました。

7.3.2_台北人對新穎麵包的期待總是那麼強烈。(許世穎攝).jpg
2. 台北人はいつも目新しいパンに対して高い期待を抱いています。(写真/許世穎)

激しい移り変わり
新しいパンが競い合う台北
兵役を終えると、私は永康街に住みました。通りの角に「サンメリー(聖瑪莉)」という日本風のパン屋さんができて、いつもお客さんでいっぱいでした。その時、台北人の目新しいパンに対する期待がこんなにも高いのだということに気づきました。その店でパンを買うたび、かわいかったけれど兵役に行った私の帰りを待つことのなかったあの小さな恋人をいつも思い出したものでした。
それから、経済の発展に伴って台北のパン屋さんは増えていきました。導入する技術や味も日進月歩の進化を見せており、台北は「食の天国」というよりむしろ「食の競技場」と言えるのではないでしょうか。なぜならパンの作り方や食べ方だけでも、こんなに多様な都市は世界を見ても他にないと思うからです。
呉宝春さんのベーカリーに並ぶ行列はどんどん長くなり、ついに私の前の恋人たちの順番になりました。レジで恋人に「ねえ、何かジャムを買わない?」と言う女の子を見て、私は彼女にこう言いたくなりました。「唐辛子ソースを試してごらん」と。
 

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