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ジャーナリストの旅:台北の複雑さと魅力を紐解く (TAIPEI Quarterly 2023 秋季号 Vol.33)

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発表日:2023-09-11

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TAIPEI #33 (2023 秋季号)

ジャーナリストの旅:台北の複雑さと魅力を紐解く


  顏婕力 
編集 下山敬之
写真 許育華、顏婕力、Alice Herait

fs_1▲アリス・ヘライト氏のお気に入りのEcole Cafeでインタビューを受けて頂きました。(写真・許育華)

2022年9月、CNNは台北に新たな支局を開設し、この地域の報道の中心となる拠点を設置しました。この動きは、台湾がニュースメディアにとって重要な役割を果たすという、世界規模の発展を表しています。

台北は報道の自由度が高いことで知られ、地理的にも恵まれていることから、CNNが拠点を構えた以外にも近年、多くの国際ジャーナリストを惹きつけています。彼らの存在は、ダイナミックに変貌し続けるアジアの政治情勢のリアルな現状を知りたいという集団的な願望を物語っています。今回は、過去4年間台北を拠点に活動してきたフランス人フリージャーナリスト、アリス・ヘライト氏に伺った興味深いお話を紹介します。

中国語学習から国際関係学へ

アリス氏は、国際関係学を専攻したことがジャーナリストとしての道を歩むきっかけとなり、さらには台湾、中国、及びアジア全域の政治に着目した活動へと繋がりました。彼女はフリーランスのジャーナリストとして、FRANCE 24、LE FIGARO、HKFP(香港フリープレス)など様々なメディアに寄稿しています。テレビ番組のフィクサーとして、番組と記者との橋渡し的な役割を担うこともあります。アジアの政治に興味を持つようになったきっかけについて尋ねると、彼女は高校時代、新しい言語を学びたいという興味から、中国語の授業を受け始めた時のことを語ってくれました。「初めは新しい言語を学びたいという単純な動機だったのですが、そこから知らず知らずのうちにジャーナリズムを追求する旅へと走り出していました」。

2012年、アリス氏は中国の北京へと飛び、2か月にわたって中国語の学習に専念しました。故郷のパリから遠く離れたアジアへ一人で旅をするのはこの時が初めてだったと言います。この新鮮な経験を振り返り 「当時、私はまだ19歳でした。控えめに言っても、その文化の違いに圧倒されました」と彼女は率直な気持ちを打ち明けてくれました。

彼女の中国語の学習と言語への揺るぎない情熱は衰えることはなく、それはやがて台湾への興味へと変わっていきます。2019年、アリス氏は念願叶って交換留学生として台北を訪れ、国立台湾大学の中国文学課程に入学しました。この時期にたまたまプロのジャーナリストと出会ったことが進路に大きく影響し、彼女は専攻を国際関係学に変更することになったのです。

台湾独自のコミュニケーションと安全性

アリス氏は台北に来た当時を振り返り、「北京の時ほどのカルチャーショックはありませんでした」と語ります。ですが、台湾人とフランス人のコミュニケーションには違いがあると彼女は言います。「台湾人のクラスメートとやり取りをする際、言葉の壁だけでなく、意見が異なる際のアプローチの違いに苦労しました」。

続けて、「台湾は文化的に、対立や直接的に反対意見を述べるのを避ける傾向があります。台湾人は、私たち西洋人にはとても理解できないような言い回しをするのです」と説明してくれました。この文化的な違いは、彼女が台湾で活動する際にも影響がありました。「フランス人は一般的に率直で、知らない人に対しても臆することなく自分の意見を述べます。なので意見の相違があった場合、その本音を探るのに苦労しました」 。

ですが、台北に4年間住むうちに、彼女はそういった文化的慣習を深く理解し、自分のものにしました。その結果、彼女はパリに戻ったときにも、今までよりリラックスして、あまり身構えずに会話をするようになったと言います。

