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ホタルの思い出を追って 生態系復活に大成功 (TAIPEI Quarterly 2017 夏季号 Vol.08)

アンカーポイント

発表日:2017-07-12

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ホタルの思い出を追って
生態系復活に大成功

文 ─ 凃心怡 写真 ─ 方華徳、呉加雄、黄建彬

ホタルを取り戻すことになったのは、まったくの偶然でした。
文山区にある仙跡岩の麓で、財団法人大安森林公園の友基金会の陳鴻楷副事務局長は笑顔を見せながらこう言いました。「すべてはここから始まりました。もともとここの地主が蚊などの虫が多すぎると頭を悩ませ、それを私たちチームの力で解決してほしいと考えたのです」彼はまさかこれがきっかけとなってこの地でホタルが生息する形跡を見つけ、さらにホタルの生命を助け、その生態系を取り戻す旅が始まるとは思ってもいませんでした。
TAIPEI 夏季号 2017 Vol.08   ホタルの思い出を追って 生態系復活に大成功
▲ 研究者や専門家たちの注意深い取り組みが評価され、台湾は多くの国の中から「2017年国際ホタルシンポジウム」の開催地に選ばれました。(写真/方華徳)

住みかづくりで
ホタルを呼び戻せ
陳副事務局長は2012年、依頼を受けて一連の生態研究を開始し、基礎調査の過程で長い間見ることのなかったぴかぴかと光るホタルを目にしました。数は非常に少なかったものの2~3種類のホタルがおり、陳副事務局長を大変興奮させました。そして仙跡岩の麓でホタルの生態系を再生し、光を象徴するこの昆虫を台北に取り戻すことは非常に意義のあることだと考えたのです。
陳鴻楷副事務局長(右)と呉加雄博士(左)はホタルを再び迎えるため全力で取り組んでいます。(写真/黄建彬)
▲ 陳鴻楷副事務局長(右)と呉加雄博士(左)はホタルを再び迎えるため全力で取り組んでいます。(写真/黄建彬)

しかし陳副事務局長は、こんなに広い土地を買ったのだから地主はビルを建てるに違いないと思っていました。「地主を説得してみたところ、思いがけず全面的な支持を得て、ホタルの保護活動に協力してもらえることになりました」——彼は専門家を集めたチームを作り、生態系再生の仕事に取りかかります。仲間のうち、呉加雄博士は台湾北部でホタルを研究する数少ない専門家です。呉博士によれば、ホタルの再生は育てたホタルを生息地に放すだけではないと言います。「放すことは殺すことと同じです。ホタルは清潔な水があり、光害が少なく、産卵と交配に適した場所を必要とします。ホタル再生の第一歩は住みかを整えることであるべきです」チームは仙跡岩の麓にあるホタルの生息地の環境改善を始めました。しかし近隣の学校では工事が行われている真っ最中、また別の高校では夜間部の教室の灯りが明るすぎました。幸いチームと学校の話し合いを通じ、2校がいずれも協力してくれることになり、さっそく経費を割いて窓にカーテンを取りつけてくれました。
このほか、チームは大自然の脅威にも直面しなければなりませんでした。台風による二度の損壊被害に遭ったほか、最も彼らの頭を悩ませたのはミヤザキサワガニでした。呉博士はちょっと腹立たしそうに「サワガニは私たちが苦労して作った防水層に穴を掘って壊してしまうんです。でもカニを傷つけたくはありませんから時間をかけて籠におびき寄せて捕獲し、他の場所へ移しました」と笑います。2013年秋、生息地の整備が完了して第一回の放流が行われました。呉博士によれば、同じくホタル再生の取り組みが行われている日本では成虫を放します。そのため何度も失敗し、成功するまで16年かかりました。「私たちは抵抗力を持つまで成長した幼虫を放流しています。2014年春にひととおり成果が見られ、6種類のホタルが戻ってきました。」

産学共同
民間の力で目標達成
仙跡岩の麓でのホタル再生活動が成功すると、台北市は「ホタルの都」づくりに取り組みます。かつてホタルが生息していた栄星花園公園、木柵公園、大安森林公園でホタル再生を推進し、近郊へ追いやられて数十年経つホタルを台北の中心地へ再び迎えると宣言しました。
財団法人大安森林公園の友基金会は台北市工務局公園路灯行程管理処と協力し、仙跡岩での成功をこの3つの公園で再現することにしました。しかし、それぞれの公園は異なる地理的特性を持つため、道のりは苦労の連続でした。呉博士は木柵公園を例に、外来種の動植物と水辺の堆積物を除去するだけで1年かかったと説明します。「重機は入れませんので地元と協力して1,000人以上のボランティアを集め、手作業で堆積土と外来動植物を掘って一袋一袋運び出しました」栄星花園公園でも同じ光景が繰り広げられました。かつてホタル再生に成功した台湾大学昆虫学科の楊平世名誉教授が監督となり、募集に応じた近隣住民、ボランティア、学校の子どもたちが共に力を合わせ、公園は半年かけて延べ3,000人以上の人たちの手によって整備されました。
公園ボランティアに栄星花園公園の生態再生池の解説をする楊平世教授(右1)。(写真/黄建彬)
▲ 公園ボランティアに栄星花園公園の生態再生池の解説をする楊平世教授(右1)。(写真/黄建彬)

