発表日:2021-09-11
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TAIPEI #25 (2021 秋季号)
台湾初のLGBTQIA+向け書店
文: Richard Williams
編集: 下山敬之
写真: 晶晶書店、Taiwan Scene
台湾初のLGBTQIA+向け書店である晶晶書店は、台北の小さな路地にあります。現在では書店とギャラリーを兼ねているこの店が、22年という歴史の中でもたらした影響は計り知れません。同店はLGBTQIA+の書籍や文化を扱う拠点としてだけでなく、活動の中心として、さらに台湾におけるLGBTQIA+の平等の獲得に欠かせない場所としての地位を確立しました。台北はアジアにおいてLGBTQIA+受け入れの象徴という地位を固めています。特にアジアで注目されている台湾同志遊行というイベントを目的として渡航する人にとって、晶晶書店は見逃せないスポットです。
▲台北で20年以上経営されている晶晶書店は、広々とした中庭で世界中のお客様をお迎えしています。
まず晶晶書店の創設に携わったメンバーたちは、台北各地の様々な性別の人々に向けた新しい広場を設置しようと考えました。その際、様々な大学に近い公館商圈が候補に上がります。理由はこの地域が創設メンバーが掲げる理想に近い場所だったからです。台湾に戒厳令が敷かれていた時代、自由な言論と民主主義の追求は禁止され、近所との交流は政府に意義を唱える人たちの温床とみなされていました。そのため、当時の学問の自由を追求する教授や学生は狭い路地に並ぶ茶館やカフェに集まっていました。この近隣には販売禁止の本を取り扱っている書店も多く、そこで包括的なコミュニティが生まれたことが候補地となった決め手です。
▲晶晶書店ではジェンダー関連の書籍や雑誌、DVDなどを取り扱っています。
そして、自由主義の原点としてお店の名前を「晶晶」に決めました。「晶晶」という漢字を分解すると、6つの日(太陽)となります。これはLGBTQIA+コミュニティのシンボルであり、多様性と包括性を表す色の虹ともリンクしています。現在の店長である楊平靖(ヤン・ピンジン)氏は、「それぞれの色は多彩な意味を持ち、異なるジェンダーとアイデンティティを表しています。また、自由な流れでありながら、集まった時は団結するという意味もあります」。
「当店のレインボーフラッグとLGBTQIA+アートと文化を示す大きな窓は、LGBTQIA+の方々がこの社会において共に団結できる場所であることを示しています」と語っています。開店当初、同性愛を公然と表現することに近隣住民は困惑し、不快感を覚える人もいました。しかし、同店はそれらの表現をやめませんでした。「現在は、ここがアートスペース兼書店であること、そしてLGBTQIA+コミュニティが社会の一部であり、LGBTQIA+の人々の多様性と様々な一面を表していることを、アートとレインボーフラッグを飾った中庭を用いて地域社会に訴えています」。
▲店長の楊平靖氏は多角化した経営の中で、LGBTQIA+コミュニティの多様性を紹介しています。
晶晶書店にあるLGBTQIA+の文学とクィア(性マイノリティ)アートギャラリーは、20年以上コミュニティへ貢献し、その後は台北の人々にとって強力なコミュニティ空間となりました。「開店以来ずっとご来店されているお客様もいらっしゃいますし、よく雑談に来られる人もいます」と楊氏は言います。一方で、晶晶周辺の通りや路地には台北唯一の小さなゲイタウンが誕生。この地域では平等を表すレインボーフラッグを立てたLGBTQフレンドリーのカフェが多く見られます。
変革の時
比較的歴史の短い晶晶ですが、台湾のLGBTQIA+の人々にとっては、劇的な変化が起きている場所と見なされていて、実際に変化も起きています。同性愛運動が合法化された一方、従来の価値観に基づいた偏見や差別は続いていました。しかし、ここ数年でLGBT活動家が平等性に関する中間目標を達成。アジア初の同性婚合法化を実現した国となりました。それに伴い、台湾のLGBTQIA+の人々が徐々に表舞台へ進出。自分たちに誇りを持つようになりました。
▲LGBTQIA+コミュニティは年々台北における認知度と活躍の幅を広げています。
楊氏は、1997年に起きた常徳街事件の被害者です。武装した警官がLGBTのたまり場を襲撃し、50名近くを拘束。毎晩取り調べを行った上、写真撮影を強要し、セクシャリティを家族に話すと脅しました。この経験を機に楊氏は晶晶で働き始め、LGBTQIA+の人々の権利強化を求めるようになっていったのです。
