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ACT for Animals、動物保護の革新 (TAIPEI Quarterly 2023 冬季号 Vol.34)

アンカーポイント

発表日:2023-12-11

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TAIPEI #34 (2023 冬季号)

ACT for Animals、動物保護の革新


  リック・シャレット
編集 下山敬之
写真 台湾愛克特動物重生救援協会

fs_1▲ACT for Animalsの創設者である徐若菁氏とショーン氏は野良動物の支援に力を入れており。

台湾ではたびたび野良動物が問題になっています。ここ数十年、台湾社会においてペットは、大きな人気を集めるようになり、特に新型コロナウイルスの流行時には保護動物の里親が急増しました。しかし残念なことに飼育放棄も深刻化しており、動物に対するリハビリ体制も見直しが必要となっています。
 
2017年、台湾は保護動物の殺処分を禁止Vしましたが、これがすでに乏しかった公的な動物保護施設のリソースをより圧迫したため、様々な団体が保護活動に参加するようになりました。中でも特筆すべき団体は、2019年に台湾人の徐若菁(シュー・ルオジン)氏、イギリス人のショーン・マコーマック氏の国際カップルによって設立されたACT for Animals(台湾愛克特動物重生救援協会)です。本誌ではACTの理事長である徐氏にインタビューを行い、同NGOのレスキュー活動、台北/台湾の野良動物の現状、他国との動物ケアの方法の違い、そして将来の希望についてうかがいました。 

ACT for Animalsの活動内容

「私たちは、台湾全土、特に北部で苦しむ野良動物や野生動物に対し、獣医による24時間体制の緊急診療を提供し、動物たちの生活が変わる機会を模索しています」と徐氏は言います。「私たちは主に保護、リハビリ、ケア、里親探しに注力していますが、故意に動物に危害を加える人たちを法で裁くことにも力を入れています」 。

このNGOでは、年間約100頭の犬と60頭の猫を保護しています。その大半は、違法なイノシシ罠などの犠牲になった動物で、重傷を負った状態です。現在は、3つの保護区で約300頭の動物を保護してい  ます。
 
fs_2▲ACT for Animalsは、野良動物に対する24時間体制の救助、医療、保護サービスを提供しています。

徐氏はもともと大の動物好きで、10年ほど前に、マコーマックさんが以前関わっていたNGOの動物ケアスタッフの求人に応募しました。「子供の頃の私の夢のひとつは、野良動物のためのドッグパークを作ることでした」と徐氏は話します。当時、徐氏は地上スタッフとしてチャイナエアラインに勤めていましたが、自分の仕事にほとんど情熱を感じていませんでした。そのため、より有意義な仕事に携わるチャンスに飛びついたのです。 

動物愛護に対する市民の意識の変化 

徐氏によれば、数十年前の台湾では野良の動物ががよく見られたそうです。人々は、限られた居住空間でペットを飼うことの責任を理解していませんでした。仕事や学業のために台北に引っ越したものの、ペットを飼うのに適していない賃貸市場に直面した「北漂(中南部から首都に行ってきた人たち)」によって、この状況はさらに悪化しました。

しかし、この20年間で状況は大きく変わったと徐氏は言います。「私は国レベルでも地方レベルでも台湾政府を誇らしく思っています。例えば台北では、郊外の一部を除き、野良犬をほぼ見かけることがなくなりました」。多くの緑地が新たに造成され、動物保護法が成立し、台北市動物保護所も設立されました。さらに、政府と各NGOが動物福祉教育に取り組んだ結果、多くの保護施設が誕生しました。徐氏は、「私たちは、すべての動物に対する人道的な扱いにおいて、台湾がアジアのリーダーになるよう取り組んでいます」と続けます。

台北市動物保護所は、飼えなくなった動物の引き取りや里親探し、大型動物の保護施設の管理など、様々なサービスを提供しています。年間、約1万件の通報があり、犬と猫は約1300頭、その他の動物は4000頭を保護しています。医療介入が必要な動物は24ある提携施設のいずれかに送られ、さらなる治療を受けます。
 
市は2022年末、救助を要する動物の通報や動物の保護に関する問合せを受け付ける、24時間体制のホットライン(1959)を新たに開設することを発表しました。今年は市政府の公式LINEアカウントに動物保護通報システムを導入し、救助が必要な野生動物に関する動画、画像、情報をアップロードできるようにしました。

また、12の行政区のそれぞれに少なくとも1か所、合計約20か所の専用ドッグパークを開設しています。動物により良い生活空間を提供するため、近年ではペットパークの施設を積極的に拡張し、保護施設を改修する計画を立てています。さらに、今年は「動物保護教室」を開設し、動物を引き取る前に1時間の講習を受けることを義務付けました。 