台北市の都心に位置する大安森林公園は光害の問題を克服しなければなりませんでした。長年LED部品の研究開発を専門としてきた億光電子工業(エバーライト)はホタル再生活動における光害問題を知り、農家出身の葉寅夫董事長と夫人の簡文秀さんがさっそく研究に取りかかりました。当時、董事長らが見つけた研究レポートによると、1980年代前後の米国でホタルの網膜電位図テストが行われており、ホタルは紫外線のほか青と緑の光に敏感であることが分かっていました。さらに呉博士によれば波長590nmの赤っぽい光は比較的ホタルの害にならないので夜間照明にすることができるそうです。同社の特製ライトはまだ量産ではなく生産は全て手作業で作られ、ホタル再生活動に無料で提供されています。「実際LED照明メーカーとしてはナノレベルの波長は作りやすいのです。しかしこの米国の研究から30年以上が経っていますが、誰も進んでやろうとしませんでした。今こうして台湾で作られるようになったということは、私たちの生態保護に対する意識が高いということであり、これは世界に誇れることです」と簡さんは語ります。
大安森林公園にあるLED 街灯はホタルへの害を減らすことができます。(写真/黄建彬)
▲ 大安森林公園にあるLED 街灯はホタルへの害を減らすことができます。(写真/黄建彬)

都心でのホタル再生活動が成功したことにより、台北市はオーストラリアと中国と競った今年の「2017年国際ホタルシンポジウム(International Firefly Symposium、IFS2017)」の開催権を獲得しました。より多くの市民に生態系再生の大切さ、そしていかにホタルを保護するかを理解してもらうため、3つの公園でホタルのために整備された池ではボランティアが人々に根気よく説明をしています。この地で生態教育が根づき、ホタルが永遠にこの地に留まってくれることを願っています。

台湾でよく見られるホタルとその特徴
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▲ キブチボタル(黄縁蛍)
台湾の水生ホタルの中で最もよく見られる品種。産みたての卵は淡い黄色で、孵化前に黒くなる。2枚の前羽の間のふちに黄色い線があり、黄色の光で点滅するためこの名前がついた。(写真/呉加雄)

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▲クロバネボタル(黒翅晦蛍)
全台湾で最も数の多い品種。前胸はオレンジ色で、黒い1対の羽を持つ。黄緑色で点滅し、中低海抜の山地に住む。(写真/呉加雄)

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▲ キイロスジボタル(黄脈翅蛍)
毎年4~8月に現れ、前胸と前羽にある発光器は琥珀色。前羽の末端と体はすべて黒い。(写真/呉加雄)

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▲ アカムネクロバネボタル
前胸が赤いのが最大の特徴。山地の湿気があり暗い場所を好む。オレンジがかった赤い光を発する。点滅の速度が速く、長時間光る。(写真/方華徳)

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▲ 小紅胸黒翅蛍
前胸が薄い赤色でアカムネクロバネボタルとよく似ているが、大きさはやや小さい。オレンジがかった赤い光を発する。(写真/呉加雄)

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▲ オオハシグロボタル
赤みを帯びた黄色の体で、頭部は黒い。前羽の末端に黒い斑がある。夜間に林の高い場所を飛びながら発光する。昼間も活動し、花に留まったり交配を行ったりする。(写真/呉加雄)
 
 
ホタル観賞情報
見ごろ
春(4~5月)と秋(9~10月)
陸生ホタル
鑑賞場所:虎山渓歩道
種類:主にクロバネホタル、アカムネクロバネボタル、小紅胸黒翅蛍、オオハシグロボタル
水生ホタル
鑑賞場所:栄星花園公園、木柵公園、大安森林公園
種類:主にキブチボタル
 
ご注意!!!
1 長袖と長ズボンを着用し、虫刺されに気を付けましょう。
2 ホタルを観賞している時は小さな声で話し、足元に気をつけてください。
3 懐中電灯をお持ちになるときは、LEDではなく白熱電球のものを赤いセロファンで包んでください。→現在、ホタルが生息する3つの公園はいずれもホタルに無害な街灯を設置し、明るく照らされています。夜間、鑑賞に訪れるみなさんも心配はご無用です。
4 ホタルが生息する池に他の動植物を放さないでください。ホタルの住みかが脅かされます。
5 ホタルを捕まえないでください。ホタルのきらきらと光る美しさを目で楽しみましょう。
大安森林公園にあるLED街灯はホタルへの害を減らすことができます。(写真/黄建彬)
 
六大ホタル観賞地の行き方
1 108、109、110、230、260、紅5のバスで陽明山まで行き、小9バスに乗り換えて竹子湖へ。またはMRT淡水線北投駅で小9バスに乗り換えか、MRT淡水線石牌駅で小8バスに乗り換えて竹子湖へ。
131バス(陽明公園第二駐車場から竹子湖への巡回運行)。
皇家客運バス(台北~金山線)で竹子湖派出所まで。
2 小8、小9、108、1717バスで「竹子湖派出所」下車、前方へ約300メートル進むと湖田小学校駐車場の脇にある水車寮歩道入口に到着。
3 255バスで「大崙尾山」下車、バス停からすぐ銜接翠山歩道入口。
4 MRT文湖線內湖駅、大湖公園駅,あるいは287、284、278、617、630、620バスで「大湖公園」下車。大湖山荘の大湖街131巷に入って大湖小学校を過ぎると親水公園に到着。
5 MRT後山埤駅から中坡南路を福徳街方向へ。約20分で福徳街251巷の慈恵堂登山口に到着。46、257、263、信義幹線などのバスで「奉天宮」下車、福徳街221巷に入ると真光禅寺登山口に到着。または257、263、藍10、信義幹線などのバスで「福徳国小」下車、福德街251巷に入ると慈恵堂登山口に到着。
6 MRT板南線昆陽駅で小5バスに乗り換えて「茶葉製造示範場」下車、徒歩で桂花亭へ。
乗車情報は台北市公共運輸処バス運行状況情報システムでご確認ください。
 

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