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歴史に浸る:台湾の温泉を巡 (TAIPEI Quarterly 2023 冬季号 Vol.34)

アンカーポイント

発表日:2023-12-11

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TAIPEI #34 (2023 冬季号)

歴史に浸る:台湾の温泉を巡


  リック・シャレット 
編集 下山敬之
写真 北投温泉博物館、瀧乃湯、日勝生加賀屋、MyTaiwanTour

fs_1▲台北市郊外にある北投地熱谷は、冬にぜひ訪れたい場所です。 (写真・日勝生加賀屋)

冬の台湾は温泉愛好家たちにとって最適なシーズンです。冷え切った心身を癒すには、やはり温泉に浸かるのが一番でしょう。
  
台北の北西部に位置する北投温泉のリゾート地までは、台北の繁華街から地下鉄でわずか30分ほど。主なリゾートエリアは、陽明山という巨大な山塊の麓に切り込む北投渓によって削られた浅い渓谷にあり、谷の西端にはMRT新北投駅があります。

ここでは北投の温泉街を地質学的な起源や文化歴史的な重要性、そして魅力的な観光スポットに分けて紹介していきます。時空を超えた温泉ガイドツアーへでかけましょう。

地質学的な起源 — 地下の溶岩

陽明山は台湾北部の大屯火山群の一部で、約100万年~20万年前まで活動していました。地下には約50km2の大きなマグマ溜りがあり、その頂点は地表からわずか8kmのところにあります。現代の観光客にとって特に喜ばしいのは、これらの山々には温泉、噴気孔、硫黄坑、リゾートホテル、公衆浴場が溢れていることです。 

魅力あふれる渓谷から人気の観光スポット

華語の地名「北投」は、この地域の先住民ケタガラン族がつけた名である「パタウ」(「魔女の住処」の意)に基づいています。先住民たちは、北投渓谷に発生する大きな硫黄の霧が魔法であり、魔女が住んでいるに違いないと考えました。清代には、漢民族が軍需と貿易のため、硫黄鉱脈を採掘しこの地へやって来ました。

その後、台湾が1895年から1945年まで日本の統治下に入ると、日本人の温泉文化が流入し、多くの台湾人に愛される娯楽となりました。北投渓谷は主に、休養中の将校や負傷した軍人らのために開発されました。1904年から1905年にかけ、日露戦争で多くの負傷者が搬送されるようになると、この地は本格的な繁栄を始めます。1913年に落成した北投公園と北投公共浴場は、古典的なヨーロッパ式の景観が広がっていました。第二次世界大戦の終結を受けて日本軍が撤退した後は、現在のようなより自然な姿へと戻されました。 

fs_2▲1994年まで、北投小学校の生徒と教師たちは政府に嘆願し、北投温泉博物館は市の史跡として修復されました。(写真・北投温泉博物館)

MRT新北投駅から徒歩わずかのところにある北投温泉博物館は、この歴史豊かな地域において最も重要な文化財です。この博物館は赤レンガと白漆喰を用いた美しい和洋折衷様式で作れており、日本時代には台湾初、東アジア最大の公共温泉でした。館内にはロマネスク様式のプールと円柱の他、広々として風通しの良い畳の休憩室などが復元されています。また、興味深い工芸品や有益な展示も多く、日本時代の白黒写真やドキュメンタリーフィルムの映像も展示されており、かつての北投や台北の様子を垣間見ることができます。

fs_3▲1994年まで、北投小学校の生徒と教師たちは政府に嘆願し、北投温泉博物館は市の史跡として修復されました。(写真・北投温泉博物館)

台湾の温泉文化と北投の宝物

日本が台湾を占領した際には、専門家による土地の調査が行われ、利用可能な天然資源はくまなくマッピングされました。これには温泉資源も含まれており、その後数十年にわたって多くのリゾートが開発されました。近年、海外から訪れる旅行者にとっての見どころは、山岳地帯に広がる様々な美しい景観と、無数に湧出する様々な効能を持った鉱泉です。身体的、精神的な癒やしをもたらす様々な鉱水が観光客のニーズを満たしています。もちろん、寒さの厳しい冬に訪れた観光客の心身も温めてくれます。

北投渓の両側に続く曲がりくねった小道をたどり、緑豊かな北投公園を散策をするのもおすすめです。遠くには陽明山の峰々がそびえ、渓谷の奥にはむき出しの岩肌を登るロッククライマーの姿が見えることもあります。

かつて、日本のリゾート地であった北投の姿を想像してみましょう。北投渓沿いには5つの滝があります。この渓流の水は地熱で温められているため、それぞれの滝が天然の温泉を形成しています。多くの浴場が開発される以前は、日本人は滝壺を訪れ裸で入浴をしていましたが、この行為が地元住民の間で大きな物議を醸しました。日本の役人は日本人の尊厳を保つため、この慣行を禁ずるべきと考えました。
 
現在、これらの渓流では足湯のみが許可されており、かつては垂直に流れ落ちていた滝も、川の浸食によってほとんど目立たなくなってしまいました。しかし、それぞれの滝のそばに開発された浴場は今日まで繁栄を続けています。かつては「たきのゆ」と発音されていた瀧乃湯もその一つです。現代では、裸で入浴する施設では男女別の浴場を、水着と水泳キャップを着用が必須の施設では混浴の浴場を提供しています。

鉱泉の種類

北投地域には白色硫黄、緑色硫黄、鉄硫黄の3種類の泉質があります。白色硫黄の主な湧出地は、硫磺谷と龍鳳谷の丘の上にある大きな月の形をした2つの窪地です。整備された歩道を進むと、蒸気孔、沸騰する温泉、濃い黄色の硫黄鉱床、むき出しの岩壁など、熱い水蒸気と硫黄に満ちた風景が広がります。北投の温泉施設のほとんどは、これらの水を使用しています。