2000年以前の台湾のLGBTQIA+コミュニティは、嫌がらせと差別を恐れ、屋内に閉じこもっていたと楊氏は言います。そんな中、晶晶書店は早くからLGBTQIA+の人々にとっての憩いの場となっていました。ここでは自分らしくいることができ、同じ悩みを持つ人々との交流が可能です。これにはホームページへのアクセス増加が大きく貢献しました。「インターネットと実際の活動が次第に統合されるようになり、元々仲の良かったコミュニティが次第にオープンになってきました」と楊氏は語ります。
2003年、晶晶書店と他のLGBTQIA+活動家、コミュニティのメンバーが力を合わせて、台湾同志遊行を初めて開催。現在、同イベントはアジアで最も歴史が長く、規模の大きいLGBTQIA+イベントとなっています。現在、同イベントは最初の数年間、台湾のLGBTQIA+コミュニティを外部の社会へ知らせることが目的でした。「パレードが毎年開催されるようになった後、各参加者はお互いに交流し、自分をアピールするきっかけが増えたことで、コミュニティが大きくなっていきました」と楊氏は振り返ります。
台北がアジアのLGBTQIA+の中心地として認識されるようになり、地元のコミュニティでは多様なLGBTQIA+のスタイルやタイプ、個性が表現されるようになりました。楊氏は「お互いを知るきっかけが増え、コミュニティは今までよりニッチなグループへ分かれ、LGBTQIA+コミュニティ内の多様性と違いが徐々にはっきりしてきました」と語っています。
▲晶晶書店内にあるギャラリー空間には、不定期でLGBTQIA+のアーティストが制作した作品を展示しています。(写真/晶晶書店)
晶晶はそのようなコミュニティの多様性に合わせたプラットフォームの提供を開始。あらゆるレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、ノンバイナリーの人々が、より大きくなったLGBTQIA+コミュニティと社会との交流を図る機会が増えました。現在の書店は、あらゆるタイプの人がアート、文化、アイディアを交換できる有機的なプラットフォームとなっています。楊氏いわく、独立系書店の経営は大変ではあるものの、心が安らぎ、アイディアと価値を共有、拡散できるよう努力をしているそうです。
▲国内外の学者たちがジェンダー関連の情報交換のために晶晶書店を訪れます。(写真/晶晶書店)
LGBTQIA+の「首都」
楊氏は、台北は間違いなく世界のLGBTQIA+の「首都」として成長していると話します。「各地を旅行しましたが、台北ほど性マイノリティの人に対して親切で、受け入れられている場所はありませんでした」。楊氏は台北にはアムステルダムやサンフランシスコのように、LGBTQIA+の人たちにとっての世界的な「都市」となるポテンシャルがあると信じています。
▲性の多様性に対する意識が高くなるにつれて、台北もLGBTQIA+の人々に優しい国際的な都市へと変化を遂げてきました。
台湾を訪れる旅行者の多くが台北の賑やかな夜に魅了されます。日本時代の建物である西門紅楼は、恐らく台北で最も人気のナイトスポットの一つでしょう。このエリアにはゲイバー、ギャラリー、アートスペースが数多く並び、夜にはカクテルを飲み、ドラァグクイーンのショー、夜にはダンスを楽しむ人々で賑わいます。台北には、ゲイの歴史をたどる独自のウォーキングツアーと、ドラァグクイーンのホストがいるレインボーツーリズムバスもあります。
楊氏によると、地方政府と地域団体は、この街がよりLGBTQフレンドリーになるよう努力しているとのことです。例を挙げると、台北市立聯合医院のような市内の病院の医者と看護師はジェンダーやセクシャリティを尊重し、LGBTQIA+コミュニティに対してセンシティブであることを教えられます。
📓おすすめ作品リスト

台湾のセクシャリティやジェンダーに関する問題について詳しく知りたい場合に、是非読んでほしい台湾のLGBTQIA+文学をいくつかご紹介しています。
📕《孽子・ニエズ》/ 白先勇 (バイ・シエンヨン)
白先勇の代表的なLGBTQIA+小説で、セクシュアリティが理由で追放されたゲイの高校生の物語です。同作はすぐに中国語のLGBTQIA+文化の代表作となり、映画化や舞台化も検討されました。
📘《ある鰐の手記》/ 邱妙津 (チョウ・ミャオジン)
台北の戒厳令時代における同性愛者の生活を探った新時代の作品です。本作は、「拉子」というニックネームの内向的なレズビアンが語り手となり、クラスメートに対する彼女の屈折した魅力を探っていきます。この小説は、カウンターカルチャーに傾く主人公の内向的な自己探求を描いたもので、瞬く間にカルト的な人気を博しました。実際、台湾では「拉子」がレズビアンを表すスラングになりました。
