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台湾ジェンダー平等推進の先駆者 彩虹平権大平台 (TAIPEI Quarterly 2023 秋季号 Vol.33)

アンカーポイント

発表日:2023-09-11

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TAIPEI #33 (2023 秋季号)

台湾ジェンダー平等推進の先駆者 彩虹平権大平台 


  Rick Charette
編集 下山敬之
写真 彩虹平権大平台、許育華、顏婕力

fs_1▲同性婚に関する第3読会は歴史的な瞬間を目撃した。雨の中、人々はまだ興奮して声援を送っている。

2019年5月、台湾でアジア初の同性婚法制化が実現され、今年5月には立法院が同性カップルの血縁を問わず共同で養子縁組する権利を認めました。これは台湾におけるLGBT+の権利問題の新たな1ページとなったほか、台湾社会の多様性と包括性をアピールしながら、近隣諸国に対してロールモデルとしての役目を果たしました。

このアファーマティブ・アクション運動の代表的なイベントは、毎年 10 月下旬に台北で開催される台湾LGBT+プライドパ レード、今年は 10 月28 日に開催されました。東アジア最大のプライドパレードであるこのイベントは、多くの人々の注目を集めることに成功し、世界中から集まった同性カップルや社会活動家を魅了しました。20年前の2003年に始まったこのイベントですが、今年の大会は特に大きな意味を持っています。

特にここ数年、地元開催のLGBT+権利運動で先陣を切ってきたのは、2016年設立のNGO「彩虹平権大平台(TEC)」です。

きっかけと目標

「LGBT+フレンドリーな日常生活」が目標だと語るのは、エグゼクティブディレクターの鄧筑媛氏。TECの前身は婚姻平権大平台という団体で、婚姻の平等と「多様性のある愛の推進」を唱え、台湾で同性婚が法制化された後の2020年に現在の組織となりました。「私たちは、取り組むべきことがまだあることに気が付いたのでTECへ組織を変更し、あらゆる形態のジェンダーの不平等の撤廃と、より多様的で包括的な台湾の実現を新たな目標としました」と鄧氏は語ります。

fs_2▲彩虹平権大平台(TEC)による台北の街頭パレード。

最大の課題と歴史が動いた瞬間

NGOを最も苦しめる課題と最も満足が得られる成果は、どちらも同じ進化の過程における本質的な部分であり、1つの包括的な答えで解決できると鄧氏は言います。初期の頃はNGOがイベントを開催しても一般の人達はあまり興味を示さかったため、彼女や活動家はそのことに動揺し、大いに悲しんだと言います。

「こうした挫折を味わっても、私たちは前向きな未来を描かなければいけませんでした。台湾は一般的にとても開放的で許容力の高い社会ですが、私たちが目にした無関心な姿は、まさにLGBT+の権利問題が『見えない』問題であり、一般市民にとって日常的な現実ではなく、眼中になかったのです。それを変えることが私たちの使命なのです」。

長年の努力の結果、意識は大幅に変化しましたが、その成果は亀の歩みのようにゆっくりなものでした。「ですが、2023年の私たちを振り返って見て下さい。短期間で驚くべき成果が実現されたと感じられるはずです。事実、2019年には同姓婚が法制化され、今年の1月には台湾人と中国人を除く外国人との国際同姓婚、そして5月には、配偶者との血縁関係がなくとも同性カップルによる共同養子縁組が認められました。私たちがこの社会をポジティブに変えているのです」と力強く語りました 。

改正前の同性婚特別法では、お互いの実子しか養子縁組にすることができませんでした。異性の夫婦とは違い、同性の夫婦は他人の養子縁組を申し込む権利も、互いの養子を養子縁組にする権利もなかったのです。

鄧氏はアジア全体が伝統的にLGBT+の権利に保守的であり、長い歴史から見れば、人々の意識は一瞬のうちに変化したと説明します。現在、LGBT+の平等と存在を支持する人は今まで以上に増え、この問題が人々の中で当たり前になるくらいにまで浸透しました。「しかし、こうした人々は自動的に増えていったわけではありません」と鄧さんは指摘します。
 
fs_3▲毎年10月に開催される台湾LGBT+プライドパ レード数万人が参加します。

社会の意識と運動の変化 & TECの道のりと未来

鄧氏が最近直面した問題は、社会の意識の「停滞」や「後退」だと言います。TECは2019年に同性婚の法制化以降、毎年春に社会の意識調査を実施しています。去年までは同性カップルが結婚し、子供を育てることができるか等の問題を支持する人が増え、LGBT+コミュニティも一般的に受け入れられるようになってきていました。しかし、今年になってから全体の「親しみを感じる」、「支援する」という意見がわずかに減少し、「支持しない」や「反対する」の比率が増加しました。 

多くのカテゴリーで、自分の子供、親戚、上司や教師、同級生や同僚、政府高官、国会議員や市議会議員が同性愛者であることを「受け入れる」という意見が数%減少したのです。

fs_4▲TECのCEO、鄧筑媛氏がインタビューで自身の歩みを語った。(写真・顏婕力)