北投公園の最上部付近にある小さな谷間は、地獄谷や地熱谷と呼ばれています。なぜ地熱谷かというと、谷の頂にある高い壁に囲まれた窪地に、陽明山のマグマ溜りによって加熱された硫黄水が噴気孔から吐き出され、浅い湖から立ち上る蒸気が充満しているためです。地元の人々からは「鬼の湖」とも呼ばれています。地熱谷はさらに「玉泉谷」という別称もあり、北投渓の源流である強酸性の緑色硫黄水を供給しています。水温はこの地域で最も高く、摂氏80度から100 度に達します。新しく改装された湖畔の遊歩道では、近くに水都温泉ホテルもあり、温泉で卵をゆでる体験ができます。

緑色の硫黄水はラジウム温泉とも呼ばれ、特に優れた治癒効果があります。この温泉に含まれるラジウムが、北投公園の河床の安山岩と腐食反応を引き起こし、岩の外側に微弱な放射性を帯びた結晶物質を形成するためです。これは北投石(北投の日本語読みから「ホクトライト」とも)といい、北投と日本でしか産出されません。また、台湾の地名にちなんで名付けられた唯一の鉱物でもあります。北投温泉博物館には、800kgの巨大なサンプルが展示されています。

fs_4▲▼地熱谷にある石は放射性元素「ラジウム」を含み、「北投石」とも呼ばれます。 上にが北投地熱谷、下にが北投温泉博物館の北投石。(上・MyTaiwanTour;下・北投温泉博物館)
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鉄が混じった硫黄水は温度が低く、無臭で色味も透明ですが、時間が経つと酸化して赤褐色に変化します。鉄を含むことから神経痛やリウマチなどの疾患に効果があると考えられています。

その他の北投の観光スポット

北投公園のすぐ外、博物館から谷を登ったところにある浴場「瀧乃湯」で、歴史に浸りながらくつろぎましょう。この施設は、1907年に日本人が開設した北投最古の日本式の浴場です。日本が統治していた大正時代には、当時の皇太子であった裕仁親王(後の昭和天皇)も北投を訪れています。その際、小川を歩きやすくするために、2番目の滝の近くに飛び石が敷かれ、後に瀧乃湯の中庭には「皇太子殿下御渡涉記念碑」と刻んだ石碑が建てられました。この歴史的なつながりが、瀧乃湯とその周辺地域にさらなる重要性を与えています。

10年ほど前に大掛かりな改修工事が行われましたが、外観も内装も質朴な「古き日本」を忠実に再現しています。男湯と女湯の他、カップルや最大5人の家族が入浴できる専用の貸切浴場、さらに中庭には足湯もあります。女湯と専用の浴場は1950年に増設されたものです。

fs_6▲▼瀧乃湯は新北投温泉エリアで最も古い日本式の浴場で、最も原始的な緑色硫黄泉の温泉を提供しています。(写真・瀧乃湯)
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かつての面影を残す男湯の素朴な石風呂は、現代の日本ではほぼ見られなくなった古典的な明治時代のスタイルを再現しています。これは地元産の唭哩岸石で造られているほか、地熱谷の緑色硫黄水による浸食と浸透を防ぐために硫黄スラリーという泥状の混合物で密封され、独特な明治風の景観を作り出しています。唭哩岸石は女湯にも使われ、昔ながらの素朴な雰囲気を演出しています。後に、唭哩岸石の採石は禁止されたため、この浴場は唯一無二のものとなりました。

博物館の正面に位置する公園の外には、現代的な華やかさと歴史的重要性が融合した空間があります。それが高級ホテル、日勝生加賀屋。ここには、男女別の浴場と専用の貸切浴場があり、温泉には白色硫黄水が使用されています。ホテルの外では着物を着用した女性スタッフがゲストを出迎えてくれます。ホテルの西にある小さな公園には、1896年に開業した北投初の民営温泉旅館「天狗庵」の跡地があります。石造りの階段や多数の円柱などかつての姿を垣間見ることができます。

fs_8▲▼日勝生加賀屋、以前は天狗庵として知られ、かつては台湾初の和風温泉ホテルでした。(写真・日勝生加賀屋)
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温泉博物館から少し下ったところにある公園内には、台湾初のグリーンビルディングの図書館である北投図書館(台北公共図書館北投分館)があります。さながら、巨大なツリーハウスといった印象を受けるこの建築物は木と鉄で造られており、すべてリサイクル可能となっています。屋上の緑地が屋内を涼しく保ち、集められた雨水は屋内の様々な目的に用いられるなど環境に優しい構造になっているほか、2階には読書できる木陰のバルコニーがあるなど、多くの見どころが詰まっています。

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温泉の入浴マナー
公共温泉施設で守るべきルールは以下の通りです:
  • 湯船に浸かる前に必ずシャワーを浴びる。
  • シャワー前に日焼け止めや乳液、クリームなどの化粧品を使用しない。
  • 湯船に浸かる前にバケツで足を湿らせる。
  • 足だけ浸かるのではなく、全身で湯船に浸かる。
  • 妊娠中の方、身体に障害のある方、高齢の方、お子さまは一人で入浴しない。
  • 水泳キャップの着用が義務付けられていない施設では、髪をお湯につけない。
  • プライバシーを尊重し、写真や動画の撮影、他人を無遠慮に見る行為は控える。
  • 会話は静かな声で、大声は出さない。

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