他国と比較した台北の現在のエコロジー

他国における多くの動物救護・リハビリ団体とは異なり、ACT for Animalsでは国際的な里親探しを行っていません。「追跡が非常に難しく、動物が他国で捨てられ、再び保護施設に送られることが懸念されるためです」と徐氏。「現在、私たちが見つける里親のほとんどは台湾に住む外国人で、彼らは台湾を離れるときに動物も連れて行きます」と彼女は続けます。以前の台湾では、保護された野良動物、特に外見が損なわれた動物を引き取りたがりませんでしたが、そういった姿勢にも徐々に変化が生まれ、このような動物の境遇に対する理解と共感が深まってきました。
 
fs_3▲3年前に保護された猫のモカは、新しい環境に適応できずに最初の里親に捨てられました。その後、イギリス出身のミーガン氏に暖かく迎えられたことで環境に馴染み、近々ミーガン氏はモカを連れてイギリスへ戻る予定です。

殺処分ゼロ政策により、公私の保護施設が圧迫され、リソースは限界に達しています。徐氏によると、敷地不足のため一部の保護施設は非常に手狭となり、ほとんどの動物をケージに入れて飼育しているそうです。ACT for Animalsは、保護施設ではなく保護区を運営し、ヨーロッパ、北米、日本など他国の運営方法から最良のものを取り入れています。「広い土地とたくさんの芝生が広がる、屋外の庭のようにより自然な場所で、ケージに入れられたり屋内で暮らしたりするのではなく、外で自然に過ごせる施設を運営しています」。彼女たちは現在、犬用の保護区を2つと猫用の家を運営しています。猫用の家は「キャッツクレイドル」とも呼ばれ、猫たちは屋内で暮らしていますが、外でも過ごすことができるようになっています。

 「政府がNGOと協力し、膨大な数の動物に対処しない限り、台湾が真の意味で殺処分ゼロの国になることはないと私は思います。私たちは、非常に大きな保護区を建設・運営するという目標を掲げています。政府は、里親に出せない、または里親が見つかる可能性の低い動物を私たちの保護施設に移すことで、広大で人道的な保護施設の建設を支援することができます。また、政府の保護施設や資源は、『より簡単な』ケースに注力し、里親センターとして機能することができるはずです。これにより、人々を保護施設から遠ざけてしまう、攻撃的で、あまり魅力的ではない動物が目に入らなくなるので、里親も見つかりやすくなるでしょう」と徐氏は語ります。

心に残る感動的な保護物語

ACT for Animalsは保護区の運営以外に、違法な罠にかかった動物の保護活動で知られています。違法捕獲の主なターゲットは野生のイノシシです。「イノシシが一頭あたり少なくとも3万台湾ドルで取引されるのです」と徐氏は言います。「こうした密猟者を起訴、収監するには写真や動画を撮影し、現行犯逮捕しなければなりません。不可能に思えますが、私達は実際に結果を出しています」。彼女によれば、マコーマックさんは、傷ついた動物をより多く救助するために密猟者の行動パターンを分析しています。密猟者が枝などを切り落として作られる不自然な景観を確認することで、密猟者が使う経路を特定しているそうです。その後、そういったポイントにはモーションセンサーカメラが設置されます。
 
「私たちは、政府機関と協力して密猟者を通報しています。また、野良動物の通報が政府とACT for Animalsに重複して入った場合、連携して保護活動ができるように協力体制を確立しています」と徐氏。「密猟者を通報する際には、政府が追跡できるよう、犯人の車両のナンバーも特定しなければなりません」。これは危険を伴うこともあります。かつて、マコーマックさんともう一人のボランティアが林の中でカメラを確認していた際、武装した密猟者が現れ、なぜ邪魔をするのかと不満を漏らしたと言います。また、ACT for Animalsでは、免許を持つ猟師らにも箱罠など人道的な装置の使用を奨励し、誤って捕獲した動物は逃がすよう働きかけています。

将来の夢

「ACT for Animalsの犬用保護区は現在、移転の最中です」と徐氏は言います。同NGOは、法的な許認可手続きを進めているところです。「政府と協力し、近隣住民に迷惑を掛けないよう、人口密集地から離れた平坦で賃貸料も手頃な国有地を借りようとしているのです。これにより、過密状態の公立保護施設から犬や猫を引き取ることもできるようになります」 。

fs_4▲徐若菁氏は、将来的により広くて快適な動物保護施設を作りたいと考えています。

彼女は、「攻撃的、野生的、障害がある」といった理由で里親が見つからない動物たちが、寿命まで幸せに過ごせる保護施設を作りたいと考えています。また、ACT for Animalsは政府と連携し、台北やその他の都市に「人々に近すぎず、遠すぎない」里親センターを建設したいとも考えているそうです。手のかからない犬を各センターに20~30頭収容し、人々に見に来てもらい、引き取りを促すという形です。このような環境を作ることで、願わくば里親が増え、それによって施設の過負荷とリソース不足が解消され、より多くの保護とリハビリが可能になります。
 
「初の試みですが、私はなんとかやり遂げたいと決意しました。そのためには農務省、動物保護局、政府の財産管理部門、その他各公的機関との調整が必要となるでしょう」と徐氏は言います。国民の意識向上と保護・リハビリ活動の将来について前向きな彼女は、「力を合わせて取り組めば必ず実現できると確信しています!」と語ってくれました。

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