📙《同志文学史:台湾の発明》/ 紀大偉 (ジー・ダーウェイ)
この作品は、20世紀半ばから21世紀初頭までの世紀をまたいだ台湾のクィア文学の概要を紹介しています。長編、短編、散文、詩、ドラマなど、様々なタイプの台湾のクィア文学作品が掲載されている充実した書籍です。
晶晶書店
住所 中正区羅斯福路3段210巷8弄8号
営業時間 14:00 ~ 21:30 (火水定休)
台湾初のLGBTQIA+向け書店
文: Richard Williams
編集: 下山敬之
写真: 晶晶書店、Taiwan Scene
台湾初のLGBTQIA+向け書店である晶晶書店は、台北の小さな路地にあります。現在では書店とギャラリーを兼ねているこの店が、22年という歴史の中でもたらした影響は計り知れません。同店はLGBTQIA+の書籍や文化を扱う拠点としてだけでなく、活動の中心として、さらに台湾におけるLGBTQIA+の平等の獲得に欠かせない場所としての地位を確立しました。台北はアジアにおいてLGBTQIA+受け入れの象徴という地位を固めています。特にアジアで注目されている台湾同志遊行というイベントを目的として渡航する人にとって、晶晶書店は見逃せないスポットです。
まず晶晶書店の創設に携わったメンバーたちは、台北各地の様々な性別の人々に向けた新しい広場を設置しようと考えました。その際、様々な大学に近い公館商圈が候補に上がります。理由はこの地域が創設メンバーが掲げる理想に近い場所だったからです。台湾に戒厳令が敷かれていた時代、自由な言論と民主主義の追求は禁止され、近所との交流は政府に意義を唱える人たちの温床とみなされていました。そのため、当時の学問の自由を追求する教授や学生は狭い路地に並ぶ茶館やカフェに集まっていました。この近隣には販売禁止の本を取り扱っている書店も多く、そこで包括的なコミュニティが生まれたことが候補地となった決め手です。
そして、自由主義の原点としてお店の名前を「晶晶」に決めました。「晶晶」という漢字を分解すると、6つの日(太陽)となります。これはLGBTQIA+コミュニティのシンボルであり、多様性と包括性を表す色の虹ともリンクしています。現在の店長である楊平靖(ヤン・ピンジン)氏は、「それぞれの色は多彩な意味を持ち、異なるジェンダーとアイデンティティを表しています。また、自由な流れでありながら、集まった時は団結するという意味もあります」。
「当店のレインボーフラッグとLGBTQIA+アートと文化を示す大きな窓は、LGBTQIA+の方々がこの社会において共に団結できる場所であることを示しています」と語っています。開店当初、同性愛を公然と表現することに近隣住民は困惑し、不快感を覚える人もいました。しかし、同店はそれらの表現をやめませんでした。「現在は、ここがアートスペース兼書店であること、そしてLGBTQIA+コミュニティが社会の一部であり、LGBTQIA+の人々の多様性と様々な一面を表していることを、アートとレインボーフラッグを飾った中庭を用いて地域社会に訴えています」。
晶晶書店にあるLGBTQIA+の文学とクィア(性マイノリティ)アートギャラリーは、20年以上コミュニティへ貢献し、その後は台北の人々にとって強力なコミュニティ空間となりました。「開店以来ずっとご来店されているお客様もいらっしゃいますし、よく雑談に来られる人もいます」と楊氏は言います。一方で、晶晶周辺の通りや路地には台北唯一の小さなゲイタウンが誕生。この地域では平等を表すレインボーフラッグを立てたLGBTQフレンドリーのカフェが多く見られます。
変革の時
比較的歴史の短い晶晶ですが、台湾のLGBTQIA+の人々にとっては、劇的な変化が起きている場所と見なされていて、実際に変化も起きています。同性愛運動が合法化された一方、従来の価値観に基づいた偏見や差別は続いていました。しかし、ここ数年でLGBT活動家が平等性に関する中間目標を達成。アジア初の同性婚合法化を実現した国となりました。それに伴い、台湾のLGBTQIA+の人々が徐々に表舞台へ進出。自分たちに誇りを持つようになりました。
楊氏は、1997年に起きた常徳街事件の被害者です。武装した警官がLGBTのたまり場を襲撃し、50名近くを拘束。毎晩取り調べを行った上、写真撮影を強要し、セクシャリティを家族に話すと脅しました。この経験を機に楊氏は晶晶で働き始め、LGBTQIA+の人々の権利強化を求めるようになっていったのです。