もう一つ、アリス氏が台北で衝撃を受けたのは安全性の高さです。「台湾の安全意識の高さは群を抜いています」と彼女は言います。彼女は、銀行に携帯電話を置き忘れ、1時間後に戻ってみると元の場所にそのまま置いてあったという体験をシェアしてくれました。こういったことは台湾では珍しくなく、むしろよくあることだと彼女は強調します。 

ジャーナリストの視点と台北での発見

台湾の兵役から旅行経験まで、多数のインタビューや報道をこなしてきたアリス氏は、ほとんどのメディアが政治情勢を積極的に報道しており、特にフランスの多くのメディアは台湾に関して興味を示していると話します。彼女の中で特に言及する価値が高いテーマは、台湾のアイデンティティに関わる事だそうです。「私はフランスの新聞『ル・モンド・ディプロマティーク』で、今も中華民国を信じる人々と、台湾という名の国を夢見る人々のナラティブ戦争についての記事を書いています。台湾の歴史について語るとき、両者の見解は全く異なると彼女は強調します。台湾が『エコノミスト』誌から「地球上で最も危険な場所」というレッテルを貼られたことについて尋ねると、アリス氏は「台湾が危険な場所だと言いたいのではなく、ここで大きな紛争が起こる可能性がある、というメッセージを世界に伝えることが目的だったのでしょう。私にとって台北は、世界で最も安全な町に住んでいると実感できる場所です」と答えてくれました。
 
アリス氏はこの4年間、様々な地域を転々としてきました。最初に住んだ林森北路付近は多数のバーがあり、賑やかなナイトライフで知られています。その後、中山国小の近くに移り、現在は彼女のお気に入りエリアとなった古亭付近に住んでいます。

台北の中でも多様性のあるエリアに住む彼女は、古亭にある緑、アンティークショップ、居心地の良いカフェに愛着を持つようになりました。フリーランサーである彼女は近所のカフェで仕事をすることが多く、中でも屋外スペースのある「烘焙者咖啡」はお気に入りの店の一つです。「学校咖啡館」も彼女がよく通うお店で、今回のインタビューもここで行いたいとのご希望でした。

fs_2▲アリス氏の趣味は昭和町文物古董市場を散策することです。(写真・顏婕力)

また、昭和町文物古董市場を散策することも彼女の楽しみです。「何も買わないんですけど、ただ眺めているだけで楽しいんです」と彼女は率直に打ち明けてくれました。買い物に関しては、伝統的な生鮮市場を利用していて、そこで買い集めた食材で一から台湾料理を作ることにハマっていると言います。

fs_3▲アリス氏の趣味は昭和町文物古董市場を散策することです。(写真・顏婕力)

仕事以外では、ハイキングや大安森林公園でのヨガ、のんびりとした散歩といったアウトドア活動にいそしんでいるそうです。台北のお気に入りスポットを尋ねると、穴場だという內湖の金面山と教えてくれました。「観光客で混雑することも少ないですし、整備された歩道と補助ロープを使いながら、達成感のあるハイキングが楽しめるんです」。貓空や烏來周辺でのハイキングも好きだという彼女は「ハイキングなら台湾が一番です」と続けます。

fs_4▲アリス氏お気に入りハイキング スポット - 台北 金面山。(写真・Alice Herait)

ローカルの料理の中では、台北在住の外国人にのある八仙炭烤がアリス氏のおすすめ。台湾式居酒屋の熱炒の賑やかな雰囲気が楽しめるそうです。また、客家料理店の「晉江茶堂」も彼女のお気に入り。「友人や家族を連れて行くなら、間違いなくここです」と彼女は言います。実際、もうすぐ彼女の両親が台北を訪問予定なのだそうです。台北の自然の美しさや豊かな文化、そして素晴らしい食文化に対するアリス氏の深い敬意は、彼女がマイホームと呼ぶこの魅惑的な都市に対する純粋な愛情を表しています。

fs_5▲アリス氏お気に入りハイキング スポット - 台北 金面山。(写真・Alice Herait)

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