これはネガティブな結果ですが、全体では「支持する」が50%以上を大幅に超えていることがプラスだと鄧氏は話します。「ここでの最大の問題点は、若者にLGBT+の権利と公平性の概念を説明すると、彼らは道徳的根拠を理解し、その価値観を受け入れることができます。しかし、異なる価値観で育ってきた上の世代の人たちには、こうした多様性のある意識が根付いておらず、ずれが生じていることに気が付きました。こうした問題への関心を維持し、私たちの社会で広く深く教育、普及できるかはTECや他の団体の努力次第です。そうしていくことで、現代の若者が年齢を重ねていくにつれて「新たな意識」は広く、そして深く浸透するでしょう。私たちはLGBT+の人たちが特別な存在ではないことを示し、日常生活で普通に受けいれられるようにしなければいけません」。

fs_5▲彩虹平権大平台が作ったピン。(写真・許育華)

「TECの主要な活動目的は、『ゲイ』の家族、『ゲイ』の同僚、『ゲイ』の顧客、『ゲイ』の議員という『特別』な括りで扱うのではなく、単純に家族、同僚、顧客、議員と扱ってもらうようにする事です」と鄧氏は付け加えます。TECはこの目標実現のため、様々な活動を行っています。

fs_6▲集会中、台湾の虹色の旗を太陽が明るく照らします。

マクロな視点では、「政策の提案として、現在は異性の夫婦に限定されている生殖技術の支援の平等を求めています。政治参加についても、同性愛者を公言する候補者を増やし、政府関係者のカミングアウトを推奨しています。現在、1万1000人以上いるトップのうちLGBT+であることを公開しているのはわずか3人です」。

fs_7▲台北東区を走るゲイパレードの広告車両。

ミクロな視点では、「社会教育として、私たちは交流を通じてLGBT+コミュニティへの理解を促進するボランティアを養成しています。また、LGBT+フレンドリーを宣言する企業に対して、LGBT+の顧客と気持ちよく付き合っていく方法を指導するトレーナーを派遣できないかお願いしています。この他にも、ビジネスの場で使用するレインボーカラーのハートの看板をデザインしたり、医療関係者にどう呼ばれたいか(「Mr.」、「Ms.」、「~さん」だけなど)を示す保険証用のステッカーのデザインなどを手掛けてきました。これらは全てLGBT+フレンドリーの一般化への道のりに貢献しています」と鄧氏は話します。  

fs_8▲支持者らは総統府前で毅然とした態度をとる。

おすすめのLGBT+ フレンドリースポット

台北のLGBT+の現実について知るなら、台北市政府が運営する台北トラベルネット(travel. taipei)の「レインボーの旅に出かけよう」コーナーがおすすめです。このサイトでは、レインボーフラッグの色に塗られた二二八和平記念公園の彩虹鉄門やデモのメッカである凱達格蘭大道、LGBT+の問題や歴史に特化したスポットを旅行客へ紹介しています。このコーナーには「LGBTフレンドリースペース」のリンクも貼られています。

また、台北市政府が運営するサイト「台北友善店家」(friendlystore.taipei)では、ジェンダーフレンドリー、イングリッシュフレンドリー、ムスリムフレンドリーなど、各ジャンルに対応した店舗を検索することができます。

10月には市内でレインボー観光バスツアーも開催されます。これは台湾LGBT+プライドパレード前に台北で毎年開催されるColor Taipeiというイベントの一環です。Color Taipeiの目的は、台北市のレインボーツーリズムとビジネスの強化です。バスツアーはドラァグクイーンがホストを務める大変楽しいイベントです。日帰りツアーでは主に歴史的スポットや記念スポットを巡り、夜間ツアーではLGBT+向けのバーやナイトクラブを訪れます。
 
中でも西門町にある西門紅楼はLGBT+フレンドリーのお店、バー、ナイトクラブが多いので、特におすすめだと鄧氏は言います。西門紅楼にある南広場は貴重な遺産や建物が混在しているほか、屋外席を完備したゲイバーやお店も並んでいます。周辺エリアもLGBT+フレンドリーなお店やエンターテインメント施設が豊富です。「南広場は安全で落ち着いた雰囲気が魅力です。異性愛者やカップル、独身を問わず人目を気にせずに行くことができます。深夜のドラァグショーは特に大人気です」。

また、個人経営の書店は特にLGBT+フレンドリーだと鄧氏は言います。市南部に位置する「晶晶書庫」は、1999年にアジア初の複合型カルチャーショップとしてオープンしました。ここは、LGBT+コミュニティの精神的なシンボルであり、LGBT+に関する書籍や商品の販売に加え、随時展示会やその他カルチャーイベントを開催しています 。
 
鄧氏は、1998年に設立された台湾最大かつ最古のコミュニティ相談‧支援団体である台湾同志諮詢熱線協会を紹介してくれました。この団体の功績は数多くありますが、中でもプライドパレードを開始した事が最大の功績だと鄧氏は教えてくれました。その多くの成果の中でも、このグループは広く愛されている台湾 LGBT+ プライド キャンペーンを立ち上げました。 観光客には見逃せないパレードです。

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