2000年以前の台湾のLGBTQIA+コミュニティは、嫌がらせと差別を恐れ、屋内に閉じこもっていたと楊氏は言います。そんな中、晶晶書店は早くからLGBTQIA+の人々にとっての憩いの場となっていました。ここでは自分らしくいることができ、同じ悩みを持つ人々との交流が可能です。これにはホームページへのアクセス増加が大きく貢献しました。「インターネットと実際の活動が次第に統合されるようになり、元々仲の良かったコミュニティが次第にオープンになってきました」と楊氏は語ります。
2003年、晶晶書店と他のLGBTQIA+活動家、コミュニティのメンバーが力を合わせて、台湾同志遊行を初めて開催。現在、同イベントはアジアで最も歴史が長く、規模の大きいLGBTQIA+イベントとなっています。現在、同イベントは最初の数年間、台湾のLGBTQIA+コミュニティを外部の社会へ知らせることが目的でした。「パレードが毎年開催されるようになった後、各参加者はお互いに交流し、自分をアピールするきっかけが増えたことで、コミュニティが大きくなっていきました」と楊氏は振り返ります。
台北がアジアのLGBTQIA+の中心地として認識されるようになり、地元のコミュニティでは多様なLGBTQIA+のスタイルやタイプ、個性が表現されるようになりました。楊氏は「お互いを知るきっかけが増え、コミュニティは今までよりニッチなグループへ分かれ、LGBTQIA+コミュニティ内の多様性と違いが徐々にはっきりしてきました」と語っています。
晶晶はそのようなコミュニティの多様性に合わせたプラットフォームの提供を開始。あらゆるレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、ノンバイナリーの人々が、より大きくなったLGBTQIA+コミュニティと社会との交流を図る機会が増えました。現在の書店は、あらゆるタイプの人がアート、文化、アイディアを交換できる有機的なプラットフォームとなっています。楊氏いわく、独立系書店の経営は大変ではあるものの、心が安らぎ、アイディアと価値を共有、拡散できるよう努力をしているそうです。
LGBTQIA+の「首都」
楊氏は、台北は間違いなく世界のLGBTQIA+の「首都」として成長していると話します。「各地を旅行しましたが、台北ほど性マイノリティの人に対して親切で、受け入れられている場所はありませんでした」。楊氏は台北にはアムステルダムやサンフランシスコのように、LGBTQIA+の人たちにとっての世界的な「都市」となるポテンシャルがあると信じています。
台湾を訪れる旅行者の多くが台北の賑やかな夜に魅了されます。日本時代の建物である西門紅楼は、恐らく台北で最も人気のナイトスポットの一つでしょう。このエリアにはゲイバー、ギャラリー、アートスペースが数多く並び、夜にはカクテルを飲み、ドラァグクイーンのショー、夜にはダンスを楽しむ人々で賑わいます。台北には、ゲイの歴史をたどる独自のウォーキングツアーと、ドラァグクイーンのホストがいるレインボーツーリズムバスもあります。
楊氏によると、地方政府と地域団体は、この街がよりLGBTQフレンドリーになるよう努力しているとのことです。例を挙げると、台北市立聯合医院のような市内の病院の医者と看護師はジェンダーやセクシャリティを尊重し、LGBTQIA+コミュニティに対してセンシティブであることを教えられます。
📓おすすめ作品リスト
台湾のセクシャリティやジェンダーに関する問題について詳しく知りたい場合に、是非読んでほしい台湾のLGBTQIA+文学をいくつかご紹介しています。
📕《孽子・ニエズ》/ 白先勇 (バイ・シエンヨン)
白先勇の代表的なLGBTQIA+小説で、セクシュアリティが理由で追放されたゲイの高校生の物語です。同作はすぐに中国語のLGBTQIA+文化の代表作となり、映画化や舞台化も検討されました。
📘《ある鰐の手記》/ 邱妙津 (チョウ・ミャオジン)
台北の戒厳令時代における同性愛者の生活を探った新時代の作品です。本作は、「拉子」というニックネームの内向的なレズビアンが語り手となり、クラスメートに対する彼女の屈折した魅力を探っていきます。この小説は、カウンターカルチャーに傾く主人公の内向的な自己探求を描いたもので、瞬く間にカルト的な人気を博しました。実際、台湾では「拉子」がレズビアンを表すスラングになりました。
📙《同志文学史:台湾の発明》/ 紀大偉 (ジー・ダーウェイ)
この作品は、20世紀半ばから21世紀初頭までの世紀をまたいだ台湾のクィア文学の概要を紹介しています。長編、短編、散文、詩、ドラマなど、様々なタイプの台湾のクィア文学作品が掲載されている充実した書籍です。
晶晶書店
住所 中正区羅斯福路3段210巷8弄8号
営業時間 14:00 ~ 21:30 (火水定休)
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